お上に逆らえない業者の悲哀(2)2020/01/05

http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/01/01/9196463  の続きです。

 当初設計では池の土手も発掘の対象であった。土手を除去するのであるから、大雨に備えて仮設堤防が必要になる。しかし発注者は設計にこの仮設堤防工事を入れ忘れていた。仮設堤防が必要なのは常識で当たり前のことだから、発注者側の一方的ミスである。この仮設堤防の造成費だけで何千万円は必要になる。うっかりミスで済まされるような金額ではない。設計書にないから、当然D社との契約にも入っていない。

 設計書には仮設堤防が抜け落ちていただけではなかった。コンクリート構造物撤去や既存フェンス撤去などの工事量も、発注者はヘドロ改良と同じように根拠のない適当な数字を設計書に書き入れていた。 この設計書を受け取ったD社が現地に行って調べてみると、撤去工事の数量は全く違う数字になる、施工箇所がどこでどのような撤去工事をするつもりで作られた設計書なのか、いくら見ても理解出来ないものなのであった。

 D社は施工計画書を作る際に、これはどういう工事をすればいいのかと発注者に聞いても、発注者は自分の言う通りにすればいい、の一点張りで答えなかった。設計書に記載されている各工種の工事量の数字の根拠となった図面や計算式を見せてくれと言っても、発注者は拒否した。実際に施工した分のお金は払うのだから設計書の数字は気にしないで工事すればいい、すべて設計変更で対応するという理屈であった。

 D社は、発掘調査は何が出てくるか分からないから人力掘削工事量が適当な数字であるのは理解できるが、それ以外のものは普通の土木工事と同じなのに何故内容を出してくれないのか、これでは施工計画書が作れないと不満を大きくした。

 D社は戸惑いながらも中身のない施工計画書を何とか作成したが、字句の間違いレベルで何度も突き返され、戸惑いが更に大きくなった。すると発注者は、D社の現場代理人にはやる気と誠意がないとして代理人の変更を強制した。しかもその変更強制が大勢のいる前でD社を糾弾する形で行われたのであった。この時のD社は、自分たち業者は発注者の言うことを何でも聞かねばならないと思っていたから、この時に何の反論も出来ずに代理人の変更を心ならずも受け入れたのであった。

 中身のない施工計画書の作成を強制され、現場代理人の変更で恥をかかされ、またヘドロ改良で損害と減額を強要され、改良剤・代理人変更の件で時間を浪費させられたD社は、仮設堤防の追加工事の要請を拒否した。契約にないだけでなく仮設とはいえ堤防であるから、そんな工事をしたことのないD社は安全を担保できないという理由であった。

 仮設堤防なしに土手部分の発掘はできない。しかもD社は仮設堤防工事しないと言ってきた。発掘工期の順守を関係機関に約束していた発注者は、今度は土手部分の発掘が必要なくなったとして、発掘しないことに決めた。当初遺跡があったはずが、なかったことになったのである。しかし土手部分の発掘は契約にあるものだから、これをしないということはD社にとって減額となる。発注者は発掘の必要のない所を人力発掘させ、それを計上して何とか辻褄を合わせ、そして工期も間に合わせた。

 D社は、お上は業者は何でも言うことを聞くと思って無茶を言ってくる、思い出しても腹が煮えくり返る、と怒るばかりであった。しかし発注者はD社を何とか我慢させて問題が表面化しないことに成功し、会検も切り抜けた。

お上に逆らえない業者の悲哀(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/01/01/9196463 

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 以上は二十年近く前の出来事ですから、もう時効と思われます。 おそらく関係資料は廃棄されただろうし、残っていても会検対策用に作成された書類だけでしょう。 また関係者に問いただしても「知らぬ」「存ぜぬ」「忘れた」と言うだけでしょう。

 しかし20年前まではこんなことが横行していたという記録だけは、残しておきたいものです。

コメント

_ (未記入) ― 2020/01/08 16:01

Mレール  →  大阪モノレール

T市      →  豊中市

H遺跡   →  蛍池遺跡

D社     →  周辺には「だ」「で」「ど」で始まる土建会社は、いくつかある。 どれか分からなかった。

_ (未記入) ― 2020/01/12 20:46

O法人   →  大阪府文化財センター 財団法人では?

_ (未記入) ― 2020/01/22 16:15

池の名前は、南門前池か?

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