ラムザイヤーの部落論(3)―解同の不祥事はいっぱい2022/01/05

さらに悪いことに多額のお金は、「ヤクザ」と通称される犯罪組織を引き付けた。 犯罪組織に属する部落民は、部落民による市民団体を標榜する部落解放同盟(BLL)で主要な役職に就いた。 そこで、彼らは政策を主導し、行政当局を脅迫し、同和事業に反対する者の口を封じ、そして同和事業を彼らの私的財産に流用した。

 ここに書かれていることは、1970年~2000年代初めまでの30数年間の解放運動の実際の姿です。 つまり「同和問題の解決は国民みんなの課題」とか訴えていた解放運動の裏側では、このような実態がありました。 

 「犯罪組織に属する部落民は、部落民による市民団体を標榜する部落解放同盟(BLL)で主要な役職に就いた」とあるのは、今では信じられない人がいるかも知れません。 何しろ解放同盟は「人権団体」を自称し、また国や自治体からも認められてきたのですから。

 解同幹部に暴力団関係者が多く就任していました。 一番有名な人物は、解放同盟大阪府連飛鳥支部長の小西邦彦ですね。 暗殺された四代目山口組組長の愛人宅マンションの名義人として知られています。 このマンションが暗殺の舞台だったのです。 また飛鳥支部の建物は、山口組と中野会の抗争時に銃弾が撃ち込まれました。 小西は「飛鳥会事件」で逮捕され、控訴審中に死亡しました。 事件名を検索すれば出てくると思います。

 ところで1990年代に、解同幹部のうちの誰がヤクザなのか、その名簿が回っていたことを記憶しています。 かなりの数でしたね。

 ヤクザの悪事は当然のことながら、かなりなものです。 ところが、そのヤクザにもなれなかったようなチンピラというか、どうしようもない人物も解同幹部にいました。 典型例が解放同盟奈良県連古市支部長の中川昌史です。 「ポルシェ中川事件」で検索すれば出てくると思います。 ヤクザにもなれなかった悪人がどのような悪事を働いたか、上記の小西と比べると、よく分かりますよ。

 ラムザイヤー論文では解同の不祥事として、上記の「飛鳥会事件」や「ポルシェ中川事件」以外に、浅田満の「ハンナン事件」、入札不正で摘発された「大阪府同和建設協会談合事件」、134億円の公金が闇に消えた「芦原病院」事件、丸尾勇の「八尾市入札妨害恐喝事件」、覚せい剤等で逮捕者が続出した「京都市環境局不祥事事件」を挙げています。 論文では事件の概要を簡単に触れているだけですが、関心のある方はそれぞれの事件名を検索すれば、もっと詳しく分かると思います。

 なおハンナン事件で逮捕された浅田満は、保釈金20億円でした。 これは今なお破られていない史上最高額の保釈金です。 これも検索してみれば分かると思います。 浅田はこのことでも超有名人ですね。 ちなみに日産のカルロス・ゴーンの保釈金は15億円でしたから、浅田の20億がどれほどのものであるか、想像できるでしょう。 

 入札妨害恐喝事件で逮捕された丸尾勇は大阪の八尾市を中心とする工事に介入して、土建会社から多額の上納金を納めさせていました。 私の知り合いは大手ゼネコンの営業をやっていて、この八尾で21億円の工事を請け負いました。 そしてこの丸尾に6千5百万円を地域協力金として支払ったのです。 この時ばかりは問題になって新聞に報道されました。 知り合いに聞くと、八尾ではそれがルールのようになっていて、それに従って丸尾にお金を払っただけ、もし払わなかったら酷い目にあう、だからこちらは何も悪いことをしたとは思っていない、と言っていましたねえ。 

 解同の不祥事はそれ以外に、マスコミ報道されたもので私の記憶しているところでは、26億円が闇に消えた高知の「モード・アバンセ事件」、土地転売で17億円を不正に儲けた「北九州土地転がし事件」があります。 これも検索すれば出てくると思います。

 以上の解同不祥事はマスコミに報道されたことのある代表例で、その他にも報道されなかったような事件は、各地で多数起きていました。 調べればいっぱい出てきますから、関心ある方はお調べください。

【拙稿参照】

ラムザイヤー教授の部落論(1)―同和対策事業 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/12/26/9450880

ラムザイヤー教授の部落論(2)―同和事業の裏では http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/12/31/9452108

