韓国と日本の特殊詐欺(ボイスフィッシング)2025/08/09

 今の日本では特殊詐欺が猖獗を極めていますが、予防や取り締まりが難しいようで、なかなか減る気配がありません。 「特殊詐欺」は韓国では「ボイスフィッシング(보이스피싱)」といいまして、やはりここでも猛威を振るっています。 韓国の有力紙『朝鮮日報』2025年7月31日付けに、韓国と日本のボイスフィッシング(特殊詐欺)について解説する記事があり、興味深かったので翻訳してみました。   https://www.chosun.com/national/national_general/2025/07/31/G5YLFJU6VVFCVJFX6BDJRHHSJ4/

ボイスフィッシング被害額、「デジタル韓国」が「アナログ日本」の三倍

[ボイスフィッシングの「恐ろしい進化」] 日本を制して犯罪の標的となる。

韓国の一人当たりボイスフィッシング被害金額が日本の三倍を超えると昨30日に明らかになった。 ボイスフィッシング犯罪がAI(人工知能)などの先端技術と結合・進化し、デジタル文化が発達した韓国が多国籍犯罪組織の主要「ターゲット」と浮かび上がっている。

警察庁と日本の警視庁などによると、昨年韓日両国のボイスフィッシング発生件数は、韓国が2万800件、日本は2万1000件余りであった。 ところで韓国のボイスフィッシングの総被害額8545億ウォン、日本は719億円(約6730億ウォン)で、韓国が1815億ウォンも多かった。 人口と経済規模(GDP)がすべて二倍以上である日本より、韓国のボイスフィッシング被害規模がもっと大きいのである。 わが国の国民一人当たりのボイスフィッシング被害金額は1万6500ウォンで、日本(5400ウォン)の三倍を超えるものと推算される。

日本は台湾とともにボイスフィッシングの元祖ともいえる国家の一つである。 高度経済成長期が終わり、バブル崩壊が始まった1990年代初め、不法な高利貸金業から派生したボイスフィッシング犯罪は2000年代に韓国にも伝わった。 それから20年余りが過ぎた今、二つの国家の状況が逆転した。

韓日におけるボイスフィッシングの総被害額は、毎年最高値を更新している。 ところで韓国の被害増加の勢いが激しいことは、ボイスフィッシング組織が韓国人を「くみしやすい対象」と見ているためだと分析されている。 日本よりソーシャルメディアの使用率が高い上に携帯電話番号などの個人情報がたやすく流出し公有化される韓国の状況が、ボイスフィッシングに脆弱であるというのだ。

あいつの声、「アナログの日本」ではなく「デジタルの韓国」を狙う

昨年末にソウルの名門大学を卒業した李某さん(24)は、「キン・ミンソク ソウル中央地検 検事」から電話を受けた。 受話器越しの人物は李さんの名前、大学学部学科まで知っていた。 「○○さんの名前で開設された架空名義通帳が金融詐欺に使われていました。 すぐに取り調べに応じなければ、逮捕されることになります。」 1分に一回ぐらい急き立てる電話が来た。 「資金洗浄があったかどうかを確認せねばならないので、仮想通貨に換金して入金せよ」というトンデモない要求だったが、就職に不利益になるか心配になった。 結局彼は10年蓄えてきた貯金3000万ウォンを失った。

同じ頃、海の向こうの日本の福岡で一人暮らしをしているAさん(76)は、大阪にいる20代の孫から電話がかかってきた。 孫は差し迫った声で「友達にお金を貸したのが、返してくれなくて生活費がない」と言って、お金を貸してくれと言った。 ずっと貯めてきた年金100万円(約930万ウォン)を引き出して、ATM(現金自動引き出し機)を通して孫が言っていた口座に送金した。 しかし孫ではなくボイスフィッシング犯だった。

 今では日本よりも韓国の方が特殊詐欺の被害が大きいのですねえ。 その要因が〝韓国ではデジタル化が進んでいて、日本はまだアナログに留まっているから”というのは、なるほどと思いました。 ちょっと以前ですが、来日した韓国人が現金社会の日本を体験して、「デジタルの時代なのに、日本は遅れている」とか「あの店は脱税しているんじゃないか」とか言うのをよく聞いたものでした。 それが今では、特殊詐欺のあり方の差になっているのですねえ。 しかし日本でもキャッシュレスが多くなってきているので、これから韓国のような特殊詐欺が増えるのかも知れません。

 

韓日両国のボイスフィッシング犯罪は、被害者の年齢はもちろん被害額や手口などすべての点で顕著な違いを見せている。 韓国では、検察や警察、金融監督院のような機関を詐称した犯罪が60%を超える。 一方日本は70代以上の高齢層を狙った「家族・親戚」を詐称した「おれおれ」型が中心をなしている。 

