毎日新聞 「“強い国”こそが寛容に」 ― 2014/06/15
2014年6月13日付の毎日新聞に、欧州総局の小倉孝保記者がコラム『記者の目』で、「英国・アイルランドの歴史的和解 “強い国”こそ寛容に」と題する意見記事を出しました。 http://mainichi.jp/shimen/news/m20140613ddm005070003000c.html その内容は
一方による他方の併合という「負の遺産」を両国はどう克服したのか。日韓関係を考えるうえでも参考になることがあるはずだ。 日韓の歴史的和解を語るとき独仏関係を参考にすることがあるが、独仏は互いに戦った関係だ。「併合」を経験した点でも英・アイルランド関係の方が参考になる。
というもので、英・ア関係を参考にしながら、日韓関係をどのような視点で扱うべきかを論じたものです。その部分を引用すると
日韓関係について2人(アイルランドの有識者)に聞くと、「歴史的体験を完全に払拭することはできないことを知ったうえで関係を作ったらいい」(クーガンさん)、「強い国は誇りをポケットにしまい、寛容になるべきだ」(ハーディマンさん)とのことだった。最近、日本側には誇りを傷つけられたと感じることも多い。ただ、そういうときこそ誇りを声高に主張せず、冷静に対応すべきだと私は思う。それが「強い国」の責任である。
これは、日本は「強い国」、韓国は「弱い国」だから、我が日本の方が寛容になるべきだということです。このような考え方は、同じ毎日新聞が社説でかつて
安倍政権は韓国や中国に対しては、成熟した民主主義国家として関係改善に積極的に動き、アジアに貢献する姿を示すべきだ」(2014年02月17日付け社説)
と書いたように、日本は成熟した民主主義国家、それに対して韓国・中国はそうではないのだから、日本側から仲良くしましょうと手を差し伸べるべきだという主張と軌を一にするものです。
これはまた、民主党政権時代に大蔵大臣・財務大臣を歴任した藤井裕久さんが 「中韓は子供と思って我慢すればいい」 と言ったのと同一レベルです。
しかし韓国や中国はそうような見方をしていません。 韓国の李明博大統領は2012年8月に竹島に上陸し、天皇謝罪を要求した際、 「日本はかつての日本ではない」と発言しました。 つまり日本はもはや大国ではないから遠慮しないということです。 また中国も、日本は大国の地位から転落して代わりに我が中国が大国となったと露骨に主張しています。
“溝に溺れた犬はさらに叩け”という諺があるように、韓国・中国は、大国でなくなった国の言うことなんかは聞くものではない、逆にこちらの言うことを聞かせねばならない、そしてもっと叩いて更なる譲歩をさせよう、という考え方で日本に対応してきています。
こんな情況なのに、毎日新聞の記者が「強い国こそが寛容になるべきだ」と主張することは、韓国・中国はこれをチャンスとばかりに日本から「寛容」を引き出して自分らの要求を貫くだけでしょう。 そして我が日本側は、こちらは「強い国」なんだから「寛容」の精神を発揮して譲歩して上げるんだと自己満足するということです。
大手の新聞記者が、日本はこんな外交をしろと主張しているのです。
日本は韓国・中国とは対等であるから、互いを尊重した上で毅然とした態度で臨むべきだと思うのですが、いかがなものなんでしょうかねえ。
【拙稿参照】
実は韓・中を見下している「毎日新聞」社説 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/02/19/7226754
「中韓は子供と思って我慢すればいい」 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/12/27/7157809