朝鮮奨学会の民族差別実態アンケート―『中央日報』2021/03/30

 『中央日報』2021年3月16日付けに、「日本の学校に通う韓国人学生の30%以上が民族差別的な言葉の暴力受ける」と題する記事がありました。   https://japanese.joins.com/JArticle/276591?sectcode=A10&servcode=A00

15日の毎日新聞によると、朝鮮奨学会が在日コリアンと韓国人留学生など高校生~大学院生1030人を対象に日本国内での民族差別の実態に対するアンケート調査を実施した結果、30.9%が「直近3年間に言葉による嫌がらせを受けたことがある」と答えた。

このうち48.1%は「同級生など日本人の生徒・学生」からのものだった。16.4%はアルバイト先の客、10.1%は教師・教授ら日本人教員だった。

具体的な嫌がらせの事例では、「韓国に帰れ」「日本から出て行け」のような日本人同級生による言葉の暴力をはじめ、「日本人の教員から『北朝鮮のスパイなのか』と言われた」「彼女の父親に、民族学校に通った韓国人は危ないと言われた」「バイト先で、ネームプレートを見た客から『まともな日本語使えないのか』と言われた」などの被害の訴えもあった。「通名(日本名)じゃないと雇わない」という就労差別も数件あった。

日本人から嫌がらせを受けた73%が「不快に感じた」と答えた中で10.1%は「韓国人・朝鮮人である自分を嫌だと思った」と答え、「日本人に生まれたかった」という回答もあった。朝鮮奨学会の権清志代表理事は「学生たちは文字通り心から血を流していると思う」と批判した。

 これを読んで先ず目が行ったところは、「言葉の嫌がらせを受けた」と答えた在日学生が31%という点です。 これを多いと見るか、少ないと見るか。 中央日報は多いと見たから、記事化したのでしょう。 

 しかし50年前の1960年代以降の民族差別を知る私には、へー!そんなに少なくなったのか!という感想を抱きました。 

 当時の学校では、朝鮮人と日本人生徒とのケンカはそれこそ本当に血みどろでしたし、その時に日本人側から「やい!朝鮮!」「何を!この朝鮮!」という言葉を投げつけるのはいつものことでした。 日常で朝鮮人の子に「朝鮮、にんにく臭い!」「チョーセン、チョーセン、パカスルナ!」「オナチ メシクテ トコチガウ!」とからかうのも日常茶飯事でした。 また登校道にある高架下などに個人名をあげて「〇〇は朝鮮だ!」と書かれた落書きもよく見たものでした。

 その時代に在日の生徒・学生らに民族差別の実態アンケート調査をとったら、ほぼ100%が「差別を受けた」と答えると思います。 ということは当時の在日の若者にとって自分たちの共通点が“日本人から差別された”という体験になります。

 これは実際の体験ですから、それを語る時の彼らの表情や態度は、感情がほとばしると言っていいほど激しいものになるものでした。 民族差別糾弾闘争などで、俺にも言わせてくれ!と参加する在日が次から次へと現れたという話はよく聞いたものでした。 この時代の在日のアイデンティティは「日本人から差別された」という被差別体験といって過言でありません。

 こんな50年前の時代を思い出すと、今の在日生徒・学生が「言葉の嫌がらせを受けた」と答えたのが31%というのは、状況がかなり良くなったんだなあという感想を持ちます。 「差別を受けなかった」が70%もあるじゃないか!? という疑問も抱きます。 

 参考までに30年近く前の1993年の在日韓国青年会の調査によると、18~30歳の在日800人のうち、民族差別を体験したがことが「とてもよくある」2.5%、「よくある」6.5%、「少しはある」32.5%、「ほとんどない」28%、「まったくない」30.5%です。 これは中公新書『在日韓国人の終焉』(鄭大均著 平成13年4月)の24頁に紹介された数字です。 数字をまとめると民族差別体験のある者は41.5%、体験のない者は58.5%となります。

 ただし調査の対象ややり方が違うでしょうから、今回の朝鮮奨学会の調査の数字と単純に比較することはできません。 しかし被差別体験はどんどん少なくなってきたことの裏付けの一つになるでしょう。

 ところで「チョーセン、チョーセン、パカスルナ!オナチ メシクテ トコチガウ!」というからかいは、1970年代には聞くことがなくなりました。 これは一世の朝鮮人が差別する日本人らに拙い日本語で抗議する言葉で、日本人がそれをそのまま真似して朝鮮人をからかったものです。 今考えると、酷かったですねえ。

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