嫌韓派の論者たち2017/10/19

 嫌韓雑誌や嫌韓本が売れているようです。 かつては私も購入していましたが、ここ数年は全く購入していません。 なぜなら、内容が以前と変わりなく面白くないからです。 買うのが勿体ないし、といって話題になっているのに全く知らないというのも何ですので、もっぱら立ち読みです。 このごろは机と椅子を置いてくれている本屋が多くなっているので、立ち読みではなく座り読みですね。これで十分です。

 ケント・ギルバードの『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』。 40万部も売れているそうです。 私も儒教についてはそう詳しくないので偉そうなことは言えませんが、この人の場合は儒教の知識が全くないと言っていいと思います。 古代中国の孔子・孟子、中世の朱子学と陽明学の違い、日本近代に儒教が及ぼした影響(教育勅語など)等々の知識ぐらいはあると思っていたのですがねえ。 保守とか右派論客と呼ばれる人たちの文章をざっと読んで書いた感想文に「儒教」という言葉を挟み込んだだけの本みたいでした。 こんな本がたくさん売れているのですから、むしろどんな人がこれをわざわざ買って読むのかの方に関心が行きます。 そうだ!その通りだ!と溜飲を下げながら読むのでしょうかねえ。 

 呉善花も嫌韓雑誌の常連です。直接投稿だけでなく対談もするし、他の嫌韓論者の文章の中にも彼女の名前が出てきますから、かなり影響力を持っています。 彼女の初期の著作である『スカートの風』は体験に基づくものでしたから面白かったですが、近頃の文章は嫌韓ブームに乗っているだけのように見えます。 自分の考えについて検証・裏付け・確認の作業をしているとは思えないからです。

 例えば、彼女は『漢字廃止で韓国に何が起きたか』という本を10年ほど前に出しています。 この本で彼女は、韓国は漢字廃止によって知的荒廃をもたらしたと論じました。 この「韓国の知的荒廃」論が影響力を持ち、あちこちで引用されてきたし、今も彼女の名前を挙げてこれを論じる人もいます。 しかし彼女はこれについて事実かどうか、何の検証もしていません。 ただ自分がそのように思っているというだけの印象論に過ぎません。 大学教授ですから一応研究者なのですが、なぜ研究の基本である検証作業をしないのか、不思議です。 古田博司は、そんなことは漢字があった李朝時代から続いているという異論をどこかで唱えていましたねえ。 しかし、そんな彼女に多くのファンができて、全国の講演でかなりの人を集めるというのですから、これはこれで興味ある現象です。

 結局、ケントも呉も嫌韓の民衆を喜ばせる講釈師の役割をしていると考えます。 なおこれはこの二人に限ったことではなく、嫌韓論者の全般に言えることではないかと常々思っています。

【拙稿参照】

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(1)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/01/10/7183064

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(2)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/01/12/7190236

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(3)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/01/15/7193473

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(4)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/01/19/7197589

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(5)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/01/22/7200651

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(6)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/01/27/7205232

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(7)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/01/31/7208311

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(8)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/02/02/7210006

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(9) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/02/05/7213236

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(10) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/02/08/7216206

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(11) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/02/10/7218555

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(12) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/03/09/7240684

外国人観光客の増加2017/10/15

 外国人観光客が急増し、過去最高を記録しています。 わざわざ日本に来て、お金を落としてくれるのですから、日本の経済に大いに役立っていて有難いものです。 

http://www.recordchina.co.jp/b193650-s1-c30.html

 ところで観光案内をしている韓国人から、日本人が不親切になってきているという話を聞きました。

 外国人に大人気となっている場所にある有名な食堂で、店の主人が余りに不親切でケンカになったといいます。 かつては落ち着いた雰囲気の店だったのに、外国人客が押し寄せたせいで店の人が不機嫌になったのだろう、しかしお客さんにあんな態度は許せない、ということでした。

 ヨーロッパでも有名観光地では、観光客による環境悪化により、ここはテーマパークではないとして、外国人観光客排斥運動が起きています。 環境悪化とは、観光客のマナー違反だけでなく、物価の高騰、特にアパートの所有者が民泊の方が儲かるからと長年住んでいる人を追い出す等々が報道されています。

