水野・文『在日朝鮮人』(7)―人口の急増2016/05/14

韓国併合の頃の数千人から35年間で200万人に達する朝鮮人が日本に居住するようになった最大の原因は、日本による朝鮮植民地支配にあったといわねばならない。(81頁)

 ここはもう少し掘り下げて書けなかったのか、と思います。 朝鮮は植民地支配によって近代社会になり、それに伴って人口が急増した。 しかし朝鮮は農業社会であり、農業生産が人口の急増に対応できず、農民は疲弊するしかなかった。 だから人口過剰で疲弊した朝鮮から、産業化が進んで労働力需要の旺盛な日本本土に人口が移動する現象が起こった。 これが、朝鮮人が日本に居住するようになった最大の原因である。 こういう風に書いてほしかったと思います。

 近代社会になって人口が急増するのは、全世界史的な現象です。 朝鮮も日本の植民地支配を受けることによって近代社会に入り、人口が急増しました。 これが過剰人口の植民地から労働力需要の大きな宗主国への移動という現象につながるのです。

 ところで植民地近代化論を批判・反対する論者は韓国にも日本にも多数いますが、人口急増になかなか言及しませんねえ。 日本の植民地支配は世界に類を見ない過酷な収奪だったとする歴史像では、人口急増は説明が難しいのでしょう。

水野直樹・文京洙『在日朝鮮人』(1)―渡日した階層 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/06/8066021

水野・文『在日朝鮮人』(2)―渡航証明と強制連行 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/11/8069125

水野・文『在日朝鮮人』(3)―強制連行と強制送還  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/17/8072649

水野・文『在日朝鮮人』(4)―矛盾した施策 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/25/8077594

水野・文『在日朝鮮人』(5)―強制連行と逃走  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/29/8080041

水野・文『在日朝鮮人』(6)―渡航の要因 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/05/09/8086320