韓国のボイスフィッシング(特殊詐欺)犯の告白2025/09/21

 2025年8月9日付けの拙ブログで、韓国と日本の特殊詐欺を比較するニュース記事を翻訳しました。  https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/08/09/9794862 

 ところで韓国の有力雑誌『週刊朝鮮』2867号(2025年7月14日)に、ボイスフィッシング(特殊詐欺)に加担した韓国の若者の詐欺犯を取材した記事がありました。 参考になるかと思い、翻訳してみました。 韓国の特殊詐欺は、日本のそれと瓜二つですね。

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ある20代のボイスフィッシング(特殊詐欺)犯の告白 「私はお金を受け取る回収役(受け子)でした‥‥800万ウォンを儲けて懲役3年に服したのです」

 「先週、懲役3年を終えて満期出所しました。 回収役(受け子)でした。」 この話はボイスフィッシング被害者の悲しい事件ではない。 知らないうちにボイスフィッシング法にかかり、実刑に服して出てきた、ある20代の話だ。 生活苦に悩んだAさんは2022年初め、ボイスフィッシングに加担した。 Aさんの役割は被害者に会ってお金を直接受け取る「回収役(受け子)」で、最初に仕事を始めた時はボイスフィッシングとは分からなかった。 何回かお金を受け取って運ぶ仕事を繰り返して、やっとAさんは「私がボイスフィッシングの加担者なんだ」と思ったという。 結局、仕事を始めて4ヶ月余りで警察に捕まった。 Aさんに適用された容疑は「詐欺」「公文書・私文書偽造」だった。

 「みんなは私を罵ると思います。」 詐欺を犯した彼は自分をかばってほしいと言うつもりはない。 反省するという意味だったのか? 彼は記者の取材の求めに応じた。 そう言って、これまで知られていなかったボイスフィッシング犯罪の内幕を解説した。 「被害者の方たちには今も、これからも一生謝罪します。 またこの瞬間も加担している人たちや、ひょっとして加担するかも知れない人たちには私のようになるなと言いたいです。」

 

「求職アプリ」に建設現場の日雇い求人広告

 事情で生活苦に悩んでいたAさんは2022年の初め、ある求職プラットホームを通してアルバイトを探した。 彼の目に入ってきた「建設現場 日雇い」広告は、賃金がかなりよく決められていた。 直ぐに広告を押して志願し、ほどなくして非対面の面接を経た。 それ以後、業者の担当者から合格の知らせが入ったカカオトーク(日本ではLINEに相当)のメッセージが来た。 Aさんは業の割り当て過程で、担当者から配慮をしてもらった感じがした。 「腰がちょっと悪くて心配だ」と言うと、担当者は「それでは楽なように、取引先を移動しながらお金を受け取る業務に決めてあげよう」と言って、最終的に業務は「決められた人と会って、相手が渡してくれるお金を受け取ること」だった。

 Aさんは「慎重でなかった」と言いながらも「生活に窮していたので、『何か変だが、これでもしなければならない』という気持ちだった」と言う。 結局Aさんは仕事をすることに決めて、「お金を回収する仕事」を引き受けた。 人に会ってお金を受け取って仲間に渡したり、特定ATMに行って入金するというやり方だった。 これは典型的なボイスフィッシングの回収役(受け子)または運搬役の仕事だった。

 Aさんによると、ボイスフィッシング組織の体系は、「指示役(もしくは元締)」を始めとして「中間リーダー役」そして「実行役(もしくは下っ端)」に区分される。 指示役は中国などの国外にいるボイスフィッシング元締たちを指すもので、中間リーダー役はよく言われるところの「コールセンター職員」のような人たちをいう。 一番下の「実行役(下っ端)」はAさんが担当していた回収役(受け子)や引出役(出し子)、運搬役など三つに分けられる。 回収役(受け子)は直接被害者に会って彼らが準備した現金を受け取ってくる役割で、その現金を渡された仲間は上部が定めた口座に入金する。 Aさんは「私がもし汝矣島でお金を受け取ったら、もう一人の回収役が鐘路にいるとすれば、鐘路に行って渡すこと」と説明した。 引出役(出し子)は被害者が直接送金する場合にその金を口座から引き出してくる役割で、運搬役は仲間から現金を受け取って上部に渡す役割をする。

 

「収益は被害金額の2%」

 具体的な犯罪過程で、タクシー代などの移動費用は上部が提供した。 Aさんは「最大限、記録を残さないために絶対いつもタクシーに乗って移動しろと指示される」と言い、「集金のためにソウルから江原道の江陵まで行ったことがある」と打ち明けた。

 興味深い点は、上部が組織的にそれぞれの出し子を監視する場合もあるという点だ。 ある日、現金受け取りのための被疑者との約束が何時間か後になった状況で、Aさんはしばらくある食堂で昼食を取っていた。 料理が出ると、上部から「被害者が着いたから、早く移動しろ」という命令がテレグラムのメッセージに来た。 「トイレに寄ってから行きます」と報告し、もう一匙でも食べようとした矢先だった。 「Aさん、今食べているのを置いておきなさい。」 Aさんは「この時から、どこかから私を見ていると確信しました」と語った。

 Aさんによると、組織はAさんが仕事を終えてから家に帰る姿を写真に撮って送ってきたり、彼が仕事中にタクシーで移動する時ももう一台のタクシーに乗って尾行することもした。 彼は次のように推定した。 「ひょっとして警察に行って自首しないかと思ってそうしたようだ。」