飛鳥会事件―「心から謝罪」は本当か? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/02/24/1206080

これが「真摯に反省」?       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/05/27/382079

闇に消えた公金―芦原病院・同和行政   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/04/29/346418

【ラムザイヤー教授論文】

https://jigensha.info/2021/10/16/ramseyer2018-1/

https://jigensha.info/2021/10/23/ramseyer2018-2/

https://jigensha.info/2021/10/30/ramseyer2018-3/

https://jigensha.info/2021/11/06/ramseyer2018-4/

ラムザイヤーの部落論(4)―解放運動はお金が儲かる2022/01/10

その結果、大部分は部落解放同盟自身が認めていることだが、部落民の指導として選ばれた者と犯罪組織に多額の政府資金が流用された。 ある市では優遇された企業と建設契約を交わした。 そして部落民の有力者から高騰した価格で建物の土地を購入した。 国税局は、部落解放同盟によって認定された企業の確定申告を精査しないことを約束した。 ある市役所は、部落解放同盟が選んだ部落民を雇うことに同意した。 大企業は差別糾弾を避けるためにお金を払った。 そして関連団体は、莫大な収入源の管理をめぐって互いに激しく争った。

  「ある市では優遇された企業と建設契約を交わした」とあるのは、解放同盟傘下の同和建設協会の土建屋が違法な談合によって公共工事をかなり有利に、時には強引に契約を取っていたことを指すのでしょう。 役所は公共工事の入札指名の際に必ずと言っていいほどに、同和業者を入れておかねばならないという暗黙のルールがありました。 こんなこと、今では信じてくれないでしょうね。 つい十数年前まで各地の公共工事入札で繰り広げられていたことです。

 同和の土建屋さんはどこの地域でも評判が悪いですね。 担当する市職員は周辺住民から毎日のようにかかってくる苦情電話、またいくら指導・指示しても言うことを聞かない同和業者に困り果てたものでした。 そういえば昨年の熱海土石流災害の原因をつくった盛り土を造成した業者は、解同ではなくもう一つの同和団体である自由同和会でした。 役所担当者からこういう工事方法はしてはいけないと指導されても、こっちは同和だと言い返したとか、市当局が市議会でこれは同和案件だと答弁したとかの情報があります。

 「(ある市は)部落民の有力者から高騰した価格で建物の土地を購入した」というのは、公然の秘密の土地転がし(とちころがし)です。 「土地転がし」なんて、今は死語ですね。 これを解放同盟と同和会が1980年代初めに大規模に行なったのが「北九州土地転がし事件」でした。 この事件も検索すれば出てくると思います。 それだけでなく、各自治体では同和対策事業等による用地買収で、解放同盟幹部等の有力者から高値で買わされていました。

 「国税局は、部落解放同盟によって認定された企業の確定申告を精査しないことを約束した」は、前回で書いた「部落解放企業連合会」ですね。 ところでこの連合会、今もあるのでしょうか。 ここ20年くらいは聞いたことがありませんねえ。

 「ある市役所は、部落解放同盟が選んだ部落民を雇うことに同意した」。 これも今では信じられないでしょうが、職員採用の「同和枠」(場所によっては「人権枠」)とか言われていましたねえ。 地区の会館(「解放会館」とか呼ばれる所もありました)はもちろんのこと、主に清掃・衛生・交通関係等に公務員採用の同和枠がありました。 それ以外に、どこかの部署に名前だけ配置されていて形の上では公務員なのですが、実際は解放同盟の仕事をする「闇専従」なんかも多かったです。

 ところで1980年代ですが、知り合いの市役所ベテラン職員が解放会館の館長か副館長に発令されて、その時の話を聞いたことがあります。 解放同盟の子弟が職員として入ってきたのですが、何もできないので困っていると言っていました。 一応公的施設ですから公文書が行き来します。 しかしその公文書を理解できないというか、読めないというのです。 これくらいのことが出来ないのかと苦言を呈すると、自分の能力を知って仕事を指示するのが上司の役目だ、それが出来ないのを分かっているなら、それなりの仕事をくれと居直ったそうです。 仕方なく会館の仕事をお知らせする‟通信“のようなものを作れといったら、三日かけて作ってきたのがこれですよ、と見せてくれました。 それは中学校で生徒が作る学級通信のようなものでした。 給料もらっている市職員が三日かけて作ったものがこれなんですよ、と嘆いていましたねえ。