 日本でも外国人が集中する観光地で地価が高騰し、そのせいで周辺の住居や店舗の家賃が値上がりして生活しにくくなったとかいう話を聞きます。

 国は外国人観光客の誘致に熱心ですが、急な変化にはトラブルがつきものです。 やはり対策を考えねばならない時期に来ているようです。

韓国の反日感情はいつ形成された?2017/10/08

 韓国の反日感情について、30年ほど前までは日本の過酷な植民地支配の記憶があるから反日感情がある、というのが定説でした。 だから、植民地支配を体験した世代が社会の第一線から退き、それを知らない若者が韓国を担う時になれば反日感情は薄れるというものでした。 だから日韓の若い人同士の交流ともっと盛んにせねばならない、という主張となりました。

 しかし日韓交流を進めて相手方をよく知るようになると、実際に植民地支配を体験したお年寄り世代は必ずしも反日感情を有しておらず、むしろ懐かしさを語る人が多いことが分かりました。 また世界史において主に欧米がアジア・アフリカ・アメリカ等に植民地を経営していましたが、それらと比較してみると日本の朝鮮植民地支配は過酷と言えるかどうか疑問になります。 としたら過酷な植民地支配ゆえに反日感情が形成されたとは言えないのではないか、と思われるようになりました。

 次に反日感情をもっと遡らせて、李朝時代(朝鮮時代)に徹底された儒教(=朱子学)の華夷思想から反日感情を説明する人が出てきました。 朝鮮は文明国、それに対して日本は野蛮国だと軽蔑するもので、これが反日感情の淵源だとするものでした。 これはこれで説得力がありましたが、これでは近代化が進行すれば反日感情は薄れていくはずです。 しかし実際はそうではありません。 韓国の反日感情は維持されたままです。

 以上のようなことを考えていたら、最近になって黒田勝弘『隣国への足跡』(角川書店 2017年6月)に 反日感情は戦後(1945年の解放後)に形成されたと論じているのを見つけました。

朝鮮半島では多くの若者が戦時中、日本軍の戦勝ニュースに熱狂し、志願兵応募には列をなすほど日本人化していた。    日本統治時代の35年間に育った世代は‥‥ 解放後の新しい韓国を担う新しい中心世代にならなければならない。 ところがまずいことに彼らの多くは日本人化していた。   その結果、1945年の解放・独立は彼らに、「自分たちは日本人なのか韓国人なのか」という切実な問題をもたらした。 いわゆるアイデンティティの動揺である。 (308~309頁)

「はい、あなたは今日から韓国人ですよ」といわれてもすぐには実感できない。新生・韓国にとって最大の課題は、それまで日本人になりかかっていた韓国人を、あらためて本当の韓国人に作り直すことだった。   ‥‥ 「われわれは日本人ではない。韓国人である」ことを教え、韓国人に日本人離れを促すためにもっとも効果的な方法は、過去の日本つまり日本による統治時代のことを徹底的に否定することだった。 日本はいかに悪い存在で、いかに多くの悪いことをし、いかに韓国人はいじめられ、苦労したか‥‥を徹底的に教え込むことで、韓国人の日本人離れを促そうとしたのだ。 (309頁)

そのためには、日本支配の過去の歴史は酷ければ酷いほど都合がいい。   したがって過去は実態以上に、過剰に、暗く否定的に教えられた。 「韓国人の反日感情は戦後(解放後)に形成された」とよくいわれるゆえんである。 韓国としては、新しい韓国人作りのためにはそれはやらざるを得なかったのだ。

(日韓の国交正常化が遅れた理由は) 韓国人を本当の韓国人に作り変えるために、徹底した日本否定、日本非難の文字通り“洗脳作業”が展開されている時、宿敵・日本との国交正常化、関係改善などやれないのは当然だろう。  つまり、日本との関係改善や新たな交流がはじまっても、再び日本人に戻ってしまわないような“装置”を韓国社会に作っておくことが先決だった (310頁)

 韓国人は日本を否定することによって初めて韓国人らしくなると観念されていた、というのは説得力を感じました。 つまり反日感情こそが民族アイデンティティだということです。 確かに、在米韓国人は日本とは関わりがないのに従軍慰安婦問題で日本糾弾の運動を熱心にやっている理由がここにありそうです。

 韓国人が日本に魅力を感じながらも反日感情を維持しているというアンビバレントは、反日感情がなければ日本人化してしまい韓国人でなくなる、という危機感かも知れませんね。 それが戦後(解放後)の韓国人だったということです。

 黒田さんの「韓国の反日感情は戦後(1945年の解放後)に形成された」という主張は説得力がありますが、正しいかどうかとなると、その検証はこれからですね。

【拙稿参照】

古田博司 『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』(3)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/03/21/7250136

