古代から続く伝統的葬法「草墳」(2)2026/02/21

https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2026/02/15/9836684 の続きです。

 20年ほど前にヒットした韓国ドラマ『春のワルツ』をご存知でしょうか。 その第二話の最初の方に、主人公の男の子が父親と一緒にお祖父さんの墓参りをする場面があります。 そのお墓が「草墳」でした。 舞台は全羅南道の青山島です。 熱心な韓流ファンが『春のワルツ』のロケ地を訪ねたそうですから、ご存知の方はおられるでしょうね。

 この青山島で最近まで残っていた「草墳」の築造過程を記録したユーチューブ映像があります。 https://www.youtube.com/watch?v=SwluibolgFQ この映像のハングルを訳しましたので、「草墳」とはどういうものか、ご理解できるものと思います。 

青山島の草墳 試演(0:00)

草墳はお墓の一種で、青山島を含めた島地域で行なわれてきた葬礼の風習である。 遺体を土に埋めないで、藁などで編んだ藁束で覆って、2~3年後に墓を立てる。 このような葬法は一般的な儒教儀式である葬礼がたった一度の単葬制であるのに対し、二度の埋葬をする複葬制である。(0:04)

・正月や2月に土を触って墓を立てれば、村に憂患(悪い事)が起きる。 ・村に伝染病が流行ったとき、草墳をする。 ・肉がまだ無くなっていない遺体を先祖の墓地に埋めれば、腐った臭いが祖先に漂い、憂患がやって来る。 ・墓は先祖に対する孝を象徴するもので、父母が亡くなって直ぐに埋葬すること不孝だと考えられていた。 ・草墳は真心を込めてつくるので、親の生前にしてくれたことを親孝行としてお返しする道でもあった。(0:11)

 なぜ草墳をつくるのかについて、「肉がまだ無くなっていない遺体を先祖の墓地に埋めれば、腐った臭いが祖先に漂い、憂患がやって来る」 「墓は先祖に対する孝を象徴するもので、父母が亡くなって直ぐに埋葬すること不孝だと考えられていた」ということです。 前者は複葬制=洗骨の説明であり、後者は儒教の影響を受けた説明ですね。

草墳をつくるために、幅50㎝、長さ200㎝ほどの石の土台をつくる。 周辺の土地をよく均してから、石を水平になるように地面に並べる。(0:21)

石の台の上に松の枝をぎっしり敷いて、その上に縄を横に五本、X字に二本を置く。(0:28)

棺を固定するための蓆(むしろ)を敷く。(0:41)

敷いた蓆の上に棺を置く。 この時、棺は足が海の方に、頭が山の方に向かうようにするのが原則だ。(0:45)

蓆を棺の角が斜線になるように切ってやり、左右から畳んで上下に畳む。 下に置いておいた縄を結んで固定させる。(0:53)

雨や風から棺を保護するために、藁束を奇数にして、藁の根の部分が地面に付くように右側に回して編む。(1:09)

藁束の上にヨンマルム(藁束を組んで作った覆い)を置いて、編んでおいた藁束の重心を取って、草墳を固定させるようにする。(1:17)

縄の端を石で結んで、風で飛ばないようにして、ヨンマルムの両側に縄を回して縛り付けて、格子模様に固定させる。(1:25)

家族が別れの挨拶をする。(1:43)

松の枝を地面に向けて編んだ縄の間に挿す。 これは病虫害の予防の役割をし、また家族が墓を参ったことを表示するものである。(1:51)

 このように、「草墳」は棺を藁で覆って小屋掛け状にして遺体を保管するものです。 そして遺体の肉を2~3年かけて削ぎ落として(肉は自然と腐乱してなくなる)骨だけにし、その後にその遺骨をきれいにまとめて棺に入れて埋葬します。

 日本では古代の『古事記』『日本書紀』や中国歴史書の倭国伝などに、人が死ねば「殯(もがり)」をしてから墓に埋葬することが記録されています。 詳しくは「殯(もがり)」を検索してお調べください。 「殯」は死の直後から埋葬までの間に遺体を保管しておくことですから、肉は腐敗して消滅し骨だけが残ることになります。 ですから「殯」が草墳に相当する可能性があります。 また沖縄では「洗骨」した骨を墓に収める慣習があり、この洗骨が草墳に相当するとも考えられます。 とすると「草墳」は遺体から肉を削ぎ落として白骨化させてから埋葬する「複葬」の一種で、「殯」や「洗骨」と同様のものと言えるでしょう。

 以上から考察するに、「草墳」は東アジアに非常に古くから存在した葬法である「複葬」に由来するのではないか、そして日本古代では「殯」だったのではないかという推測が成り立ちます。 それがその後の儒教や仏教の普及によりそれぞれの民族によって葬法が変化していくのですが、韓国や日本の一部の地方に「草墳」「洗骨葬」として残存したことになるでしょう。 ただし、これはあくまで仮説であり、そう考えることもできるということにご留意ください。        (続く)

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