金時鐘氏への疑問(18)―街で墨をかける2025/07/22

https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/07/17/9789454 の続きです。

㉖ 朝鮮の青年たちが朝鮮服の大人に墨を振りかける

 金時鐘さんによれば、1939、40年頃の済州島では、朝鮮の青年たちが朝鮮服を着ている大人に噴霧器で墨を吹きかけていたそうです。 ところが金さんの父親はそんな社会の雰囲気の中で、悠然と朝鮮服を着て町を出歩いたといいます。

昭和14、5年と言えば朝鮮服のいでたちで町に出るのはなんとも肩身の狭い時代です。 ところが父は臆するどころか、相も変わらぬ周衣(トルマギ―朝鮮服の外套)姿で町を出歩き‥‥ 町なかでは青年団の若者たちが、もちろん朝鮮の青年たちでありますけど、朝鮮服で出歩く同胞の衣服にさかんに噴霧器で墨を吹きかけて回っていましたが、父は悪びれるどころか悠然と、そのただ中を行き来していました。 ‥‥父は一度も服も顔も汚さずに済みました。 (『朝鮮と日本を生きる』 17・18頁)

 ここで疑問は、朝鮮人は昔から長幼の序が厳しい民族なのに〝若者が街を歩いている朝鮮服の大人に墨を吹きかけ回っていた”なんてことが本当にあったのか? また同じく朝鮮服を着ていた金さんの父親はそんな若者の乱暴狼藉を見ても「悠然とそのただ中を行き来していた」というのは本当なのか? それにこれは当時としても犯罪ですから、警察は取り締まらなかったのだろうか?という疑問も出てきます。 さらに金さんは次のような記述もしています。

毎月の8日には割り当てられた地区住民の、総出の神社参拝がありました。 小高い丘の頂上にしつらえてある護国神社の急な長い石段をぞろぞろ、普段着のままの朝鮮服のお年寄りたちがダラダラ登ってゆくのです。 (同上 45頁)

 当時の朝鮮人たちは神社参拝を強制されて、「朝鮮服のお年寄り」が動員されました。 この時、朝鮮の青年たちはこんなお年寄りに墨を吹きかけなかったのだろうか? 疑問がどんどん広がります。

 つまり朝鮮の若者が朝鮮服を着た人に墨を吹きかけたというのは、金時鐘さんが自分の目で実際に見た光景ではなく、想像をたくましくして記述されたのではないか、という疑問ですね。            (終わり)

 金時鐘さんの著作を読み、彼の追想というか体験談にはあまりに疑問点が多いことを発見しました。 拙ブログでその主なものを書いてきました。 18回にもなります。 まだまだたくさんあるのですが、もうこれで終わりたいと思います。

金時鐘氏への疑問(1)―在留資格       https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/03/26/9763626

金時鐘氏への疑問(2)―韓国戸籍・墓参り   https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/03/31/9764818 

金時鐘氏への疑問(3)―教員免許・公務員就職 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/04/05/9766006

金時鐘氏への疑問(4)―日本語・創氏改名   https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/04/11/9767588

金時鐘氏への疑問(5)―政党加入・4・3事件  https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/04/18/9769221

金時鐘氏への疑問(6)―4・3事件(その2)   https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/04/23/9770375

金時鐘氏への疑問(7)―4・3事件(その3)   https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/04/28/9771478

金時鐘氏への疑問(8)―西北青年団       https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/05/02/9772477

金時鐘氏への疑問(9)―韓国否定と北朝鮮容認 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/05/09/9774295

金時鐘氏への疑問(10)―北朝鮮批判と擁護代弁 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/05/14/9775437

金時鐘氏への疑問(11)―スキー客・新井鐘司   https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/05/19/9776467

金時鐘氏への疑問(12)―崔賢先生       https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/05/24/9777663

金時鐘氏への疑問(13)―石鹸工場・民戦    https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/06/13/9782053 

金時鐘氏への疑問(14)―吹田事件       https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/06/18/9783181

金時鐘氏への疑問(15)―ハングル       https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/06/23/9784276

金時鐘氏への疑問(16)―猪飼野詩集      https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/07/12/9788376

金時鐘氏への疑問(17)―豊田先生       https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/07/17/9789454

 

【金時鐘氏に関する拙稿】

金時鐘さんの創氏改名は「金谷光原」―神戸新聞 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/06/03/9779836

金時鐘氏はどういう言葉を使ってきたのか?(1)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/07/30/9705285

金時鐘氏はどういう言葉を使ってきたのか?(2) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/08/04/9706635

金時鐘氏はどういう言葉を使ってきたのか?(3)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/08/09/9707790

玄善允ブログ(1)―金時鐘さんの日本名     https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/03/31/9671877

核問題は北朝鮮に理がある―金時鐘氏      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/01/23/9653071

金時鐘氏が正規教員?―教員免許はないはずだが‥ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/01/16/9651219

金時鐘氏は不法滞在者なのでは‥(1)     https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/10/07/9623500

金時鐘氏は不法滞在者なのでは‥(2)     http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/10/12/9624809

金時鐘氏は不法滞在者(3)―なぜ自首しなかったのか http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/10/17/9626078 

金時鐘『朝鮮と日本に生きる』への疑問       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/07/28/7718112

金時鐘さんの法的身分(続)          http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/13/7732281

金時鐘さんの法的身分(続々)         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/26/7750143

金時鐘さんの法的身分(4)          http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/31/7762951

毎日の余録に出た金時鐘さん          http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/08/27/8950717

本名は「金時鐘」か「林大造」か        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/08/23/8948031

金時鐘さんは本名をなぜ語らないのか?     http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/07/02/9110448  

金時鐘さんは結局語らず            http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/08/13/9140433

金時鐘さんが本名を明かしたが‥‥       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/10/26/9169120

金時鐘『「在日」を生きる』への疑問      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/01/8796038

金時鐘さんの出生地             http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/07/05/7700647

青木理・金時鐘の対談―帰化(1)      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/09/08/9524343 

青木理・金時鐘の対談―帰化(2)      https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/09/15/9526042

武田砂鉄の被差別正義論―毎日新聞      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/24/8810463

社会的低位者の差別発言           http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/05/09/9244588

コメント

_ 菜々師 ― 2025/07/22 19:11

噴霧器というのも気になります。
現代では手軽な物がありますが……。

_ 辻本 ― 2025/07/22 19:57

 噴霧器は、家庭では殺虫剤を撒くときに使っていました。日本では、キンチョウの家庭用噴霧器がありましたね。調べてみたら、1934年(昭和9)年発売とありました。
 また、アイロンかけの前に服を水でぬらすための噴霧器があったと思います。
 それ以外に、農業で農薬を撒くための噴霧器が広く使われています。
 ですから、当時の朝鮮に噴霧器があったことは確かと思われます。

 しかし、墨を噴霧器で撒くことができるのかとなると、疑問になります。
 墨汁は粘り気があり、すぐに乾いて固くなるからで、これを噴霧器に入れても、すぐに詰まって使えなくなってしまうように思われるからです。
 墨を噴霧器で吹きかけたというのは、眉唾だろうと思っています。

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