世界で唯一日本を見下す韓国人   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/06/8216253

日本を見下す韓国(2)         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/12/22/8285733

韓国人のアンビバレントな感情2017/10/01

 朝日新聞に「池上彰さんが歩く韓国―少女像を守る学生『日本好き』」と題する記事があります。 ソウルの日本大使館前の慰安婦像を守る活動をしている学生にインタビューしているのですが、興味深いのでその部分を引用します。   http://www.asahi.com/articles/ASK9V4JXXK9VUTQP00V.html

いつまでやるつもり?    「韓日合意を廃棄するまでです」

なぜこんなことを?      「(慰安婦問題は)歴史の中の話だと思っていました。でも、(元慰安婦の)おばあさんの話を聞いて、今も進行していることだと知ったからです」

大使館の前に少女像を置くことはウィーン条約に違反していると日本は指摘する。条約では大使館の受け入れ国には「威厳の侵害を防止するためすべての適当な措置をとる特別の責務を有する」となっている。どう思う?       「民間人が私費を投じてつくったもので、威嚇するものではありません」

日韓合意で、慰安婦問題は解決済みと合意したことについてはどう思う?      「おばあさんたちはそれに対して、とても反発しました。公式謝罪や法的賠償については何の言葉もなく、しかも賠償ではなく、補償金、寄付金の状態でお金をもらうという、怒るしかない状況でした」

そのお金を受け取ったおばあさんたちもいるが。       「おばあさんたちも多様です。名誉と人権を回復しようという考えの人もいましたが、疲れ果てた人もいます。高齢ですし、『自分は終わりにする』という人もいるわけです」

安倍総理が謝罪している。あれでは不十分?        「真摯(しんし)さをみせようとするなら、直接おばあさんたちを訪ねるべきです」

国民の選挙で選ばれた政府同士の約束は、それぞれの国民に不満があっても守るのが民主主義では?      「大統領が国民を無視して結んだことです。私たちが朴槿恵(パククネ)大統領を引きずり下ろした大きな理由の一つがこの問題だと思います」

あなたは日本が嫌い?        「いいえ、好きです。漫画も好きですし、ハハハハハ。すしも好きですし。隣の国ですし。外国に行けば、顔が似ているじゃないですか。日本人に会えば、懐かしくなります。歴史的な事実について解決すれば、もっと良い関係になるのではないかと思います」

 慰安婦問題で反日活動をしながら、日本が好きだと堂々と言う学生です。 これはこの学生に限ったことではなく、韓国人の一般的な傾向です。 また新しく出現したものでもなく、昔からある傾向です。 つまり「反日」と「親日」が同時存在(アンビバレント)しており、彼らはそれを矛盾とは思っていないということです。 

 池上さんは徴用工像について、その活動家にインタビューしています。

一方、徴用工像を建設する動きはなぜなのか。 韓国労働組合総連盟対外協力本部局長の曺善児(チョソナ)さんに聞いた。       「慰安婦問題は国民全体が力を結集していますが、強制徴用の問題は今の時代に生きている労働者たちが掘り起こしていく必要があると考えました」

日本で戸惑いが広がり、平昌五輪で韓国に行きたくないよね、という声もちらほら聞かれるが?         「労働団体である私たちの場合、強制動員で日本の工事現場や工場で犠牲になったり、生き抜いてきたりした人々を改めて記憶することが重要だと考えるわけです。私たち自身が忘れてはだめだという趣旨でこの事業を始めました」

日韓請求権協定で解決済みと日本政府は言っているが?       「私たちは清算がされていないと思っています。実際にあったことをまた起こさないために、未来を模索するための合意が必要です。正常な状態なら、加害者が被害者に『申し訳なかった』と言い、被害者が加害者に『許します』と言います。それを基盤にして、これから平和に過ごそうという約束をします。それが正常な解決だと思います」

国と国が約束したら、それは守らなければならないのでは?        「一般的にはその通りですが、『慰安婦問題は事実ではない、それらの人々は自発的に来た』などという人が日本の政界に出て来なければ、状況はここまでにならなかったでしょう」

