朴大統領は退陣・弾劾できるのか?2016/12/02

 この間の韓国の事態は、われわれ日本人には所詮対岸の火事で、テレビのバライエティ番組に取り上げられているレベルのものです。

 四年ほど前までの韓流ブーム全盛時代では、韓国ドラマやK‐POPにはまった女性たちが韓国を理想化するような発言をしていたのをよく聞いたものでした。 今度の事態で、今ただでさえ減っている韓流ファンが、さらに減っていくものと思います。

 ところで朴大統領に対して、野党は弾劾を主張し、与党は四月の退陣を主張しているようです。

 野党は当初早期退陣を要求して、時間のかかる弾劾に否定的だったのですが、今ようやく弾劾でまとまってきているようです。 弾劾は憲法に定められているので、あとは憲法に沿った手続きをすればいいだけです。

 問題は、議会の三分の二の賛成を得られるかどうかと、憲法裁判所の弾劾審判が下りるかどうかです。 弾劾は大統領が法に違背した場合のみで、国民の支持がないのは理由になりません。 大統領がどの法にどのように違背したか、野党はそれを立証する必要があるのですが、果たして出来るのでしょうかねえ。 今の状況では違法行為を立証するのにかなり時間がかかるように思えるのですが‥。

 与党は、四月に退陣して六月に大統領選挙の主張でまとまったそうです。 しかし韓国の憲法を読めば、大統領の任期途中の辞任が可能なのか、疑問です。 憲法の当該条項は次の通りです。

第68条 ② 大統領が欠位となったとき又は大統領当選者が死亡し、若しくは判決その他の事由により、その資格を喪失したときは、60日以内に後任者を選挙する。

 このように憲法は任期途中の辞任の場合を定めていませんので、その方法・手続きもありません。 無理やり言えば「その他の事由」でしょうか。 今度の場合でしたら与党は、大統領が「今は辞めないが、四月に辞めます」と宣言することを想定しているようです。

 しかしこれで「資格喪失」になるのでしょうか。 またその時なって「やはり四月に辞めることは出来ません」となったら、どうなるのでしょうか。 方法・手続きの定めがありませんから、これも考えられることです。 定めのないことを敢えてしようとすると、かえって混乱するように思えるのですが‥。

 他国のことはいろいろ考えても仕方ありませんねえ。 冒頭に書いたように所詮対岸の火事ですから。

朴大統領は辞意・退陣を表明していない2016/11/30

 昨日(29日)に朴大統領が談話で「辞意」「退陣」を表明したとの報道で、かなり騒がしいですね。 大統領の談話では次のようになっています。

今、私はこの席で、私の決心を明らかにしようと思う。 私は大統領職の任期短縮を含め進退問題を国会の決定に委ねる。 与野党が論議し、国政の混乱と空白を最小限にして、安定的に政権を移譲できる方策を用意してくれれば、その日程と法手続きに沿って大統領職から退く。

 この最後の「大統領職から退く」から、「辞意・退陣の表明」と受け取られたようです。 しかしよく読めば、「進退問題を国会の決定に委ねる」 「与野党が論議し、国政の混乱と空白を最小限にして、安定的に政権を移譲できる方策を用意してくれれば」という前提がついていることに注意が必要です。

 つまり自分で大統領を辞めるとは一言も言っておらず、国会で決めてくれ、と言っているのです。 国会で決めるとなれば、憲法上弾劾訴追しかありません。 だからこれは、私を弾劾してください、ということになります。

 弾劾は憲法裁判所で審判されますが、その時に自分の主張をするつもりなのでしょう。 今は自分の主張をしても、誰も聞いてくれないでしょうからねえ。

韓国の小説の翻訳に挑戦(13)―チョン・ソヒョン2016/11/24

 語学勉強のための小説翻訳。 高校時代に飛び降り自殺を企図して辛うじて助かった女性の20年後、記憶喪失と記憶力減退に悩みながら当時を思い出します。

 小説ですのでどれだけの事実か分かりませんが、韓国の学校でのイジメの様相が描かれています。

昨日のこと http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/sakujitsunokoto.pdf

