尹東柱は中国朝鮮族か韓国人か2016/04/21

 韓国の有力紙『朝鮮日報』2016年4月20日付に、尹東柱は中国朝鮮族であるとする中国側の見解に反発する韓国側の主張を報道しています。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/04/20/2016042001158.html

「尹東柱は朝鮮族」 中国の主張にソウル詩人協会が反発          「尹東柱は朝鮮族」 中国の主張にソウル詩人協会が反発          詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)=1917-45=の国籍を「中国・朝鮮族」だと言い張る中国の行いを改めさせるため、詩人たちが乗り出した。         ソウル詩人協会は「20日午後1時、韓国プレスセンターで『月刊 詩』と共に、『詩の韓流時代宣言式』を開催する」と発表した。         「1200人のカフェ詩人会員を中心に、中国に対して尹東柱の国籍捏造(ねつぞう)を是正するよう要求したい。日本に対しては、若くして福岡刑務所で獄死した尹東柱の死因究明と謝罪を行うよう、署名運動などの活動を展開すると決めた。尹東柱を愛する詩人の参加を歓迎する」           『月刊 詩』編集人で自らも詩人の閔允基(ミン・ユンギ)氏は「尹東柱の生家を踏査した結果、2012年に中国が竜井市明東村にある尹東柱の生家を復元した際、『中国朝鮮族の愛国詩人・尹東柱』と記された巨大な案内用の石碑を立てた。その後、あらゆる広報物で大々的に宣伝し、観光客誘致に利用している」と語った。         閔氏は「生家の内部では、尹東柱の作品を勝手に中国語訳して、尹東柱があたかも中国のために愛国運動を展開した『朝鮮族』詩人であったかのように歪曲(わいきょく)している。尹東柱の生家を訪れた韓国の観光客が、『中国朝鮮族の愛国詩人』と書かれた案内石の前で記念写真を撮っている。韓民族を代表する尹東柱を中国・朝鮮族の詩人と捏造するというのは、痛嘆すべきことだ」と話した。

 尹東柱は中国朝鮮族なのか、韓国人なのか。 生まれ育ったのは間島(今の吉林省延辺朝鮮自治区)ですから、もし彼がそのままそこで暮らしたら中国の朝鮮族になります。

 彼は故郷の間島を離れ、朝鮮の京城の延禧専門学校卒業後、日本の立教・同志社大学に通い、その時に逮捕され1945年に獄死します。 もし獄死せずにそのまま日本で暮したとすればどうなっていたのか、つまり満州の間島出身の朝鮮人が終戦時に日本にいた場合、国籍すなわち所属する国家はどうなるのか。 仮定の話ですから何とも言えないところです。

 次に韓国は韓中国交樹立の際に、朝鮮族の国籍は中国国籍であることを認めました。 だから朝鮮族の人は中国国籍者として韓国に渡航し、滞在しています。 従って尹東柱の両親は生きていれば中国国籍です。 それでは尹東柱の国籍は韓国であるという韓国側の主張はどんな根拠に基づいているのか。 韓国の国籍法に拠るのが当然と思うのですが、国籍法をいくら調べても分かりません。 根拠というものがなくて単なる情緒から韓国籍を主張しているように思えるのですが、どうでしょうか。

 ところで尹東柱の詩には、韓国語の辞書に載っていない単語が出てきます。 例えば彼の一番有名な詩である「序詩」の最後に出てくる「스치운다」は韓国語の辞書にありません。 これは「스치다(かすめる)」の意味とされていますが、実はどうやらこれは中国朝鮮族の方言のようです。 彼自身がそこで生まれ育っていますから、可能性は高いです。 とすると、尹東柱の詩には中国朝鮮族の文化が色濃くあると見た方がいいでしょう。

 尹東柱が中国朝鮮族だと言っても間違いではないと思うのですが、韓国の反発が理解できないところです。

【拙稿参照】

尹東柱記事の間違い(産経新聞)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/02/09/7568265

尹東柱記事の間違い(毎日新聞)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/02/15/7572811

『言葉のなかの日韓関係』(2)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/04/09/6772455

『言葉のなかの日韓関係』(3)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/04/11/6774088

『言葉のなかの日韓関係』(4)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/04/13/6775685

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