 大学の入学に際しても、闇の「同和枠」があるという噂が飛んでいたことがありましたねえ。 解同等の紹介状を持って行けば、どんな成績であってもその大学に入れるということでした。 また西日本の某私立大学では被差別者枠(部落民・在日・障害者等)があることを公然と掲げていましたが、今でもあるのでしょうか。

【拙稿参照】

熱海土石流災害に強制捜査―同和の闇に迫れるか http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/10/30/9436105

熱海土石流―「同和」の体質と恐怖 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/07/26/9401762

同和企業の思い出 ―熱海土石流災害を見て http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/07/11/9396847

解放運動の闇専従-森山栄治   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/12/18/9190648

松岡徹さん           http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/05/26/381520

かつての解放運動との交渉風景  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2011/08/27/6074508

医大の不正入試        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/03/05/9043516

【ラムザイヤー教授論文】

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ラムザイヤー部落論(5)―反社に行く者,地区から出る者2022/01/15

さらに皮肉なことに、この事業は部落民の男性が合法的な仕事から離れるのを助長した。若い部落民にとって同和事業は、相対的に収益源を合法な職業と違法な職業の間で転換させた。 新たに生じた犯罪収益を考慮にいれたところ、多くの若い男性は、日本の主流派に加わるために不可欠な教育投資よりも、違法な活動を選択した。 多くの部落民が暴力団に加わったので、主流派の日本人は恐怖のため彼らを避けた。 すなわち、暴力団の関与自体が差別を引き起こしたのである。

 同和事業によって、部落民の少なからずが「合法的な仕事から離れる」「不可欠な教育投資よりも、違法な活動を選択した」「暴力団に加わった」というのは事実です。 

 私自身、1970年代に同和地区の同和企業でアルバイトをしていた時、地区には現役の複数のヤクザが住んでおり、それに誰も違和感を持たない地区の雰囲気を実感しました。 これは実際に体験した人でなければ分からないでしょうねえ。

 1980年代に、同推校(同和教育推進校)の教師を長年していた方から聞いた話ですが、街で偶然に卒業生に会って「真面目にやっているか?」と聞いたら、「真面目にヤクザをやっています」と答えられてビックリしたと言ってましたねえ。 「ヤクザって、真面目にやるものなのか?」と嘆いていました。 

 なお全ての部落民がヤクザに行ったということではありません。 ちゃんと勉強して、まともな市民生活をしている人もいました。 ただそういう人は、大抵が同和地区に残らずに出ていきましたねえ。

 1980年頃ですが、解放同盟の方から私が大学を出ていると聞いて、「俺は大学出というのは嫌いやねん。 うちのムラ(同和地区のこと)でも、大学出た奴はみんなムラから出ていきよる。 一人も帰って来ん。」と言ったことをはっきりと覚えています。

 もう資料は捨ててしまいましたが、ある同和地区部落民の職業調査表がありました。 1980年と90年の調査だったと記憶しています。 1980年のそれを見ると、20代で「教育関係」というのが10数%でした。 当然それなりの勉強しそれなりの学歴を得た人たちでしょう。 ところが10年後の1990年には、30代の「教育関係」者はわずか数%ほどになっていたのです。 つまり20代に教育関係の仕事をしていた若い部落民は、10年後に四分の一に減っていたのです。 これを見て、やはりそうだろうなあ、ちゃんと勉強している人は部落から出ていくのだなあと思いましたねえ。

【拙稿参照】

解放運動に入り込むヤクザ    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/05/04/1482616

差別とヤクザ         http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daisanjuuyondai

【ラムザイヤー教授論文】

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ラムザイヤー教授の部落論(6)―エセ同和行為2022/01/20

同和対策事業により、資金が部落民が関わる犯罪集団に移り始めた時、一部の集団は「差別」糾弾と恐喝とを結びつけた。 企業は彼らを追い払うため、お金を支払った。 この恐喝行為の政治的に正しい用語は「えせ同和行為」である。 ランキン(2012)は、「ヤクザ自身が部落民の権利団体を装い、企業に補償金を支払うよう圧力をかけることによって状況を悪用している」と書いている。

この現象は1980年代に始まったと言われている。フリージャーナリストの宮崎学は、彼自身部落民であり暴力団組長の息子だった。彼は次の通り報告している。

この時期(1980年代半ば)は、被差別部落民による恐喝がピークに達した時期でした。…この時期に、暴力団にもたらされる収益の規模が変化しました。以前、暴力団は覚せい剤を売るようなことをしていました。しかし、これらの伝統的な活動と比較して、暴力団が被差別部落民による恐喝を通じて得ることができる稼ぎがはるかに多かったのです。