【これまでの小説の翻訳】

韓国の小説の翻訳に挑戦         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/05/04/7626475

韓国の小説の翻訳に挑戦 (2)       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/02/7722604

韓国の小説の翻訳に挑戦 (3)       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/09/15/7792887

韓国の小説の翻訳に挑戦(4)-孔枝泳  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/10/11/7835346

韓国の小説の翻訳に挑戦(5)―孔枝泳(2)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/11/18/7914156

韓国の小説の翻訳に挑戦(6)―申京淑(3)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/01/10/7986267

韓国の小説の翻訳に挑戦(7)―殷熙耕(2)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/03/29/8059347

韓国の小説の翻訳に挑戦(8)―クォン・ヨソン  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/05/24/8095033

韓国の小説の翻訳に挑戦(9)―ファン・ジョンウン http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/07/05/8125628

韓国の小説の翻訳に挑戦(10)―キム・エラン http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/08/05/8146227

韓国の小説の翻訳に挑戦(11)―ソン・ボミ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/01/8167186

韓国の小説の翻訳に挑戦(12)―チョ・ヘジン http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/13/8224495

朴大統領は退陣するか?2016/11/19

 韓国では朴大統領の親友とされる崔順実の事件で、大変なことになっています。 大統領は国民の支持を失い、国会では与党からも見放されて、ほとんど孤立無援状態です。大統領は謝罪会見ではかなり疲れ切った表情をみせていました。 精神的に追い込まれているようで、極端な行動に出なければいいが‥‥と思いました。

 ところで国や野党、マスコミが大統領退陣を要求し、与党までもが同調しています。 退陣とは大統領職を辞任するという意味ですが、韓国の憲法を読むとこれは可能なのかと疑問になります。

 実は韓国の憲法には、大統領が任期途中で自ら辞任することは想定されておらず、果たして大統領が自分の意志で辞めることが出来るのか疑問なのです。 大統領は死ぬか弾劾か等の特別な事情がない限り任期を全うするというのが憲法の考え方ですから、任期途中の辞任は憲法の枠組みから外れるものです。

 憲法に基づいて民主主義的に選出された大統領が、デモ等の圧力によって憲法に基づかない辞任をするとなれば、これは革命かクーデターと同じことでしょう。 憲法を守るなら憲法に明記されている弾劾の手続きをすべきだと思うのですが、野党が弾劾に反対しています。 反対の理由がよく分からないのですが、弾劾に必要な国会議員の三分の二以上の賛成が見込めない、あるいは憲法裁判所の採決に必要な六人(裁判官は九人であるが、来年初めに二人が任期切れで辞めるので、七人中の六人の賛成が必要となる)が見込めない、例え見込みがあったとしても半年以上かかる、というのが理由のようです。 要するに野党側に有利な状況下で弾劾が成立するのか分からないし、弾劾を提起して成立しなかったら今度はこちらが打撃を受ける、これが本音の理由だというのですが、どうなんでしょうかねえ。

 朴大統領は形の上でお飾りとして留まって、実質権限をすべて大統領代行者である首相に任せる案もあるようです。 しかしこれも憲法に沿うものか、疑問です。 首相は大統領を代行できますが、それは「大統領が欠位になり、又は事故により職務を遂行することができないとき」(第71条)に限られます。 体がいたって健康で書類を読むことができて官邸に常住する大統領がいるのに、その業務を首相が代行できるのか、憲法上においてかなり疑問です。 こんな体制になれば、お飾りでも大統領は憲法に定められた強大な権力を行使することが可能ですから、かえって混乱を呼ぶように思えるのですがねえ。

