宮田節子の創氏改名論2014/11/10

創氏改名に関する拙論に対して次のようなコメントがありました。

宮田節子は左翼系の研究者ではあるが『創氏改名』(明石書店)という金英達らが書いたまっとうな本の共著者でもありそういう初歩的な間違いをするのは解せないですねえ

http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/10/21/7467784

 宮田節子の主張について、もう少し検討したいと思います。

 創氏改名は日本風の名前を強制することではなく、それまで朝鮮の伝統になかった家族名を新たに付けることを強制するものです。 だから金、朴、李のような先祖伝来の民族姓で創氏することが可能であったし、そのような人の割合が2割でした。     宮田節子はこのような創氏改名の目的を知っていながらも、『創氏改名』(明石書店 1992年1月) の第一章の最後の結論部分で、次のように論じています。

「殊ニ徴兵制度実施セラレタル今日皇軍トシテ些ノ差別ナク渾然一体トナリテ軍務ニ精励シツツアリ、若シ現在軍隊中ニ金某、李某等混ジリタリトセバニ思ヒヲ致サバ、其利弊又自ラ明カナルモノアリ」 (マル秘「朝鮮及台湾住民政治処遇ニ関スル質疑応答」 内務省管理局、45年3月6日)      天皇の軍隊の中に、「金某、李某」が混入するのがたえがたいという思いが、にじみ出ているのではないだろうか。 (40頁)

 このように宮田は、創氏改名は日本が金とか李とかの民族名を「耐え難い」と思っていたから実施したものと主張しています。

 しかしその主張の根拠となった資料をよく読むとその内容は、日本の軍隊では朝鮮人も日本人も区別なく、だから金某、李某を名乗る朝鮮人の兵士たちも日本人と「一体となって軍務に精励」している、このことを考えると何の問題もない、というものです。

 実際に当時の日本軍内には民族名を名乗る朝鮮人軍人が少なくありませんでした。 有名なところでは洪思翔、白善燁、李垠、金錫源などがいます。 宮田は当然これを知っていながら「天皇の軍隊の中に、「金某、李某」が混入するのがたえがたいという思いが、にじみ出ている」と論じたのですから、資料の誤読とともに矛盾を指摘したいと思います。

 その誤読と矛盾を糊塗するためでしょうか、『新版 韓国・朝鮮を知る事典』の「創氏改名」項の説明では、引用資料中の「皇軍トシテ些ノ差別ナク渾然一体トナリテ軍務ニ精励シツツアリ」という重要部分を省略しています。(291頁)

 宮田の創氏改名論について、拙論では「かつて『創氏改名は日本風の名前を強制することによって民族の抹殺を図った政策』という説が広まっていましたが、この考えを未だに引きずっておられるようです」と評しましたが、この評価を変える必要はないでしょう。

(註) 金錫源は日本名を「金山錫源」としていたが、これが創氏改名による名前なのか、通名なのかが判然としない。 当時の朝鮮人は、民族名で創氏しても通名として日本名を名乗る場合もあったし、逆に日本名で創氏しても通名として民族名を名乗る場合もあったし、そんな通名を持たない場合もあった。 金錫源は日中戦争で勇名を轟かせており、金山錫源よりも金錫源の方で名が通っている。

コメント

_ 大森 ― 2014/11/11 11:48

簡単なコメントに詳細な解説有難うございます。

ただ宮田節子が引用した資料に関しては宮田の誤読ではないのではないかと・・・。
『創氏改名』(明石書店)にはその前文も引用されてますが、
「創氏改名の推進は末端では行き過ぎもあったが内鮮一体のためにはやってよかった、殊に軍隊の一体化には役に立った」
と読み取れる内容になってます。

時系列的にみると

志願兵制度(1938年)→創氏改名(1940年)→徴兵制度(1944年)

となるので初期の志願兵は朝鮮名で入隊したと思われますがこれは少数。創氏改名以降は大半が日本名、特に数的に多い徴兵兵は皆そうだったと思います。
日本軍は朝鮮兵が多数派にならないように分配して配属しており、やはり朝鮮兵に警戒心もあったと思われます。特に徴兵兵には反日分子も混じる可能性もありますから。
その意味では創氏改名の意義を軍に絡めて主張するのは推進した側としては妥当な主張であったと思います。

あと、有名な朝鮮名軍人として挙げている洪思翔、白善燁、李垠、金錫源のうち洪思翔と金錫源は併合以前から日本軍に留学していた人達、李垠は王族、白善燁は満州国軍軍人といずれもやや特殊な人達ですね。
実際に日本軍の中にどの程度朝鮮名の軍人がいたのか、満州国軍の朝鮮兵の名乗りはどうだったのか(そもそも満州国の朝鮮人は創氏改名の対象だったのか)、興味が湧きました。

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