法務省が1989年にこの問題を調査したときまでに、恐喝は蔓延していた。 同省は5,906社に連絡を取り、そのうち4,097社が回答した。 回答者の17.5%は、1988年中に少なくとも1つの同和団体の恐喝の標的にされたと報告した。 通常、同和団体の構成員は会社の従業員に電話口で叫び、部落民の問題を理解していないと非難した。 時には彼らは政治家との関係を自慢し、時には規制当局に会社を調査させると脅迫した。

同和団体は、たった1回の電話で会社を許すことはしなかった。 対象となる企業に平均3.2回、大阪法務局管内では8.8回アプローチした。 ほとんどの企業から、彼らは対価―現金、高額な出版物の購読、借り入れを要求した。 建設会社に契約金の削減を要求したこともあった。 攻撃を受けた企業の3分の1は、少なくとも一部の要求に応じた。 中小企業は屈服する可能性が最も高かった。 1,000人以上の従業員を抱える企業では、25.0%が少なくとも1つの要求に応えた。 従業員が50人未満の企業では、38.8%が要求に応じた。

 エセ同和行為というのは、同和という人権問題に絡めて行われる恐喝です。 ですから、その恐喝を拒否したり対抗したりすると、部落差別として糾弾される可能性があります。 しかし警察は民事だからといって介入しないし、マスコミも同和はタブーですから報道せず、人権を担当する法務局は黙るだけです。 結局、企業は糾弾を恐れて、金で解決できるのならといってお金を包むことになり、恐喝は成功することになります。

 私が1980年代に土木工事会社員から実例を聞きました。 同和地区近くの公共工事で、 「解放同盟企業対策部」という名刺を持った人がやってきて「工事するのに元請けは解同に挨拶に来たが、下請けは挨拶に来なかった。挨拶料は50万円だが、来なかったのでその倍を出せ」と要求してきた、元請けは後でこれを聞いて、何故下請けまで挨拶料が要るのか、出さなくていいと言ったが、下請けは後難を恐れて出した、ということでした。 暴対法のない時代でしたから、こんなことがまかり通っていたのです。 

 「部落解放」「人権」をちらつかせながら恐喝するのが「エセ同和行為」だと言って間違いないと思います。 彼らがどのような物の言い方をするのか、最近実際に録音されたものが公表されています。 https://www.youtube.com/watch?v=1nhoBi75Sb0  このような人たちに取り囲まれて脅されるのですから、担当者はそれこそ縮み上がります。 彼らは事件にならない程度に、つまり絶対に手を出さずに、態度と口先だけで脅してきます。 そこはヤクザの手法を学んだのではないかと思います。

 ある工事現場の監督さんから話を聞いたことがあります。 監督さんなのに、ヘルメットに線が入っておらず、一般作業員と同じヘルメットでした。 監督さん曰く、「もし同和とかヤヤこしい人間が現場に入ってきたら、そいつらは線の入ったヘルメットを被った人をめがけて捕まえて取り囲み、要求してくるんです。 ですから、私は線のないヘルメットを被るようにしています。 もしそんな人間が入ってきたと思ったら、すぐにそこらへんにあるスコップを持って掘削作業をして、ただの土木作業員という風にするんですよ。」と言っていましたねえ。

 その存在だけで恐しくなる人たちに取り囲まれ、無理を要求された時の恐怖‥‥。 これは体験した人でなければ分からないでしょう。

【ラムザイヤー教授論文】

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ラムザイヤーの部落論(7)―同和事業の終了で正常化へ2022/01/25

 論文の最後に出てくる「結論」で、ラムザイヤー教授は次のように締めくくっています。

2002年、日本政府は、被差別部落民対象を絞った助成の30年にわたる実験(同和対策事業のこと)を終了した。その過程で、犯罪組織の最も収益性の高い収入源の1つを終了させたことになる。

同和事業の終了により、才覚のある部落民が一般社会に溶け込み、他の日本人がより魅力的な住む場所としての部落を見出すことができるかどうかを検証した。 我々は、それらの現象の証拠を見つけた。 同和事業が終了すると、部落民はますます部落を離れ、日本の一般社会へ溶け込んだ。