 朴大統領はこのまま辞めることなく任期を全うすることも考えられます。 この場合は国民からの支持がほとんどなく、国会で与党からも見放されたまま残りの任期1年4ヶ月の間、大統領職を続けることになります。 これまで選挙等が正常・常識的に行なわれてきた民主主義国家ではこんな事態が長期間続くことは極めて珍しい例となりますので、これはこれで興味深いものです。

二重国籍かどうか微妙な場合2016/11/13

 二重国籍は国際化とともに発生するもので、だから国際化が進めば進むほどに二重国籍は多くなり、また複雑で微妙な二重国籍者が出てきます。 二重国籍かどうか、微妙な例を挙げてみます。

 A国の外国人男性(「外男」とする)と日本人女性(「日女」とする)夫婦の間に子供(「子」とする)がいます。 この子の国籍は何か?です。

 普通に考えれば、国籍の父母両系主義によりA国と日本との二重国籍です。 しかしこの夫婦が事実婚であれば、子は非嫡出子ですから単一日本国籍になります。 つまり両親が法律婚か事実婚かで、子の国籍が違ってくるのです。

 次に夫婦が法律婚だとして、婚姻はどの国でも年齢・相手の範囲・重婚等で制限があり、その制限は各国によって違います。 そうするとこの夫婦の婚姻届は日本では合法でもA国では違法となる場合が出てきます(その逆もあり得ます)。 つまり婚姻届は日本では受理されたがA国では受理を拒否されていたとしたら、子の国籍はどうなるのか? 日女から生まれているので日本国籍は間違いありませんが、二重国籍になるかどうかは微妙になります。 日本ではA国との二重国籍だが、A国ではその国の国籍者ではないから単一日本国籍、となるのかも知れません。 この場合は二重国籍でもあり単一国籍でもあるということになります。

 さらに子が非嫡出子で単一日本国籍だとしても、外男が自分の子供なのだからと認知届を出した場合どうなるのか? この場合でも、認知届をA国と日本の両方に出す場合と一方の国にだけ出す場合とがあります。 いずれの場合でも、二重国籍となるのかそれとも単一日本国籍のままであるのか、微妙になります。

 二重国籍の発生原因は出生(血統や出生地)、婚姻(女性は婚姻に伴い男性側の国籍を取得する国がある)、認知、帰化(国籍離脱困難国からの帰化者は二重国籍を解消できない)などがあります。 上述のように出生(血統)の場合でも二重国籍かどうか直ぐには判定できない微妙な例がかなりありますから、他の場合を含めると相当な数になります。

 国籍判定はそれぞれの国の主権行為ですから、日本政府は本人が日本国籍を有しているかどうかの判定は出来ます。 しかしもう一つの国の国籍を有しているかどうかはその国に聞いてくれ、こちらは知らぬ、と言わざるを得ません。

 二重国籍者の参政権を制限しようとする動きがありますが、このような微妙な例を念頭に入れているのか、疑問になります。

 権利の制限は明確な一線を引かなければなりません。 しかし‘二重国籍でない’ことを証明できる書類はあり得ませんから、この一線を引くことは不可能です。

 従って二重国籍者の参政権制限は非現実的な考え方と言えます。

【拙稿参照】

蓮舫二重国籍問題のまとめ   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/11/03/8241041

二重国籍には様々な姿がある  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/29/8237969

私が二重国籍に関心を持った訳 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/28/8237467

二重国籍でないという証明は困難 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/23/8234323

二重国籍は複雑で難しい     http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/20/8232627

蓮舫はもともと二重国籍でなかったのでは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/16/8230218

蓮舫の二重国籍問題―産経の間違い http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/14/8226719

蓮舫は国籍選択宣言をしていないのでは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/07/8216765

