在日の生活保護の法的根拠 ― 2006/07/22
『諸君!』2006年4月号の浅川晃広さんの「見苦しいゾ『在日』の二枚舌」と題する論考があります。 内容は朴一大阪市大教授の著作『「在日コリアン」ってなんでんねん?』(講談社α新書 2005年)を批判するものです。
拙論(http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/05/14/364473)でも、この本について「間違い・誤解・矛盾・重要事実の隠蔽が随所に見られる」と批判しましたが、浅川さんの方が説得力があります。
しかし一点だけ疑問なところがあります。それは在日の生活保護の根拠のところです。(173~174頁) 彼は在日の生活保護について
「“在日コリアン”が対象外であっても当然のはずの生活保護」 「これ(在日の生活保護受給)は‥‥国会、法律、ひいては国民を無視した措置なのである」 「“在日コリアン”の生活保護受給は、法律的に極めて疑義があることはもちろんのこと」
と書いておられます。
在日の生活保護は、1965年までは法に基づくものではなく法の運用によるものです。従ってこの時点までは、法的に疑義があるとする彼に一理があります。
しかし65年に締結された日韓条約の在日韓国人の法的地位協定のなかに、教育・生活保護・国民健康保険について明記されています。 つまり在日の生活保護は、この条約によって法的根拠が与えられたのです。 この点が彼の言説の中で疑問とするところです。
コメント
_ 通りすがり ― 2008/03/01 09:25
_ 辻本 ― 2008/03/01 16:55
のなかの第4条(a)に明記されています。
http://list.room.ne.jp/~lawtext/1965T028.html
これによって、日本国政府は在日の生活保護について「妥当な考慮を払う」義務が生じました。
従ってこれは法的根拠となります。
_ 通りすがりB ― 2008/05/14 18:03
法的な権利を言うなら先の通りすがりさんが言ってるように、生活保護法に明記される状態を言います。
それに生活保護法には「国民」に対する法律であることが明記されてます。
国民でない在日外国人が生活保護を受ける「法的根拠」も「権利」もありません。
あくまでも状況に応じて「準用」してあげてるだけです。
強いて言うならこの協定で
「日本で永住することを許可されている大韓民国国民に対して生活保護法を『適用』する」
と明記されていれば、日本が生活保護を払う法的根拠があると言えますが、
「妥当な考慮を払うものとする」では法的根拠とは言いません。
妥当の基準さえ明記されてないですしね。
極端な話をすれば、妥当の基準を日本人と同等としなくてもいいわけです。
前科者や20歳以上で一度も所得税を収めたことがない者などを
妥当でないと判断して準用しないこともできるわけです。
法的根拠があるというのなら、どの『法律』にそれが明記されていうのか提示してみてください。
_ 辻本 ― 2008/05/17 07:54
在日は、生活保護について日本政府に対し「妥当な考慮」を請求することができます。
これは法的根拠と言えるでしょう。
_ 国民自由党 ― 2010/09/13 22:17
_ 健太 ― 2012/07/10 16:49
1 日本国政府は、第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている者の直系卑属として日本国で出生した大韓民国国民の日本国における居住については、大韓民国政府の要請があれば、この協定の効力発生の日から二十五年を経過するまでは協議を行なうことに同意する。
ご指摘の条約については上記の条文もあるが、これは協議を行うことに同意するとあり。その期間は25年でそれを超える時には明文条項がないから、わが国が自由に決めることができたはずで、それを何故我国政府がしなかったかでしょう。戦後の朝鮮人の運動はこれをするためにしただけで、差別其の他色々と広範な作戦が行われたと思っている。
この協議条項はその内容については記されていないから、手としては何もしないことが正しかったがそれを我国政府がせずに特別永住資格をもうけたことが間違いでしょう。これを廃止することで、1990年次における協議の内容がどのようになっているか辻本氏にお聞きしたい。
_ 辻本 ― 2012/07/10 21:00
人に聞く前に、ご自分でよくお調べになってください。
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地位協定では「妥当な考慮を払うものとする」とあるだけで、国内の法的根拠にするには不十分ではないでしょうか。
国際条約が国内法の上に立つので法解釈は難しくなりますが、法的根拠は、生活保護法もしくはその付則に明示されない限り発生しないと考えるのが自然です。
旧厚生省の「通知」も法的根拠とするには「当分の間」と書かれているので貧弱だと思われます。