もちろん、この現象は、並行した政策の変化と結びついている。 国会は1996年に、2002年に同和事業を終結することを決議し、1991年に暴力団に対する法的手段(暴力団対策法の制定のこと)を強化し始め、2000年に摘発数を増やした。‥‥ どちらも犯罪的職業から合法職業への転換を増やし、2006年までに部落地域を擁する自治体からの転出が急増し始めた。

腐敗と恐喝の減少は、解放同盟と暴力団の衰退とともに、他の日本人に部落地域が住む場所としてより魅力的だと考えさせた。 そして同和事業が終了すると、他の日本人が移住してきた。 進歩的な部落民は立ち去り、日本の一般社会へと消え去った。 代わって、一般の人々が部落へ移住してきて、部落の不動産価格を押し上げた。

 私自身、部落が近年にどのように変わったのかを知らなかったので、この結論は新鮮に感じました。 考えてみれば、同和事業がなくなれば部落民が同和地区に住んでいるメリットはありません。 そして暴対法の成立によって警察が暴力団の監視・摘発を強めていきましたので、「犯罪的職業から合法職業への転換を増やした」、つまり部落の若者はヤクザに行くことがなくなり、いわゆる正業に就くようになったということです。 これは喜ばしいことですね。

 これにより部落はまともになったというか、正常化したというか、普通の地域となっていきました。 ですから今度は、部落民でない一般人が同和地区ということを知りながらも住もうという流れが出てきます。 論文はこれを「腐敗と恐喝の減少は、解放同盟と暴力団の衰退とともに、他の日本人に部落地域が住む場所としてより魅力的だと考えさせた」とし、さらに「一般の人々が部落へ移住してきて、部落の不動産価格を押し上げた」と書いています。

 これはかつての部落=同和地区を知っている私には、ビックリというか新鮮でした。 同和事業と解放運動によって激しくなった部落差別問題は、同和事業の終了と解放運動の衰退とともに今解消しつつあると言っていいのでないかと思います。  (終わり)

【ラムザイヤー教授論文】

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【これまでの論稿】

ラムザイヤー教授の部落論(1)―同和対策事業 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/12/26/9450880

ラムザイヤー教授の部落論(2)―同和事業の裏では http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/12/31/9452108

ラムザイヤーの部落論(3)―解同の不祥事はいっぱい http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/01/05/9453615

ラムザイヤーの部落論(4)―解放運動はお金が儲かる http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/01/10/9454916

ラムザイヤー部落論(5)―反社に行く者,地区から出る者 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/01/15/9456213

ラムザイヤー教授の部落論(6)―エセ同和行為 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/01/20/9457467

【拙稿参照】

同和の闇に切り込めなかったのか―関電金品受領事件 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/11/18/9441084

解放運動の闇専従-森山栄治  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/12/18/9190648

熱海土石流災害に強制捜査―同和の闇に迫れるか http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/10/30/9436105

熱海土石流―「同和」の体質と恐怖 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/07/26/9401762

同和企業の思い出 ―熱海土石流災害を見て http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/07/11/9396847

差別の自作自演事件       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/06/06/9385057

同和住宅の家賃        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/12/17/9448546

同和出自を明かすことは‥‥  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/07/13/9267584

差別問題の解決とは?    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/07/09/9266205

社会的低位者の差別発言  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/05/09/9244588

柳田邦男のビックリ部落認識       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/12/25/8290405

解放運動の力が落ちたこと        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/01/08/7533867

解放運動                http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/05/02/7299711

郵便ポストを設置させた解放運動     http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/07/07/6502784

同和地区の貧困化            http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/07/29/6525302

かつての解放運動との交渉風景      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2011/08/27/6074508

医大の不正入試        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/03/05/9043516

同和教育が差別意識をもたらす      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2010/12/29/5614412

差別の現実から学ぶとは?        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2010/12/19/5589789

部落(同和)問題は西日本特有の問題   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/07/14/1652936

水平社宣言               http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/07/07/1631798

解放運動に入り込むヤクザ        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/05/04/1482616

差別問題の重苦しさ     http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/dainanajuunanadai

(続)差別問題の重苦しさ  http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/dainanajuuhachidai

解放運動に入り込むヤクザ    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/05/04/1482616

差別とヤクザ         http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daisanjuuyondai

同和地区における不動産価格  http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daisanjuukyuudai

在日は「生ける人権蹂躙」?-『抗路』巻頭辞2022/01/31

 2022年1月発行の在日雑誌『抗路9号』の巻頭辞に、次のような文言があります。

昨年の衆議院選挙も、またもや与党・自公連立政権の大勝に終わった。加えて、右翼ファシズム政党「日本維新の会」が41へと大幅に議席を増やし、公明党を抜いて第3党の地位を占めるに至った。投票率の低さと小選挙区制が僭主政治を可能ならしめ、「民主主義」が独裁を支え、人権と平和の理念も原則も限りなく脆弱化してゆくこの日本という国に住む私たちは、如何なる肯定的生を謳歌できると言うのだろうか?