蓮舫の過去の「国籍発言」    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/16/8190975

蓮舫の二重国籍疑惑       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/09/8176022

水野・文『在日朝鮮人』(22)―帰化2016/11/08

在日朝鮮人を、植民地支配に由来する韓国・朝鮮籍保持者(おおむね韓国・朝鮮籍の特別永住者で、いわゆるオールドカマー)に限定すると‥‥オールドカマーの減少の第一の原因は、日本国籍の取得、いわゆる「帰化」の増大である。 この間の世代交代や、帰化要件・手続きの効率化(*)などもあいまって韓国・朝鮮籍の帰化者数が著しく増加し、2013年現在累積の帰化者数は35万人近くに達している。      (*)かつての帰化には、複雑な手続きと二年から三年の期間が必要であったといわれるが、90年代の以降の特別在留資格をもつ在日韓国人の帰化手続きの事例は、ほぼ一年余りで帰化手続きが完了している(浅川晃広『在日外国人と帰化制度』) (213頁)

 この本では帰化については詳しく書かれていません。 だから帰化要件や手続きが具体的にどうなっているのか、「効率化」されたと言いながら何が「効率化」されたというのかが記されておらず、浅川さんの言を紹介しているだけです。

 ところでこの本では、この浅川晃広さんの『在日外国人と帰化制度』のどこかの部分を引用しているような体裁にしていますが、実際にはこのようなところは見当たりません。 さらにこの紹介文では「特別在留資格」となっていますが、「特別永住」と「特別在留」は違うものです。 浅川さんの本には「特別永住」のみが記されており、「特別在留」には全く言及していません。 従って、これはこの紹介文を書いた水野直樹・文京洙の間違いだと考えた方がいいようです。 

 浅川さんは帰化者へのアンケート調査により、帰化申請受付から許可までの期間について次のようにまとめています。(118頁)

   半年以内 半年~1年 1年~2年 2年~3年 3年以上 無回答   計 

韓国   48     129     46      3     1      1    228

 この数字は植民地に由来する特別永住だけでなく、近年のニューカマーも含んだ数字です。特別永住だけの数字はありません。 それはともかく、帰化書類が十分に整っていたら、許可までの期間は一年もかかっていないことを示しています。 ここでも水野・文の紹介文にある「在日韓国人の帰化手続きの事例は、ほぼ一年余りで帰化手続きが完了している」とあるのが、かなり不正確であることが分かります。 おそらく浅川さんのこの本を実際に読んでいないものと推測できます。

 ところで帰化手続きで、かつては時間がかかったが近年は時間がかからないということについて、在日韓国・朝鮮人をよく知っていれば分かることです。 在日のお年寄りの場合、本国の戸籍に記載されている名前や生年月日等が日本の外国人登録簿にあるそれと違っていることが多く、それを解決しなければ帰化書類が調えられないという事情があり、時間がかかりました。 しかし若い世代になると、本国における正確な戸籍記載が進んでいるので帰化書類を調えやすく、また日本で生まれ育っているものですから日本国内の書類も簡単に入手できますから帰化手続きがスムーズに行くのです。

 在日が帰化しようとしたら、昔は民団に行って高い手数料を払って取り寄せてもらっていたのですが、今は領事館に行くと自分や両親の戸籍を簡単に直ぐに発行してもらえます。 ただそれはハングルなので、それの日本語訳が必要になることぐらいがネックになります。 しかしこれも、近頃の韓流ブームで韓国語を読める人が日本人でも飛躍的に増えましたので、難しくないでしょう。 在日の世代交代に伴い、本国における身分証明関係書類(戸籍など)が調えやすくなったことが、帰化の期間短縮に繋がっているのです。

 近年では若い在日が帰化を申請して受け付けられたら、半年もかからないで許可されるのが現状です。 しかしこれは日本の帰化制度が「効率化」されたからではありません。 浅川さんも前述の著で「現在の非効率的かつ非合理的帰化手続は早急に改善されなければならない」(179頁)と提言するように、「効率化」からほど遠いのが今の日本の帰化制度です。 帰化は所属する国家の変更で、本人にとっても国にとっても大変重要なことですから、慎重に進めるべきものです。 元々が「効率化」には馴染める法制度ではありません。