 これは予想通りの内容です。 池上さんはさらにこの徴用工像を熱心に見ている人にインタビューします。

日本政府が謝罪しても、日本国内で「そんな事実はなかった」と言い出す人がいると、韓国側が硬化する。その繰り返しだということだろう。すでに徴用工像が立てられているソウル市内の竜山(ヨンサン)駅前。高齢の女性が像を熱心に見ていたので声をかけた。71歳だった。         「おじいさんやおばあさんが苦労した話を知っています。日帝時代35年の苦労を知っています。今があるのは祖先のおかげです」

日本をどう思う?         「とても親切で、礼儀もあり、良い印象です。また(日帝時代に)汽車もつくり、韓国を発展させました。いい部分もありますし、感謝もしていますが、最後に正しく締めてくれればいい」

 池上さんはこのインタビューの後、次のような感想を述べます。

驚いた。日本が朝鮮半島を統治していた時代、「日本はいいこともした」と日本の政治家が発言して大騒動になったことがあるが、まさか韓国の人から同じような発言が出るとは。でも、これも現代の韓国の一断面なのだろう。         韓国の労働組合の方針について、私の韓国滞在中の9月中旬、韓国の新聞2紙が同時に社説で批判を掲載した。「『韓国は外国公館の安寧と品位を守ってくれない国』という世界の見方が、韓国にとって何の得になるのか疑問だ」(朝鮮日報)「日本は緊密な安保的協力関係を強めるべき、地理的に最も近い隣国だ」「感情的に葛藤を深めることは自制しなければいけない」(中央日報)          少女像を守る女子学生が「日本は好き」とあっけらかんと発言し、新聞が自制を呼びかける。平昌五輪を控える韓国社会に、明らかに変化が見える。モヤモヤは消えないが、少し晴れた気もする。

 池上さんは「韓国社会に、明らかに変化が見える」としていますが、これは間違いでしょう。 上述しましたように韓国では昔も今も「反日」と「親日」が同時に存在しており、それが各個人も有している感情なのです。 だから「反日」だと思って警戒しながら近づくと意外に親切にしてくれて「あ!この人、親日なんだ」と思ってしまったり、逆に「親日」だと思って近づくと「反日言動」にビックリすることになります。

 相反する感情を同時に有していることを「アンビバレント」と言いますが、韓国人の日本に対する感情が正にアンビバレントなのです。 池上さんのインタビューは昔からあるアンビバレントが現れただけで、「明らかに変化が見える。モヤモヤは消えないが、少し晴れた気もする」と楽観視するのは、いかがなものかと思います。

 韓国人が日本に対して有するアンビバレントな感情は、日本人には理解が難しいものです。 だからなのでしょうか、嫌悪・うんざり感の嫌韓派と韓国にのめり込む韓流派と、両極端化していますね。 嫌韓派は韓国に関心があるのに韓国語を勉強しようとせず、韓流派は嫌韓雑誌に見向きもせず‥‥。

 韓国のアンビバレントと、それに対応する日本の両極端化は興味深い現象だと思います。 一人が相反する感情を同時に持つことができる韓国人と、一人は一つの感情しか持てなくて相反する感情を持つ複数の人間に分かれる日本人‥‥となりましょうか。

韓国が天皇訪韓を望む!?-朝日インタビュー2017/09/23

 韓国の李首相が朝日新聞のインタビューで、天皇の訪韓を望むと発言しました。 インタビュー記事のうちで、天皇に関する部分は以下の通りです。

韓国の李洛淵(イナギョン)首相は22日、朝日新聞のインタビューに応じ、天皇陛下の退位前の訪韓を求める考えを示した。日韓双方には、朝鮮半島とのゆかりに言及してきた天皇の訪韓が、日韓関係改善の大きな契機になると期待する声がある。   李氏は「退位される前に韓国へいらして、この間の両国がほどけなかったしがらみを解いてくだされば、両国関係の発展に大きな助けになる。それだけの雰囲気が早く醸成されることを望む」と語った。文在寅(ムンジェイン)政権として、訪韓実現の雰囲気を盛り上げていきたい考えも示した。 ‥‥‥

――退位前に天皇陛下の訪韓が実現すれば、日韓関係改善の大きな契機になるという指摘があります。

そうなることを望む。退位される前に韓国へいらして、この間の両国がほどけなかったしがらみを解いてくだされば、両国関係発展に大きな助けになると思う。それだけの雰囲気が早く醸成されることを望む。

