金銅弥勒菩薩半跏思惟像(3) ― 2015/10/29
2015年10月26日付けの『朝鮮日報』に、「純宗が守った半跏思惟像」と題するコラムが載っていました。 執筆は朝鮮日報文化部の許ユンヒ記者です。 韓国の半跏思惟像については拙論ではこれまで二回論じてきましたので、私には興味深いものです。
金銅弥勒菩薩半跏思惟像 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/10/09/553649
金銅弥勒菩薩半跏思惟像(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/12/11/7514362
今回の記事は日本語版にはありませんので、翻訳してみました。 取り急ぎの直訳ですので、日本語としておかしな部分があります。
純宗が守った半跏思惟像 韓半島最初の近代博物館は、暗鬱な時期に誕生した。1909年11月、大韓帝国の最後の皇帝、純宗が大衆に開放する帝室博物館である。 純宗は近代化の名分を掲げる日帝の圧力に勝てずに、博物館を開いたのであるが、一旦開いてからは意志をもって内的充実を固めた。 1908年から全国で遺物を収集し始め、初期の10年間に何と1万122点を集めた。
この時収集した最も重要な名品が国宝83号の金銅半跏思惟像である。 純宗は1912年、日本人古美術商から2600ウォン(今のお金で約30億ウォン)という大金を出して買った。 国宝級の高麗青磁一点が100ウォンした時代であった。 帝室博物館は庚戌国恥(日韓併合のこと)以降、李王家博物館として格下げされたが、当時古美術商が40ウォンで買ったものが65倍にも高い価格を払い、ようやく遺物を獲得した。 そのような非常な覚悟がなかったなら、半跏思惟像は他の遺物のように海外に搬出される身の上を免れなかったのである。
またもう一つの半跏思惟像が、この頃に登場した。 国宝78号の半跏思惟像は日本の収集家を経て1912年に初代朝鮮総督の寺内に上納された。 寺内は帰国前の1916年、これを総督府博物館に寄贈した。所蔵品をたくさん持って行きながら、半跏像は諦めたのである。 「李王家博物館が2600ウォンも出して半跏像を購入したので、朝鮮では半跏思惟像シンドロームが起きた。同一の価値を持った遺物を本国に持って行くのには負担が少なくなかったのである。(ファン・ユン「博物館を見る法」)
今、国立中央博物館で開かれている「古代仏教彫刻大展」に二つの半跏像が並んで置かれている。 一点ずつ交代で展示されていたが、11年ぶりに同じ所で出会うこととなった。 この超大型特別展では、草創期の中国の仏像と似た韓半島の仏像が、段々と独自的な図像を確立しながら、半跏思惟像でその芸術性と技巧が爆発する過程が一目で入って来る。 世界各地から借りてきた最高級のインド・中国の仏像たちを観覧した後、最後の一部屋に二つの半跏思惟像に出会った時は、涙が出るくらいに胸がいっぱいになった。
国立中央博物館が解放後、何度も流浪した末に竜山に居を定めてから10年になった。 「我々のものが無条件に最高」という視野から離れて、このように水準の高いアジアの展示を執り行うくらいに成長したということに拍手を送る。 しかし先進国の博物館と肩を並べようとすれば、これからの道は遠い。 昨年基準で、一年に39億ウォン水準である遺物購入費から大幅に増やさねばならない。 アメリカのメトロポリタンの一年の遺物購入費が350億ウォン程度だ。 39億ウォンは海外に流れた最高級の高麗仏画やA級陶磁器一点を購入するにも足りない額である。
博物館はすなわちその国の文化水準だ。 アメリカ・日本などの博物館などは各種基金をはじめ、個人の寄贈・寄付も活発だ。 今度の展示で借りてきたアメリカの博物館の相当数に「ジョン スチュアート ケネディ 基金」「ロジャース 基金」などの説明が付いているのが本当にうらやましかった。 あの困難な時代に2600ウォンをかけて二つの半跏思惟像を守った純宗の切迫を今の我々は半分でも持っているか?
私にはこの半跏思惟像の由来に関心があります。この記事では、日本人古美術商が40ウォンで買い取り純宗に2600ウォンで売った、と記されている点に注意が引かれました。 一体この古美術商がどこで買い取ったのか、売った人はこの仏像をどのような経緯で入手し、それまでどのような取り扱いをしてきたのか、なぜ日本人古美術商に売ろうと思ったのか等々、知りたいことはたくさんあるのですが、なかなか難しそうです。
コメント
_ (未記入) ― 2015/11/01 13:19
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