【これまでの拙稿】

水野直樹・文京洙『在日朝鮮人』(1)―渡日した階層 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/06/8066021

水野・文『在日朝鮮人』(2)―渡航証明と強制連行 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/11/8069125

水野・文『在日朝鮮人』(3)―強制連行と強制送還  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/17/8072649

水野・文『在日朝鮮人』(4)―矛盾した施策 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/25/8077594

水野・文『在日朝鮮人』(5)―強制連行と逃走  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/29/8080041

水野・文『在日朝鮮人』(6)―渡航の要因 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/05/09/8086320

水野・文『在日朝鮮人』(7)―人口の急増 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/05/14/8089137

水野・文『在日朝鮮人』(8)―戦前の強制送還者数 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/05/19/8092119

水野・文『在日朝鮮人』(9)―ハングル投票  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/06/19/8115076

水野・文『在日朝鮮人』(10)―子弟の教育 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/06/22/8116734

水野・文『在日朝鮮人』(11)―尹東柱   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/06/26/8118773

水野・文『在日朝鮮人』(12)―財産を形成した在日 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/07/12/8129867

水野・文『在日朝鮮人』(13)―関東大震災への疑問 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/07/19/8134282

水野・文『在日朝鮮人』(14)―終戦直後の状況 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/07/22/8135824

水野・文『在日朝鮮人』(15)―外国人の地位 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/07/25/8138588

水野・文『在日朝鮮人』(16)―国籍剥奪論の矛盾  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/07/30/8142349

水野・文『在日朝鮮人』(17)―小松川事件 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/08/15/8152243

水野・文『在日朝鮮人』(18)―北朝鮮帰国事業  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/08/21/8156717

水野・文『在日朝鮮人』(19)―関東大震災・吉野作造 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/04/8169265

水野・文『在日朝鮮人』(20)―南朝鮮革命に参加する在日  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/08/8173965

水野・文『在日朝鮮人』(21)―同化  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/23/8197450

蓮舫二重国籍問題のまとめ2016/11/03

① 日本は台湾を国家として承認していないので、台湾籍は日本にとって国籍ではない。 だから蓮舫は台湾との二重国籍とは言えない。

② 日本の立場からいうと、中国を承認した時点で台湾人は中国国籍となる。 そして中国の国籍法は、他国の国籍を取得した中国人は自動的に国籍を失うとあるので、蓮舫は中国との二重国籍ではない。

③ 従って蓮舫は、17歳で日本国籍を取得した時点で法的には日本単一国籍となったと言える。 だから国籍法第14条違反に問われることはない。

④ しかし台湾は実質的に国家の形をなしており、将来国家承認される可能性がある。 また現在台湾のパスポートは他国のパスポートと同様に通用している実情から、台湾籍は国籍と見ることも可能である。

⑤ すなわち蓮舫は法的には日本単一国籍であるし、そのように扱わなければならないが、見方によっては二重国籍の余地があるという変則的な場合になる。

⑥ 蓮坊は、現在は台湾籍を離脱したので、二重国籍と考える余地もなくなった。 蓮舫の二重国籍問題は、今は終わったとすべきである。

⑦ 問題が表出した当初、蓮舫は自分が日本単一国籍であって二重国籍ではないと主張できたのに、それをしなかった。 そして行政指導に従って国籍選択宣言をした。 蓮舫にはこの行政指導の法的根拠を問いただしてほしいと思う。

⑧ 蓮舫に戸籍の公開を要求する意見があるが、戸籍を公開するかどうかは本人が決めることである。 他人が戸籍公開を要求すること自体が不当である。 蓮舫が戸籍公開を拒否したことに、何の問題もない。 これからも拒否を貫いてほしいと思う。