――文在寅政権も努力されるのですか。

そうだ。雰囲気を共に醸成しつつ、私の希望では、退位前に一度訪韓が実現されれば良いと思う。

http://www.asahi.com/articles/ASK9Q5S0GK9QUHBI031.html

 韓国政府の要職に天皇についてインタビューするなら、2012年に行なわれた李明博大統領(当時)の天皇謝罪要求発言に言及するのが当然と思うのですが、全く出てきません。 わずか5年前に現職大統領が国民の前で、広く報道されることを前提になされた発言ですから、公式発言です。 これを無視して「天皇の訪韓が日韓関係発展の大きな助けになる」と言われても、果たしていかがなものなのでしょうか。

 李大統領の天皇に関する発言は次の通りです。

天皇は訪韓をしたがっているが、独立運動をして亡くなった方を訪ねて、真心を込めて謝罪するなら来てもいい

「痛惜の念」という言葉なんかで誤魔化すなら、来る必要はない

 朝日記者がこれを敢えて触れなかったのか、あるいは触れていても記事化する際に敢えて削除したのか、分かりませんねえ。

【拙稿参照】

李大統領の発言    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/08/18/6546033

『朝鮮日報』李河遠記者の天皇戦犯論   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/08/24/6553068

『朝鮮日報』記事に出てくる若宮啓文のコラムとは http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/11/18/6636750

木村教授が朝鮮日報に投稿2017/09/21

 韓国政治史研究の木村幹教授(神戸大学)が、韓国の有力紙『朝鮮日報』に9月20日付で投稿されています。 日本の研究者の論考が韓国の新聞に載るのは珍しいですね。 http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2017/09/19/2017091903210.html

 韓国語への翻訳は自分でされたのでしょうかねえ。 それとも直接韓国語で書かれたのでしょうか。 かなり達者です。 日本語ネイティブの韓国語ですから読みやすいです。

 この論考には私が新鮮に感じた考察があります。 その部分を訳してみます。

さらに根本的な問題は、韓・米・日の間の認識格差が生じて、政策が分裂している点である。 日本にとって北朝鮮の脅威は「当面する問題」だから、政府も世論も迅速な対処を求める。 反面アメリカは「将来の脅威」と考えてICBMの完成を抑制できるなら、それで十分なのである。 韓国にとっては北朝鮮の脅威は70年間続いてきた「日常」なので、北朝鮮の脅威それ自体よりは北朝鮮問題で朝鮮半島に危機感が高まることを恐れている。

そのような韓国が、米日には緊迫感がないように見えやすい。 北朝鮮のミサイルに怒る日本人には韓国の対北対話政策は、現状を放置するか悪化させる行動と映るのだ。 「朝鮮半島統一の主導権は韓国にある」という韓・米共同声明は、アメリカ政府が韓国政府を認め信頼しているという表明であると同時に、「アメリカが最終責任を取らない」という意味である。 韓国が強く主張すればするほどに、アメリカでは「我々は関与するまい」という声が大きくなる。

最悪のシナリオは「韓国の孤立」である。 対北強硬策を求める日本と対立し、アメリカでも「この際に駐韓米軍を再配置しよう」という声が高まる状況だ。 危機を実感している日本でさえ、朝鮮半島の有事の際に北朝鮮の脅威に直接さらされることはない。 日本が朝鮮半島問題に関与しないならば、北朝鮮が攻撃する可能性は低くなる。 政治家たちが適当に強硬発言をしながら、実際は責任を他国に回しておけばいいのだ。

事態がそのように流れていくなか、米・日から出てくる主張は「韓国の言う通りにしておけ」である。 今の構図では、韓国政府が主導権を主張すればするほど、韓国はさらに孤立する。 アメリカ大統領選の時、トランプが「韓・日はアメリカに期待するな」と言った局面で韓国が自らの核武装を主張することは、アメリカに朝鮮半島から手を引く機会を与える憂慮がある。 そうなれば韓国は北朝鮮と巨大な中国の前で、一人残ることになる。

韓国政府が苦労しなければならないことは、韓国の対北主導権を主張することではなく、どんな形であれ、米・日に具体的な役割を分担するように協力を求め、朝鮮半島問題から手を引くことが出来ないようにすることだ。 他国にとって朝鮮半島は「外国」でしかない。 自国の利益にならないなら、いつでも手を引くことが出来る。 北朝鮮が核開発を止めないことは明らかで、これを防ぐ解決方法は見えないのであるから、全ての国が「どのようにしたらこの問題から逃げられるか」と考えているところである。 彼らの耳に「韓国が主導権を持とう」という言葉がどのように聞こえるか、考えてみなければならない。