辺野古新基地建設問題や福島原発事故は言わずもがな、所謂「モリ・カケ・サクラ」疑惑も「赤木ファイル」事件も、何一つ解決されないどころか大多数の無関心と忘却に晒され続けて、司法反動化の与件に成り下がるのを待つ他ないとすれば、あまりにも悲惨だ。

この歴史的大劣化とコロナ禍の中にあって、この国の主権者たりえず、選挙権が剥奪されたままの「在日」には、生ける屍ならぬ「生ける人権蹂躙」という形容が付されるべき

 この巻頭辞は「本誌編集委員会」名で発表されていますから個人的見解ではなく、雑誌関係者全員の意思です。 読めば分かりますように、日本の状況分析は左翼勢力の考え方そのものですね。 右傾化した日本社会の下で、自分たち在日は一方的に被害を受けているのだという主張になります。

 私が以前より言っていますように、在日は1970年代までは被差別体験など共通性がありましたが、それ以降、差別されたことがないという若い在日が増え始め、多様化していきました。 今や在日といっても日本人同様に多種多彩で、一括りには出来るものではありません。 日本の政治に関心が強い者もいれば全く無関心な者もおり、関心があるとしても「右」もいれば「左」もいます。 『抗路』はその中で、日本の左翼思想を自ら選び、その思想に基づいて在日のあり方を求めるという姿勢を示したことになるでしょう。

 ですから雑誌『抗路』は、「在日総合誌」を謳いながらも在日を総合的に論じるのではなく、一部の在日の意見を集めて打ち出したものだということです。 別に言えば、左翼傾向の在日たちの機関誌的役割を果たそうとするものと評価できます。 

 以上のような『抗路』の方針は、私の考えとは大きな違いがあります。 しかしこれは個々人の思想信条の自由の範囲内として、私には容認できるものです。 私は、ふーん、この人たちはそう考えているのか、と思うだけです。

 しかし上述の巻頭辞の中で、これはちょっと如何なものかと思われる部分がありますので、それを指摘したいと思います。

この国の主権者たりえず、選挙権が剥奪されたままの「在日」

 歴史的事実として、1945年の日本敗戦時に、朝鮮人たちはもうこれで日本人ではなくなったのだと「解放」を喜び、「万歳」を叫びました。 本国の朝鮮人たちはもちろんのこと、在日朝鮮人たちも日本の主権者でなくなったのですから、日本への参政権が喪失したのは当然のことです。

 つまりそれは自らの意思であって、「剥奪」では決してありません。 それから75年以上が経った今、なぜ「剥奪」という言葉が出てくるのか? それは、自分たち在日は被害者だとアピールするために歴史を捻じ曲げた表現であると、私には思われます。

投票率の低さ

 『抗路』は日本の選挙の「投票率の低さ」のこと言っていますが、他国の選挙のことを云々する前に、自分たち在日の本国選挙権を語る必要があると思います。

 韓国の大統領選挙等については、韓国国籍の在日も2012年より選挙権を有することになりました。 しかし在日でこの選挙に投票したのはごくわずかです。 5%もいかなかったのではないかと記憶しています。 その後の選挙も投票率は低いままです。 自分たち在日の本国選挙での投票率の低さを棚に上げて、他国の投票率の低さをとやかく言うのは、いかがなものでしょうか。

 以上の二点は、個々人の思想信条の違いで済まされるところではないと考えますので、敢えて記しておきます。

【拙稿参照】

『抗路』への違和感(2)―趙博「外国人身分に貶められた」  https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/06/02/9383666

在日誌『抗路』への違和感(1)―趙博「本名を奪還する」  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/05/27/9381682

国籍剥奪論         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/07/15/445780

水野・文『在日朝鮮人』(15)―外国人の地位を求めた http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/07/25/8138588

水野・文『在日朝鮮人』(16)―国籍剥奪論の矛盾 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/07/30/8142349