韓国の選挙風景―これは驚き2025/08/03

 韓国の週刊誌『週刊朝鮮』2865号(2025年6月30日)の「編集後記」(82頁)に、韓国の選挙風景が書かれていました。

 韓国の選挙は都市での様相が日本でもニュースに出てきます。 しかし田舎ではどのような選挙活動が繰り広げられているのか、韓国でもあまりニュースになっていないようです。 その一端を垣間見ることができ、なかなか興味深かったので訳してみました。

知人が慶尚北道のある地方自治体首長の選挙に出馬して落選したのであるが、その彼に会った時の話である。 それなりに成功した社会生活を終えて、故郷のために奉仕しようという気持ちで出馬を決めた彼に最初に連絡してきたのは、地方区選出の国会議員だったという。 この議員はお金を使う規模によって得票率が違ってくるのだと言い、お金を使わない場合に予想される得票率の数字をはっきりと言い切った。 議員はそう言ってさらに露骨に「選挙にはお金を使わねばならない」と言った。 知人はこれを拒絶したが、驚くべきことにお金を使わなかった彼の得票率は、この議員の言ったのとほとんど同じだった。

選挙戦の最中にあったことを聞いてみたら、さらに呆れたことがあったという。 他の候補の運動員は自転車に乗って回り、キャンディーのようなものを田んぼや畑にいるお年寄りたちに投げ与えていた。 後で聞いて見るとそれはキャンディーではなく5万ウォン(5千円ほど)紙幣という。 紙幣を五回折りたためばキャンディーの大きさになるが、これは年寄りが自分のポケットに入れるのにちょうどいいので、自転車に乗って投げて回っているというのだ。 選挙運動員が慣れた手つきで制球力を誇るかのように投げていく姿に、知人は「負けた」と呟いたという。 選挙管理員会でこれを摘発しないのかと問うてみると、返ってくる回答がなかなかのものだった。 遠くから写真を撮っても、これがキャンディーなのか紙幣なのか、区別が難しいというのだった。

選挙の終盤には、村の薬局のバッカス(韓国のエナジードリンク)の空瓶が売り切れるのだが、それはその空瓶の中に5万ウォン札を二枚入れて有権者に配るからだと言う。

企業に長く勤務した彼はその選挙を最後に、もう政治をしようという気持ちをなくした。 その選挙は2022年の選挙だった。

 韓国の田舎ではこのような選挙買収が今でも行なわれているのですねえ。 日本でも何十年か昔の田舎では選挙買収がよくありましたが、お札を小さく折りたたんで投げ回るなんてことはなかったですねえ。 地区には謹厳実直な駐在所の警察官がいましたから、買収は隠れてこそこそやっていたと記憶しています。 今はもう日本では買収なんてなくなってきているでしょう。 しかし韓国ではまだまだ行なわれているようです。 韓国の選挙報道を見る時は、背景にこのような買収の横行があることを知っておかなくてはなりませんね。

 いま韓国では若い男性が進歩(革新)から保守に傾いています。 ところが、保守政党は昔から年寄り(特に慶尚道地域)から支持されてきたのですが、その実情が今回書かれていたような選挙買収なのです。 『週刊朝鮮』の編集長は、韓国の若者たちはこんなトンデモ体質の保守政党を見切っているとして、今度の号で特集を組んだようです。 この週刊誌は『朝鮮日報』と同系列で保守派とされていますが、これでは保守政党の将来は暗いとして警鐘を鳴らしたかったのでしょう。

 韓国の政治世界は、保守派がこの体たらく、一方の進歩派は従北路線まっしぐら、といったところなのですかねえ。