 朝鮮半島の歴史は、周辺の大国に翻弄されてきた歴史と言ってもいいぐらいです。 高麗時代はモンゴル・元に、李朝時代は明・清に翻弄され、近代になっても日本・中国・ロシア・アメリカに翻弄されました。 そのためか、韓国人には祖国の問題は自分で解決したいと「主導権」を主張することに心が引かれるようです。 しかしこの主張が、今の段階では孤立を招くということですね。

 なお木村幹さんについては、拙ブログで一度触れたことがあります。 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/05/19/7636889

「島国夷」とは?2017/09/16

 日経新聞、鈴置高史さん『早読み 深読み 朝鮮半島』の9月15日付け「ミサイル乱射の中、「親北」に突き進む韓国」のなかに、北朝鮮のアジア太平洋平和委員会が出した声明の中に日本に関して次のように述べたという記事がありました。          http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/091500125/

•米国の制裁策動に便乗して軽率に振舞った日本の島国夷に対する指弾の声も激しく出ている。

•千年来の敵であるウェノムのざまを見るほど目に火がつくようだ、わが人民に千秋にすすげない罪を犯しておきながらも謝罪をまともにせず、米国の「制裁」の笛に踊りながら憎らしく振る舞う奸悪なチョッパリらをそのまま放っておけない、日本列島の上空を飛び越えるわれわれの大陸間弾道ロケットを見ながらもいまだ気を確かに持てず、意地悪く振る舞う日本のやつらにはっきり気概を示すべきだ、取るに足りない日本列島の4島をチュチェの核爆弾で海の中に押し込むべきだ、日本はこれ以上われわれの近くに置く存在ではない、これがわが軍隊と人民の激昂した声である。

 この中の「島国夷」という聞き慣れない言葉に、本当かなと思って朝鮮中央通信の該当部分を探しました。 それは次の通りです。

미국의 제재소동에 편승하여 새망을 떤 일본의 섬나라족속들에 대한 지탄의 목소리 또한 거세게 터져나오고있다.

천년숙적 왜놈들의 꼴을 볼수록 눈에 불이 인다, 우리 인민에게 천추에 씻지 못할 죄를 짓고도 사죄 한번 제대로 하지 않고 미국의 《제재》장단에 춤추며 가증스럽게 놀아대는 간악한 쪽발이들을 가만두어서는 안된다, 일본렬도상공을 날아넘는 우리의 대륙간탄도로케트를 보고도 아직 정신을 덜 차리고 못되게 나오는 일본놈들에게 단단히 본때를 보여주어야 한다, 보잘것없는 일본렬도의 4개 섬을 주체의 핵탄으로 바다속에 처넣어야 한다, 일본은 더이상 우리 가까이 둘 존재가 아니다, 이것이 우리 군대와 인민의 격앙된 목소리이다.

 「島国夷」は「섬나라족속들」なんですねえ。 直訳すれば「島の国の族属たち」です。 「族属」というのは普通は「一門」とか「宗族」とかの意味ですが、軽蔑的に「輩(やから)」「一味」の意味もあります。 今回は後者の意味です。

 これは朝鮮中央通信の日本語版にあるものですから、北朝鮮自身の訳です。 悪口・罵倒の言葉を日々練磨している北朝鮮です。 「夷」と訳すとは、さすがですねえ。 しかし「島国夷」は日本語としてはこなれておらず、違和感があります。

 なおこの文中に「새망」があります。 手元の辞書にない言葉で何だろうと調べてみたら、北朝鮮の言葉なんですねえ。 意味は「軽率」「軽はずみ」ですから、そのまま訳されています。

 日経の鈴置さんの記事をきっかけに、久しぶりに北朝鮮のニュースを読んだ次第。 たまには読まなくてはいけませんねえ。

北の核ー歴代韓国大統領の発言2017/09/12

 韓国の新聞『朝鮮日報』9月7日付けに、楊相勲主筆の「本当の国ではない」と題するコラムがあります。 このなかで北朝鮮の核開発について、歴代の韓国大統領がどのように発言したか、ちょっと簡潔に書かれていました。 日本語版には出てきませんので、その部分をここに訳してみました。   http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2017/09/06/2017090603596.html

