『ハンギョレ』中村一成氏への違和感(1)2022/07/30

 7月7日付け『ハンギョレ新聞』に、「ウトロの『80年闘争史』、20年訪ね歩いて記録」と題する記事がありました。 副題は「在日コリアンの中村一成さん|ジャーナリスト」です。   https://japan.hani.co.kr/arti/politics/43977.html  https://news.yahoo.co.jp/articles/5c5dbc2c94688c1d76a58f32cc7f446e044449f7

 一読して、中村さんは在日についてかなり昔の考え方をしているのだなあ、と思いました。 これには私はちょっと一言付さなければならない、と考えました。 まずは彼の発言から見ていきます。 発言は記事内でカッコ書きしている部分です。

日本で在日朝鮮人はいまも植民地の国民という差別と抑圧の中で生きています。韓日両国から背を向けられた在日朝鮮人の勝利を象徴するウトロを忘れてはなりません。

 1970~80年代、民族差別と闘う運動が盛んだった時期には、こんなことを主張する活動家が多かったなあと思い出させてくれました。 しかしそれから在日は、1982年の難民条約締結により福祉面での差別はほとんどなくなり、1991年の特別永住制度を定めた特例法により特段に恵まれた在留資格を得て、指紋押捺義務もなくなりました。

 このように在日への差別はどんどん解消していきました。 そして今の在日は日本に在住する外国人として、もうこれ以上はないと言えるくらいに優遇された法的地位にあります。

 その理由は、在日はかつて「植民地の国民」だったからです。 つまり今の恵まれた地位はかつて「植民地の国民」だったという歴史的経緯から発生しているのです。 そうであるのに中村さんが「いまも‥‥差別と抑圧の中で生きている」というのは、一体どういうことなのでしょうか? おそらくは、在日はいつまでも「差別抑圧」された惨めな存在であらねばならない、というイデオロギーから来ているのではないかと思います。 

 「韓日両国から背を向けられた在日朝鮮人」とは、どういう意味なのか分かりかねるところです。 在日は韓国からは在外国民として位置づけられており、所定の手順を踏めば韓国のパスポートの発給を受けて海外旅行に行くことが出来ます。 また日本からは上記のように非常に恵まれた法的処遇を受けています。 これで何故「日韓両国から背を向けられた」なのか??? ビックリですね。

在日朝鮮人は日本で一番低い位置にいた。外国から帰ってくると再入国許可を受けなければならず、就職でも差別を受ける。最近は右翼団体の攻撃に苦しんでいる

 「日本で一番低い位置」って何でしょうねえ。 どこの国も同じと思いますが、外国人は政治分野で高い地位に就くことがあり得ないので、経済分野で成功して富裕になって高い地位を目指すものです。 この点で在日は成功した人が多いと言えます。

 一番の成功者は、昔は“東のロッテ、西の阪本紡績”と言われました。 ロッテは知る人がいないくらい有名ですが、阪本紡績はもう大部分の人が知らないでしょう。 1950~60年代に大阪で高額納税者(長者)番付トップだった徐甲虎(日本名は阪本栄一)が経営した紡績会社です。 

 この二つが在日で大成功を収めた両雄なのですが、それ以外にもかなりの成功を収めて、それなりの会社となっているところも多いです。 在日は就職が難しかったですから自ら事業を興す自営業が多く、それが1960年代の高度経済成長に乗って成長したのです。 これは当時、韓国民団や朝鮮総連の商工会の盛行ぶりからも知ることができました。

つまり当時の在日は、一方では経済的に成功して裕福な人がいて、他方では就職できずに日雇い労働等で貧困な生活を送るしかない人も多かった、というのが現実でした。 つまり現在風に言うと、ジャパンドリームを実現した人とそうでない人とが両極化していたなあと思い出されます。 それはともかく、人口50~60万人くらいの在日からすれば、成功者の割合が高かったと考えているのですが、どうなんでしょうか。

 以上は20世紀の在日でしたが、21世紀の日本では在日が一番の成功をおさめた企業は何といってもソフトバンクでしょう。 ただソフトバンクは民団や総連の商工会とは関係がなく、独力で会社を立ち上げて発展させてきました。 また昔のロッテや阪本紡績のように、祖国に貢献することは考えてこなかったようです。

 従ってソフトバンクは社長の孫正義さんがたまたま在日であったというに過ぎず、民族的な意味を含む「在日企業」とは言えません。

 在日が日本から「差別抑圧を受けている」なんて、もはや言うべきものではありません。 在日の若者には、もはや差別抑圧はなくなっているので、第二の孫正義を目指して頑張ってくださいと言いたいものです。 (続く)

【拙稿参照】

中村一成『ルポ思想としての朝鮮籍』(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/06/09/8589790

中村一成『ルポ思想としての朝鮮籍』(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/06/13/8593507

中村一成『ルポ思想としての朝鮮籍』(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/06/16/8598422

中村一成『ルポ思想としての朝鮮籍』(4) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/06/22/8601961

中村一成『ルポ思想としての朝鮮籍』(5) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/06/25/8603941

コメント

_ 海苔訓六 ― 2022/08/12 07:48

韓国観光したときに感じましたが韓国は本当に自営業多いです。
今回のブログでも言及していますが、日本に住んでいる在日朝鮮人も自営業多いです。
一般的な説明として、日本では在日朝鮮人に対する就職差別が厳しいので在日朝鮮人は自営業選択する人が多いといわれますが、韓半島本土の朝鮮人も自営業多いので、朝鮮人は本質的に独立志向が強い国民性なのかもしれませんね。
もちろん『自営業が多い』といっても
日本の場合は就職差別されているので自営業を選択せざるを得ない、
韓国の場合は빽Paekがあるので、そこから外れてしまうと基本的に就職が難しいから自営業を選択する人が多いという違いがあるとは思いますが。
(빽Paekというのは当て字にすると縛で”コネ” のスラングで、英語の back 、もしくはbackgroundから来ているようですね)

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