韓国ではハッキングなどを通してあらかじめ確保した個人情報を使って20代を狙った詐欺が速い速度で増えている。 今年の上半期(1~6月)、20代のボイスフィッシング被害者の割合は23.9%で、60代(25.6%)に続いて二番目に多かった。 4年前よりも20代被害者が6.3%ポイント増えた。 携帯電話を遠隔操作する悪性アプリ、海外送金が容易な仮想通貨での送金を強要するなどの手口も20代30代に合わせて進化している。

一方日本では70代以上の高齢層を対象にした詐欺が猛威をふるっている。 お年寄りに電話をかけて、「おれおれ」と言って息子か知人であるかのように装ってお金を送ってくれというオレオレの手口が大部分だ。 昨年基準で、日本のボイスフィッシング犯罪のなかで、被害者のうちで45%が75歳以上の老人で、被害額の63.8%がオレオレ型であった。 2018年の韓日間のボイスフィッシング被害額の違いは454億ウォンだったが、6年経った昨年は1815億ウォンと四倍くらいに広がった。

韓国のボイスフィッシング被害が急増するのは、韓国がにほんよりソーシャルメディアを多く利用するなど、デジタル文化により馴染んでいるからという分析だ。 警察関係者は「犯罪組織はソーシャルメディアなどに流出した個人情報をうまく活用する」と言い、「韓国の20~30代はオンラインに自分の情報を露出することに日本よりも慣れている」と言った。 グローバルデーター分析企業であるデーターリポータルによれば、今年初めを基準にして、わが国のソーシャルメディア使用率は、人口の94.7%で、日本(78.6%)をリードしている。

携帯電話番号などの個人情報を取り扱う両国間の文化の違いも影響を及ぼしている。 保坂祐二世宗大学教授は「韓国では駐車車両にも個人電話番号を書いておくが、日本では個人の携帯電話番号は名刺にも書かず、親しい人でなければEメール住所も公開しない」と言った。 近い仲でなければ個人の電話番号を知ることが難しい文化のために、日本では家族・親戚を詐称する犯罪のパターンが多いのだ。

日本よりも活発な仮想通貨取引も、国際組織の「犯罪インフラ」に悪用されている。 最近大邱では未登録不法仮想通貨取引所でボイスフィッシング資金6億ウォンを洗浄した一党が検挙された。 今年初めを基準にして、韓国の取引所に上場したコインの種類は、日本に比べて七倍以上多く、一つ一つの取引量は十二倍以上だ。 国内総生産(GDP)と対比して流通現金(紙幣と硬貨)の割合も日本は20%で、韓国(8%)の二倍以上だ。 日本は現金に馴染んでいる高齢層が多いので、ボイスフィッシングの送金さえもATM機器を利用した現金振り込みが多い。

雇用市場が比較的安定している日本と違って、韓国の激しい就職難も影響を与えている。 日本の厚生労働省が昨5月に発表した、今年の日本の大卒者就職率は98.1%で、1997年の調査以降、最高値だった。 しかし韓国の昨4月の青年層(15~29歳)の雇用率45.3%で、12ヶ月連続で下降している。 パク・サンジュン早稲田大学国際学術院教授は「日本の大卒者は望みさえすれば正規職入社が可能であるところから、投資詐欺や海外就職のようなボイスフィッシング詐欺に惑わされる可能性がさらに低い」と言い、「一方、韓国の青年たちが就職難でボイスフィッシング被害を受けたり、犯罪に加担したりする場合が増えている」と語った。

 日本と韓国の特殊詐欺(ボイスフィッシング)は、日本では「家族・親戚を詐称する型」で被害者が高齢の場合が多いが、韓国では「政府機関を詐称する型」で被害者には若者が多いと分析しています。 なお日本では今年になって警察を詐称するものが急増しており、若者の被害者も目立つようです。 ですから特殊詐欺は日本も韓国のような「政府機関詐称型」が多くなってきていると言えるかも知れません。

 また韓国では日本よりも仮想通貨の利用が多いことや韓国の若者の就職率の悪いことが、特殊詐欺のあり方の差に繋がっているという分析にも、関心が行きます。 日本でも仮想通貨の話が周辺でも聞くようになっており、また「受け子」など特殊詐欺末端役の犯人が無職とかアルバイトとかの若者だったというニュースが多いですね。 この点でも、日本は〝韓国の後追い”をしているのかなあと思います。 言ってみれば、〝日本の韓国化”ですね。

 これ以外に、日本ではいわゆる「ロマンス詐欺」が急増しているそうですが、韓国ではニュースに出てきませんねえ。 日本も韓国も独り身の高齢者が増えていますが、韓国の高齢者は生活に余裕がない方が多く「ロマンス」なんて程遠いのかも知れません。

  【韓国の特殊詐欺に関する拙稿】

韓国の特殊詐欺        https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/08/31/9290686

韓国の特殊詐欺ニュース     https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/10/01/9300924