1991年以前は韓国に核(米軍の戦術核)が存在し、北には核が存在しなかった。 それが今、韓国に核が存在しなくて北には存在しているとなって逆転した。 国際政治の歴史にはこのような逆転劇はない。 一体全体どうしてこんなことが起こり得たのかが気になって、1991年の朝鮮日報を探して読んでみた。 11月9日付けである。 1面トップは「駐韓米軍、核を年内に撤収」だ。 その横には更に大きく「慮泰愚大統領、朝鮮半島の非核化宣言」という記事が出ている。国内の核兵器を全面的に撤去し、これから核を保有・製造・使用をしないという宣言である。 「非核の門はまず南が開き、北朝鮮の核放棄を強く迫る」というものであった。

続いて12月19日付けの1面トップは慮大統領の「南韓(南朝鮮)の核不存在」宣言である。 米軍の戦術核が全て撤収されたという意味である。 1992年1月1日付け新聞のトップ記事は「南北 非核宣言 完全妥結」である。 南北ともに核兵器の試験、生産、受け取り、保有、貯蔵、配備、使用を禁止するというものである。 北は国際原子力機構の核査察を受けると約束した。 その日、慮大統領は新年の辞で「我々の自主的努力で、核の恐怖のない朝鮮半島を実現するという夢に向かって大きく前進した」と言った。 「北が核兵器の製造施設を持たないと明らかにしたことは、間違いなく喜ばしいことである」とも語った。

全てのことが北の完全な欺瞞、詐欺劇であった。南北非核化宣言に合意したその日も、北は寧辺でプルトニウムを抽出していた。 金日成は米軍の戦術核が撤収したことを確認した後、韓国の鄭元植首相と会見した席で「我々には核がない。駐韓米軍を撤収せよ」と迫った。 しかしこちらからの「核査察の約束を守れ」という要求には答えなかった。 韓国の阿呆ドラマと北の核兵器という悪夢の同時開幕であった。

北の核開発の過程は、歴代韓国大統領たちの北に対する無知と幻想が国家の安全保障を崩壊に導いたという失敗の歴史でもある。 慮泰愚の次の金泳三大統領は、北が核兵器を作っていても就任の辞で「どの同盟国も、民族よりもっと良いというものはない(民族が米国などの同盟国よりも大切だ)」と語った。 金大中大統領は北の金正日と首脳会談を終えて、「我々にも明るい未来が見えてきた。分断と敵対に終止符を打ち、新しい転機を開く時が来た」と語った。 「北は核を開発したこともなく、その能力もない。私が責任を取る」という彼の言葉が報道されている。 そして慮武鉉大統領は「北朝鮮の核には一理がある」と語った。

彼は2006年に「北に多くの譲歩をする」「北の核問題については解決に乗り出すことが出来る」「北朝鮮に核実験の兆候は全くない」と語った。 しかし、北朝鮮はその直後に最初の核実験を行なった。 そうすると慮大統領は「北に核兵器があっても、韓国が優越的な軍事均衡を保っている」という四次元的(時間を超越したような)主張をした。 その当時の外務長官は、北がミサイル試験用に打った長距離ロケットを「人工衛星用」だと言った。

 これを読んで、ああそうだった、昔韓国の大統領はこういうことを言っていたなあと思い出させてくれました。 こういう風に整理してくれると、理解しやすいものです。

 要するに歴代韓国大統領は、自分がまず譲歩すればその誠意が北に通じると勝手に思い込んできた、北はそれを利用して詐欺劇を演じて核開発を進めてきた、ということです。

 今の文在寅大統領は、北の核に対して一応は厳しい対応を見せていますが、これからどうなることやら分かりません。 何しろ文大統領は、「北の核には一理がある」と言い放った慮武鉉前大統領の側近だった人ですから。

北朝鮮の核開発の目的2017/09/07

 北朝鮮の核兵器について、その目的は北朝鮮自身が「朝鮮半島の核問題は朝米間の協議事項」と言っている通り、アメリカとの直接交渉にあります。 ところが、北の核は‘自らの体制を守るために核を開発している’という説が世に出回っています。

 北朝鮮自身が実際にそのような発言をしているのかどうかですが、それが見当たりません。 つまり北朝鮮が金正恩体制を守るという目的のために核開発をしているのかどうか、誰も確認していないのです。 ということは、これは周囲で勝手に憶測して言っているだけのものということになります。

 しかしこの憶説が独り歩きしているようで、北に対して‘体制保障の対価として核の凍結’とか‘独裁体制容認と核開発放棄のバーター’というような意見が多く見られます。 専門家らしき人がこういう主張をするのには困ったことだと思います。 またこれに煽られたのか、報道では日米韓の政府関係者からこの憶測が語られています。

