朴一さん『在日という病』を読む(2)2025/08/21

https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/08/15/9796104 の続きです。

在日犯罪者の報道は本名ですべきか通名ですべきか

 朴さんはあるテレビ番組で、〝事件報道では在日の犯罪者は通名で呼ぶべきであって本名を使ってはならない”と主張しました。 具体的には「聖神中央教会事件」のことで、この教会の主管牧師が在日であり、信者の少女らを次々と強姦したという事件でした。 詳しくは検索してみてください。 この凶悪犯の在日牧師について、『朝日』など一部の新聞は通名の「永田保」だけを報道し、本名の「金保」を隠しました。 このことについて、朴さんは〝通名での報道をすべき”と主張したのでした。

在日韓国人の多くは日本名(通名)を名乗っていますが、犯罪に手をそめると、日本のマスコミはその人物の韓国名(本名)と国籍を暴くことが多いのですが、『朝日新聞』は「犯罪と出自、国籍に因果関係が見られない場合、在日韓国人の民族名(本名)を暴くことはプライバシーを侵害する可能性がある」という報道指針から、この事件のときも、容疑者の名前を日本名で報じていました。 私のコメントは、こうした『朝日新聞』の報道指針にそったものでした。 (170頁)

 犯人の金保(永田保)は在日であり、韓国のキリスト教神学校で学んだ後、日本に戻ってきて聖神中央教会の主管牧師となり、その牧師の地位を利用して凶悪犯罪を繰り返しました。 この牧師はそれより以前にも性犯罪傾向が指摘されていて、その時は韓国に一時逃亡して事なきを得ていたようです。 ですからこの犯人である牧師は、「犯罪と出自、国籍に因果関係」が確かにあります。 しかし『朝日』は本名も国籍も報道せず、朴さんもそれに賛成したのです。

 ところで『朝日』の犯罪報道では、一般的に犯人の名前や年齢、住所、所属などの個人情報を出しています。 犯罪報道には犯人のこのような個人情報が必要というのなら、本名や国籍も必要でしょう。 『朝日』はなぜ本名と国籍に限って出さないという報道指針を打ち出したのか、疑問です。

 朴さんは、それから20年経った今度の著書でもこの事件について記しているのですから、在日が犯罪者の場合、その本名も国籍も隠すべきだとする考え方を今も維持していることになります。 その理由について、彼はテレビ番組で「ああいう犯罪をした時に在日コリアンの出自を暴くというマスコミのね。 やり方っていうものはいかがなものかと私は思うんですよ」と発言しています。 〝在日はいいことをすれば本名で、悪いことをすれば通名で”という考え方なのだろうと思われます。

 金保は懲役20年の実刑判決が下り、罪質があまりに悪いので仮釈放はないでしょう。 逮捕されたのが2005年4月で61歳とされていますから、今は80歳を越えて出所して社会に出ているものと思われます。 なお金が特別永住者なら、強制送還はありません。

 

指紋押捺拒否

 朴さんは1980年代に指紋押捺拒否運動に参加します。

大学院時代、研究以外に私が多くの時間をさいたのが指紋押捺拒否運動でした。‥‥日本人には犯罪者だけに強制される指紋押捺をすべての在日外国人に義務づけることは、民族差別であり人権侵害にあたるという韓さんの主張に、私も共鳴したのです。 (73頁)

 実際に朴さんは、1986年の外国人登録切り替え日に指紋押捺を拒否しました。 そんな朴さんですが、私が気になるのは〝彼の本国である韓国での指紋押捺制度をどう考えておられるのか”です。 

 韓国では国民すべてが住民登録をせねばならず、その際に指紋が強制されます。 このことを朴さんが知らない訳がありません。 彼が指紋拒否運動をした当時、韓国では犯罪者どころか国民みんなが指紋押捺させられているという事実が報道されていました。 また彼の大学には韓国から留学生が多く来ており、彼らは指紋が捺された韓国住民登録証を所持しています。 朴さんは教授ですから、これを見る機会は多くあったはずです。 あるいはまた、1999年に無期懲役囚の金嬉老が仮釈放されて韓国に引き取られて晴れて韓国の国民になった時、韓国の住民登録をする際にマスコミの前で指紋押捺した姿が広く報道されました。 もし朴さんの主張のように〝指紋押捺は人権侵害である”というのなら、韓国では全ての国民の人権が侵害されていることになります。

 朴さんは韓国で指紋を強制されて人権侵害を受けている本国韓国人と、日本で指紋を強制されずに人権侵害を受けない権利を有している在日韓国人について、どう記述しているのかに私は注目しました。 しかし結果は全く記述がありませんでした。 ということは、朴さんは自分たち在日の人権侵害には敏感で押捺拒否までしたのに、本国である韓国では全国民が受けている人権侵害には関心がなく指紋押捺を容認にしていることになります。 専門家である朴さんがこのような一貫性のない主張をするのはいかがなものか、と疑問を持ちます。   (続く)

指紋押捺拒否運動への疑問  http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daiyonjuunanadai