特別永住の在日台湾人2026/05/16

 岩波新書の『在日朝鮮人 歴史と現在』を読んでいたら、次の一節に出会いました。

中国人といえば、在日朝鮮人と同様に戦前から日本に定着して横浜や神戸、長崎に中華街をつくってきたオールドカマーも少なくないが、そのほとんどは日本国籍を取得し、2010年の特別永住者の数は、2600人ほどにすぎない。 (水野直樹・文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』岩波新書 2015年1月 211頁)

 ここにある「2010年の特別永住者の数は2600人ほどにすぎない」というのは、この本では「中国人」と書かれていますが、実は〝植民地支配下の台湾で生まれた台湾人とその子孫”という意味です。

 「特別永住」というのは、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(平成3年5月10日 法律第71号)という法律に基づく在留資格を有する人たちです。 詳しく言うと、「戦前から昭和二十年九月二日以前時点で日本列島(内地)に居住していたかつて日本国籍だった人々で、サンフランシスコ講和条約により日本国籍を失った人、それと彼らの直系卑属かつ日本出生で居住継続者」となります。 難しい文章ですね。 これを読んで直ぐに分かる人は少ないでしょう。

 分かりやすく言うと、日本は朝鮮と台湾を植民地支配していたので、当時の朝鮮人や台湾人は日本国籍を有していていました。 しかし1945年の敗戦によってその日本国籍を失うことになり、1952年のサンフランシスコ講和条約によって正式に日本国籍を喪失したのです。 日本で暮らしている朝鮮人や台湾人はかつて日本の被植民地人として日本国籍を有していたという事情のために一般の外国人とは違う在留資格(いわゆる「126-2-6」「4-16-2」等)を有することとなり、1991年(平成3年)にまとめて「特別永住」という資格となったのでした。

 「特別永住」といえば多くの人はすぐに朝鮮人を思い浮かべるようですが、実は台湾人も該当しています。 何十年か昔、在日朝鮮人65万人に対して、在日台湾人は2万人なんて言われていたのを記憶しています。 上述の岩波新書によれば、後者の台湾人は2010年に2600人にまで減っており、その要因は「日本国籍の取得」つまり帰化だそうです。

 特別永住の台湾人の数について、法務省の外国人統計を調べてみました。 なお台湾人は、国籍欄に近年までは「中国」と記されていました。

 

・1969年 中国人 126-2-6 13,353人 4-1―6-2 3,718人  計 17,071人

・1974年 中国人 126-2-6 8,192人 4-1-16-2 3,702人  計 11,894人

・2010年 中国人                   特別永住   計 2,668人

・2025年 台湾・中国人                特別永住   計 1,610人

 

 在日台湾人は、1991年の特別永住制度発足以前は外国人登録の在留資格欄に「126-2-6」「4-1-16-2」等と記されていました。 その人数を合計すると、後の特別永住に相当する在留資格者の数になります。(なお「4-1ー16-3」はわずかの数字なのでここでは除外した) 1974年の数字は5年前の1969年の数字に比べて大きく減少していますが、これは1972年の日中共同声明により日本が台湾(中華民国)の承認を取り消したことを契機に、多くの台湾人が日本に帰化したためです。

 また台湾特別永住者は国籍欄に「中国」「台湾」などが記されますが、「米国」や「イギリス」に帰化するなどで第三国の国籍を有する台湾人も存在します。 それでも特別永住という在留資格は変わりません。 ただし統計では「米国」「イギリス」などの国籍を有する特別永住者の数は分かりますが、これは韓国・朝鮮もを合わせた人数ですから、台湾ルーツだけの数は分かりません。

米国籍などの特別永住者     http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/15/1798285

 ところで上述の岩波新書では特別永住の台湾人は2010年で2600人ほどとしていますが、実際は2668人でした。 それから15年経った2025年に1610人と更に大きく減らしています。

 在日台湾人はもはや問題ではなくなっており、その要因は彼らの帰化あるいは少子高齢化などによる人口減少ということです。 これを考えるならば、同様である在日韓国・朝鮮人問題の将来を見通すことができるでしょう。 それは特別永住の在日韓国・朝鮮人の数の減少が在日問題の解決につながるということです。 これは問題の当事者がいなくなれば問題そのものが消滅するという、考えてみれば当たり前の話です。

 在日韓国・朝鮮人は、①帰化、②日本人との婚姻、③少子高齢化という三つの要因によって特別永住者数が減少してきました。 それに伴い社会からの関心が薄れて、在日問題は解決することでしょう。 つまり在日活動家たちによる「民族受難とそれに対する闘い」という努力によってではなく、在日自身の①~③の動向によって自然と解決に向かうということです。 

 今は代わりにと言ったらなんですが、近年に来日した外国人が大きな問題となっており、これがこれから増幅していくことでしょう。 現在のヨーロッパのように、移民問題が社会を大いに揺るがすことになるかも知れません。

【拙稿参照】

在日韓国・朝鮮人自然消滅論(1)    https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/11/26/9734747

在日韓国・朝鮮人自然消滅論(2)     https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/12/01/9736094

 

【特別永住に関する拙稿】

特別永住の経過             http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/08/25/1750381

特別永住制度の変更は非現実的      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/01/1762857

在日の法的問題は解決済み        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/08/1781500

米国籍などの特別永住者         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/15/1798285

『現代韓国を学ぶ』(3)        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/06/08/6472916

在日の特別永住制度           http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/06/14/6864389

トルコ国籍の特別永住者?!―毎日新聞 ― http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/10/27/7870629

特別永住者数の推移           https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/07/16/9129169

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