 北の核開発の目的は、上述したようにアメリカとの直接交渉です。 体制維持ではありません。 そもそも既に核を持っているのですから、体制維持は当然のことであって、交渉の材料になり得ないものです。 それでは核開発の真意は一体何かです。 それは北朝鮮がこれまで国家方針として公表してきたところから読み解くことができます。

 北朝鮮の最大の国家目標は自らが主導する祖国統一です。 南朝鮮解放路線とか赤化統一とも言います。 この目的達成のために、①自主的、②民主的、③平和的の三段階を想定しています。

 「①自主的」というのは、統一事業は他国の干渉を排するというものです。 つまり朝鮮半島からアメリカを追い出すことです。

 「②民主的」というのは、南朝鮮(韓国)に親北民主政権(人民革命政権とも言います)を樹立することです。 

 「③平和的」というのは、①と②の段階を経て南朝鮮と平和的に統一するということです。

 今の北朝鮮が核開発で「アメリカとの交渉」を叫んでいるのは、「①自主的」の段階にあってアメリカに朝鮮半島を干渉させないために協議しようと言っているのです。

 この「①自主的」の段階を達成するための核なのです。 だからこれを見落としたまま‘体制保障の対価として核の凍結’などと主張しても、北にとっては既に核を持っている以上、体制維持は当然のことであり、アメリカの撤退を勝ち取れば次の「②民主的」段階へ、さらに「③平和的」祖国統一へと突き進むだけです。

 北の最終目標は大韓民国を否定し、朝鮮半島全体を朝鮮民主主義人民共和国にすることだということを忘れてはなりません。 この祖国統一を成し遂げる過程として、核開発を決意したのです。

【拙稿参照】

韓国に親北民主政権=人民革命政権が樹立される可能性 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/02/01/6315655

自主的、民主的、平和的統一       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/04/22/6421457

南朝鮮解放路線はまだ第一段階      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/03/30/6762019

北朝鮮を甘く見るな!(1)        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/07/23/7395972

北朝鮮を甘く見るな!(2)        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/07/28/7400055

北朝鮮を甘く見るな!(3)        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/08/02/7404064

関東大震災「朝鮮人虐殺事件」2017/09/01

関東大震災は1923年の今日ですから、95周年です。 韓国では「関東大地震朝鮮人大虐殺犠牲者遺族会」が結成されて、真相究明と賠償を求める活動を始めるようです。    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170830-00000062-yonh-kr

 この記事の中にある 「政府機関「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者ら支援委員会」が虐殺の調査に協力したが、この会も15年末に解散した」に関しては、かつて韓国の聯合ニュースが報道しています。 虐殺された朝鮮人の数は、意外と少ない数字です。

2014年7月7日付け 「関東大震災時の朝鮮人虐殺名簿 韓国政府機関が検証開始」 http://japanese.yonhapnews.co.kr/society/2014/07/07/0800000000AJP20140707002900882.HTML

2015年1月18日付け 「関東大震災時の朝鮮人虐殺名簿 第1次検証結果発表=韓国」 http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2015/01/18/0200000000AJP20150118000200882.HTML

2015年12月6日付け 「関東大震災時の朝鮮人虐殺犠牲者 40人確認=韓国政府」 http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2015/12/16/0400000000AJP20151216001000882.HTML

 この事件に関しては、拙論では下記の通り論じてきました。 参考いただければ幸甚。

【拙稿参照】

水野・文『在日朝鮮人』(19)―関東大震災・吉野作造 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/04/8169265

水野・文『在日朝鮮人』(13)―関東大震災への疑問 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/07/19/8134282

関東大震災時の「在日朝鮮人虐殺者」の数 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/06/09/398058

関東大震災の朝鮮人虐殺  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/08/26/8163009

関東大震災の日本人虐殺  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/15/8189607

 拙論の要旨は、大震災に関するこれまでの解説が ①朝鮮人の虐殺ばかりが取り上げられて災害死が無視されていること、②6000人以上が虐殺されたとされているのに在日朝鮮人の人口統計では人口が増加している理由の説明がないこと、の疑問です。

 在日朝鮮人の人口増加については、大震災発生時の1923年に80,415人、翌年の1924年に118,152人と47%という激増ぶりを見せています。 これで「6000人以上の大虐殺」と言われても、信じられるものではありません。