二重国籍には様々な姿がある2016/10/29

 国籍は各国の国籍法に基づき定められます。 国籍が複数に重なる状態が二重国籍です。 簡単に言えばそうなのですが、実際の姿は様々です。

 二重国籍者の典型例は、自分が二重国籍であること自覚して両国から正規のパスポートを取得し、二つのパスポートを使い分けて海外旅行する人です。 近頃は知りませんが、二つのパスポートの所有する人が同一人物であることはなかなか分かるものではありません。 だから第三国で国外追放処分を受けても、もう一つのパスポートを使って再入国できます。 これは極端な例でしょうが、それ程に二重国籍は活用すると非常に便利なものです。

 本人が二重国籍であることを自覚していない場合があります。 二重国籍となるのは両親の国籍が違うとか外国で出生したとか様々場合があるのですが、親からそのことを教えてもらわないまま単一国籍者として育つことがよくあります。 親が教えなかった理由も様々で、国籍法の知識がなく二重国籍になるとは分からなかったとか、二重国籍であることは知っていたが離婚再婚を繰り返すうちに子供に教えることを失念したとか、個々の事情は百人百様、千人千様で、本人には責任がありません。 ですから国籍法に定める国籍選択をせず、法的に二重国籍のまま過ごすことになります。 なおこの場合は、本人が二重国籍であることに気付いた時に一方の国籍を離脱して単一国籍にする可能性と、法的には二重国籍でありながら実際には単一国籍として行動を継続する可能性、あるいは両国からパスポートを取得するなど二重国籍者の権利を享受する可能性など、色んな可能性が考えられます。 

 親も本人も二重国籍に気付かない場合があります。 戸籍を見ても外国籍を有していることは記載されていないし、家族も周囲も誰も二重国籍とは分からない場合があるのです。 国籍は各国の法によって定められています。その国の法によればその国の国籍を有しているはずなのですが、そのことを誰も知らず日本の単一国籍と思っている、という場合です。 

 北朝鮮は、朝鮮人(韓国人)は全て我が公民であり、我が国の国籍を離脱するには我が国の決定が必要としています。 今日本には韓国からの帰化者が35万人ほどと言われていますが、彼らが北朝鮮国籍離脱の手続きをした人はおそらく皆無でしょう。 とすると、韓国からの帰化者は韓国籍を離脱していても北朝鮮国籍の離脱が完了していない二重国籍者だということになります。 自分は北朝鮮の国民であったことはないとか戸籍にはそんなことは書かれていないとか主張しても、そんな個人の事情とは関係なく北朝鮮の法律がそうなっています。 だから北朝鮮は、我が国の法に照らして日本の帰化者は我が国の国籍を有していると主張することが可能です。

 日本の国会議員で韓国からの帰化者がおられますが、その方に北朝鮮との二重国籍ではありませんかと聞くのも一興かも知れません。 おそらく本人は目を丸くして、何をバカなことを言っているのかと拒絶するでしょうが‥

私が二重国籍に関心を持った訳2016/10/28

 二十年程前の話ですが、ある20代の男性から、ある日突然官憲がやって来て日本のパスポートを取られ、代わりに外国人登録証を渡された、何故こうなったのか訳が分からない、という相談が来たことがあります。 聞いてみると、父が韓国人、母が日本人で、日本人として育ってきて、二重国籍ではなく日本の単一国籍だった、だから日本のパスポートで海外旅行をし、選挙にも行っている、しかしある日突然日本国籍を失い、韓国籍を強要されたという話でした。

 私も最初は訳が分からなかったのですが、彼の戸籍の記載事項および家庭内状況を聞いて、次の事情が分かりました。

 彼の両親は韓国人と日本人ですから、生まれた当初は日韓の二重国籍でした。 両親は彼が生まれて数カ月して日本国籍を選び、単一国籍としました。彼は日本人として成人になりました。 ところが父親は自分が亡くなる直前に何を思ったのか、彼に韓国籍を取らせました。その手続きは父親がしました。 韓国の国籍法には国籍回復条項があり、かつて韓国籍を有していた者は国籍を回復することが割りと簡単に出来ます。 彼は深く考えないで国籍回復を承諾したようです。 彼は父親が亡くなってからも日本のパスポートを持って海外旅行を何年も続けました。 国籍回復した事実を全く忘れてしまい、気持ちは全くの日本単一国籍者でした。 しかし国籍回復が日本当局に知られ、自分の意志で外国籍を取得した者は日本国籍を失うという法律により日本のパスポートを取り上げられ、代わりに外国人登録証を持たされたのでした。

