韓国語の雑学-下剋上2020/04/22

 『朝鮮日報』4月20日付けに「‘兵士がシャベルで女部隊長を暴行’…下剋上相次ぐ韓国軍」と題する記事がありました。 え!軍隊内で「下剋上」とは!? 兵士が上官に暴行を加えて上官の地位に就く越権行為をしたのかな?などと思って、ビックリしました。

 記事の内容は次の通りです。

京畿道の陸軍部隊で、兵士が野戦用シャベルで女性軍の中隊長に暴行を加える事件が発生し、捜査を受けていることが20日、分かった。

韓国軍によると、この部隊に所属するA上等兵は先月末、射撃場の防火地帯作戦に投入された。 射撃場防火地帯作戦とは、射撃場内の草刈りなどを行う作戦だ。 しかしA上等兵は作業が数日間続くと「つらくてこれ以上できそうにない」と言って作業を最後まで遂行しなかった。 そのため中隊長のB大尉がA上等兵を呼んで面談を実施したところ、途中でA上等兵がB大尉に暴行を加えたという。

韓国軍の関係者は「A上等兵が面談中にB大尉に『兵力統制が厳しすぎる』と不満を吐露した」として「B大尉が諭したがA上等兵が怒りを抑えられず、袋に入れて準備してきた野戦用シャベルを大尉に振り下ろした」と説明した。 A上等兵は現在、特殊傷害容疑などで軍警察に拘束され、捜査を受けている。

韓国軍では最近、相次ぐ「下剋上」が物議を醸している。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/04/20/2020042080328.html

   韓国語辞典を調べてみると、「하극상(下剋上)」は次のように説明されています。

계급이나 신분이 낮은 사람이 예의나 규율을 무시하고 윗사람을 꺾고 오름

階級や身分の低い者が礼儀や規律を無視して目上の人をへし折ってやること

   つまり韓国では「下剋上」とは、下部の人間が上部の言うことを聞かず、時には暴行まですることまでを意味しているのであって、権力・権限を掌握するようなところまでは意味を含んでいないということです。 従って、いわゆる「抗命」ですね。 韓国では「下剋上」は「抗命」と同じ意味のようです。

 日本では「下剋上」は、

下位の者が国主や主家など上位の者を政治的・軍事的に打倒して実権を握る行為

と説明されており、鎌倉時代の『源平盛衰記』や南北朝時代の『太平記』などに既に出てきます。 

 「下剋上」はもともと中国古典に出てくる言葉でしたが、中国ではそれほど普及せず、むしろ日本で中世の武士社会成立後にかなり使用されるようになった言葉です。 その漢字語を韓国では「하극상」とハングル読みして「抗命」と同じ「上官に対する反抗」という意味で使っている、ということですね。

 日本と韓国とでは、同じ漢字語でも意味が違うことの典型例です。

 ところで韓国の軍隊で「下剋上=抗命」が相次いでいるとは、綱紀が乱れつつあるようです。 韓国軍の質の低下は数年ほど前から指摘されてきています。 拙ブログでも1年前に論じたことがありますので、再録します。

今の韓国は日本以上の少子化で、合計特殊出生率1.0以下にまで落ち込んでいます。(ちなみに日本は1.43) 韓国女性は平均して一人以下の子供しか産まないのです。 出生した子供の数を調べてみますと、1990~95年の年平均出生数は70万2千人、その20年後の2010~15年の年平均出生数は45万5千人と減少し、そして昨年の2018年は1年間に32万7千人、今年の出生予測値は30万9千人と減少幅がさらに大きくなっています。

この世代が20年後の成人になった時、徴兵対象の若者の数が非常に少なくなることは明らかです。 とすると、これで軍隊を維持できるのだろうか?と疑問に思われます。

その兆候はもう既に現われているようで、昔なら徴兵検査で不合格にしていたような若者でも徴兵せねばならなくなってきて、韓国軍の質が低下しているそうです。 これは韓国のマスコミで時々報道されていますね。 厳しい訓練が難しくなってきているといいます。

報道では、軍隊に行っている息子が心配で所属部隊に毎日のように電話する親たちがいて、部隊側もそんな親たちを安心させようと専用の電話を置いている事実に、軍隊は幼稚園か!?と嘆く新聞記事がありました。 また野外訓練や歩哨に立つ兵士、海軍艦艇に乗り組む水兵なんかが禁止されている携帯電話を持ち込み、こそっと家族や恋人らと通話していたことが相次いで発覚したという記事もありました。

これからも徴兵対象の若者がどんどん減っていく韓国では、軍隊の質の低下がさらに進むかも知れません。

http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/05/31/9079082

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