 受け取った現金を決められた口座に入金したり、また他の運搬役に渡したりする過程を終えれば、一番の「下っ端」である回収役(受け子)の役割は終わる。 Aさんは最後の段階で利益を分け与えられると言う。 彼によれば、被害額の2~4%程度を回収役(受け子)が貰い、残りの金額をATMを通して送金したり、仲間に渡す形だ。 Aさんは「もし被害額が1億ウォンであるなら、被害者から受け取る1億ウォンのうち200万ウォンを私が貰い、残りはすべて送るやり方」だと説明した。 このようなやり方で、彼は総2億8千万ウォン相当の被害額を17回にわたって受け取り、このうち800万ウォンの収益を得た。

 ただしAさんは、中間リーダー役ないしは指示役は一回も見たことがないと言う。 「下っ端」である彼は、自分と同じ役割をする回収役(受け子)や運搬役だけに何回か会った。 すべての連絡はテレグラムを中心に進められ、時おりテレグラム通話を通して指示が来ることもあった。

 

捜査が始まると、「携帯電話を捨てて、耐えろ」

 仕事を始めて4ヶ月くらい過ぎた頃、Aさんはソウルのある警察署から連絡を受けた。 詐欺の疑いだった。 そして何日か経ってから首都圏のあちこちの警察署からの連絡が来始めた。 呆れたのは、この時の指示役の反応だった。 Aさんがその間のいきさつを説明すると、指示役は「安心しなさい」と言った。 続けてAさんは次のような言葉を聞いた。 「使っている携帯電話を捨てなさい。 耐えましょう。 私がちゃんとやりますから、心配しないでください。」 そしてこの対話がAさんと指示役の誰かと受け答えした最後のテレグラムメッセージだった。

 Aさんは自分を「もう腑が抜けた状態だった」と表現した。 この時点でやっと、Aさんはボイスフィッシングを止めた。 もうこれ以上、指示役から命令や指示は来なくなった。 彼は「その時から『今でも止めねばならない』という心情で2~3週間ほどは何もしなかった」と語った。 ついには自ら命を断とうと思ったこともあったAさんは、結局しばらくして逮捕された。 そのようにして彼の犯罪は終わり、法の審判を受けることとなった。

 「よく犯行を犯す者も悪いが、被害を受けた者もボケていたり不注意で被害に遭ったのだ」と考える人がいるが、それは絶対に違う。 被害に遭わない訳にはいかない。」 Aさんはボイスフィッシング犯罪の被害者に対する否定的な視覚について、同意できないと言う。 彼は特にスマホのハッキングを指摘する。 「言葉では予防して備えていますが、このごろスマホがハッキングされたら112(日本の110に該当)に電話するとか検察に電話をかけても、すべて彼らに繋がっている。 アプリをインストールしようとした瞬間、ウィルスもうつされている場合があるので、避けることのできないのだ。 技術は発展しているのではないか。 この組織は誰よりもそんな技術に遅れを取ることはない。」

 Aさんは貸し付け詐欺の事例も挙げた。 彼によると、貸し付け詐欺の場合、「私たちは一般の銀行より、今はもっと安く貸し出すことができます」といった風に低金利をエサに被害者を狙う。 Aさんは自分が会った被害者に対して「本当に一生懸命に暮らしている人たちだった」と思い返した。 色んな方法を通して騙された人たちは、直接現金を渡したり、お金入りの封筒を渡してくれる。 結局Aさんに検察は懲役7年を求刑し、裁判の結果、懲役3年が確定した。

 Aさんは被害者らのことに言及するたびに、「ごめんなさい」を繰り返した。 彼は「あの人たちに洗い流せない間違いを犯したのだから、一生反省し、またこのようなことはしない」と言葉を繋げた。 「今ボイスフィッシングに加担している人に一言あるか」という質問に、彼は淡々と次のように言った。

 

「今やっている仕事が疑わしいなら、自首しなければ」

 「自分がしている仕事が疑わしいのなら、今からでも本人自ら警察に行って自首するのが正しいと思います。 ちょっとでも関係していると思ったら、自首することが個人的にも刑罰を受けるのに軽くなるはずだから。 そして『悔しい』とか『自分は知らない』とか言わない方がいいです。」 国内にはいないと推定される詐欺の元締めについて尋ねると、Aさんの声が高くなった。 彼はしばし目をつぶったかと思うと目を開けて、「自業自得、いつかは必ずやったことだけのことが返ってくる」という話を始めた。 「お前らがあのように儲けた黒い金。 そんな金は、本当に早く消えるではないか」と言い、「ずっとそのように生きていろ。いつか、お前らがあのように死ぬのだから。 私はこの言葉以外に言うことはありません」と付け加えた。

 最近、警察庁が発表した統計によれば、今年の四半期(1~3月)に発生したボイスフィッシング犯罪は総5878件である。 一日平均49件に達する被害が続出していて、これは昨年同期より17%増加している数値である。 被害者一人当たりの平均被害額も3000万ウォンを越える。 今この瞬間にも各種のボイスフィッシングが全国を駆け巡っていて、彼らに命令し操縦している組織上部の元締めも、どこかに存在している。 しかし元締めまで「根絶やし」にすることは、はるか遠くに見えるだけだ。

 

【特殊詐欺に関する拙稿】

韓国と日本の特殊詐欺(ボイスフィッシング) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/08/09/9794862

韓国の特殊詐欺               https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/08/31/9290686

韓国の特殊詐欺ニュース            https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/10/01/9300924

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