 父親は自分の死を前に息子に韓国人の自覚を持たせようと国籍回復させたのでしょうが、息子はそれが日本国籍喪失を意味することを知らずに安易に承諾し、その手続きを父親に任せ、その承諾を失念したということになります。 しかし本人は、ある日突然日本人でなくなり外国人を強要されたという被害意識の塊でしたねえ。

 この時に私は国籍について関心を大きくし、国籍法の関する専門書を何冊か購読しました。 そうすると在日は韓国と北朝鮮の二重国籍者であることに気付きました。 韓国の国籍法も北朝鮮の国籍法も、朝鮮人(韓国人)すべてを我が国の国民(公民)と規定しているのですから、二重国籍と言うしかありません。 在日社会では昔北か南かで激しいイデオロギー紛争がありましたが、法的に見れば二重国籍者であるが故の紛争でした。 ですから二十年前の当時、家族内の争いごとである離婚や相続は韓国の法律に準拠するのか、北朝鮮の法律に準拠するのか、それとも常居地である日本の法律に準拠するのか、かなり深刻な問題であることを知りました。 これは余りに複雑すぎて素人が出る幕ではなく、専門家に任せるしかないものです。

 二重国籍とは複数の国家に所属することですから両国の権利を行使できますので、それだけ便益があります。 例えば重婚など単一国籍者には違法であるものが、二重国籍者では可能です。それほど二重国籍の便益性は大きいということです。

 二重国籍はいいことばかりではありません。 両国の権利を享受できるということは、義務も生じます。 一番問題になるのは兵役です。 兵役義務のある国では二重国籍者の徴兵逃れを防止するため、二重国籍者への対応が厳しいという話です。

 二重国籍者は両国の保護を同時に受けることが出来るのですが、これが逆に作用します。 例えば二重国籍者が国際テロ組織に人質となったとしましょう。 どちらの国が救出するのかで外交的衝突が起きる可能性が高いです。 ということは、二重国籍者は救出に乗り出してくれる国はないことを覚悟しなければなりません。

 このように国籍に関心を持ったのが二十年ほど前。 それから関心が薄れていたのですが、今回の蓮舫二重国籍問題でまた関心を持った次第です。

二重国籍でないという証明は困難2016/10/23

 日本維新の会が国会議員の二重国籍法案を提出したそうですが、その中身が分かりません。どうやら国会議員の被選挙権の要件に外国籍を持たないことを追加することのようです。

 もしこの法案が成立すれば、立候補者は立候補の届出の際に、自分が「外国籍を有していない」ことを証明する書類を提出する必要性が出てきます。 

 日本国籍を有しているか否かは戸籍を見れば分かります。立候補届出に必要な書類に戸籍がありますから、これについては問題がありません。 しかし外国籍を有していない(=二重国籍でない)ことを証明する書類は一体何なのでしょうか? 

 日本政府は日本国籍を有しているか否かを判定する権限はありますが、外国籍を有しているかどうかの判定をする権限はありません。国籍判定はそれぞれの国の主権行為だからです。 従って日本政府は、この人物は外国籍を有していない(=二重国籍でない)という証明をすることが出来ません。

 それでは世界には200ヶ国ほどがありますから、この全ての国に国籍を有していないという証明書を作ってもらうのでしょうか?  これは不可能なことです。

 どう考えても、「外国籍を有していない」ことを証明する書類はあり得ないです。 つまり被選挙権の要件に「外国籍を有しないこと」を加えたとしても、それを証明する公的機関がありませんので、実際に意味をなさないものと思われます。