朝鮮名での設定創氏が可能な場合2007/02/12

 創氏改名のうちの「創氏」には、日本風の名前を届け出る「設定創氏」と先祖伝来の朝鮮名をそのまま創氏する「法定創氏」との二種類があることは、周知のことと思います。  それでは先祖伝来の朝鮮名でもって設定創氏が可能であったのかどうかです。このことについて、金英達さんは『創氏改名の研究』(未来社)の27頁において、次のように論じています。

>実務上では「林、柳、南、桂等の姓を有する者が、林(はやし)、柳(やなぎ)、南(みなみ)、桂(かつら)等内地式の読み方を以て氏と為さんとする場合其の届出の要なきところ」という一九四〇年四月二二日付の法務局長通牒でうかがわれるように、戸主の姓をそのまま氏とする創氏届は必要ないとされており、戸籍窓口の実際においては、そうした創氏届は受理しなかったことが推測される。  ということは、事実上、設定創氏は日本風の氏の設定に限定されていたのである。>

 ところがここで引用されている「一九四〇年四月二二日付の法務局長通牒」なるものが不正確でした。実際のところは次のようになります。

京城地方法院開城支庁判事から朝鮮総督府法務局長への照会 昭和15年3月18日付け

>六.林、柳、南、桂等ノ姓ヲ有スル者ガ林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地人式ノ読ミ方ヲ以テ氏ト為サントスル場合其ノ届出ノ要ナキトコロ強テ届出ヲ為ス場合ハ受理スルノ外ナキヤ>

これに対して法務局長は同年4月22日付けでこれに対して

>貴見之通>

と回答しています。 以上のやり取りを関係部署に周知させたのが「一九四〇年四月二二日付の法務局長通牒」です。(出典は朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規』)

 つまり林、柳、南、桂といった朝鮮名は、そのまま設定創氏として届けられても受理することとされたのです。

 ところが金英達さんの著作では、引用した資料の後にあった「強テ届出ヲ為ス場合ハ受理スルノ外ナキヤ」という質問と、それに対する「貴見之通」と回答の部分が抜け落ちています。このために「設定創氏は日本風の氏の設定に限定されていたのである」という結論となってしまいました。  ここは彼の明白な間違いです。彼は緻密な考証家なのですが、こういうところに陥穽がありました。彼のような方でも鵜呑みにしてはならない、という教訓を得ました。   この資料を紹介してくださったdreamtale様に感謝申し上げます。

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