70年代のスローガン「アジアとの連帯」2012/08/11

 1970年代の革新・左翼運動のスローガンの一つに「アジア人民との連帯」がありました。その中身は、今(70年代)日本は帝国主義・軍国主義化しつつあり、戦前の大日本帝国を再現しようとアジアを再び侵略しようとしている。政府自民党ら権力者たちは戦前のアジア侵略の歴史を美化し、日本を戦争に駆り立てようとしている。我々は侵略されようとしているアジア人民と連帯して闘わねばならない、というものでした。

 従って、戦前の日本軍国主義はこんなに悪いことをしました、という歴史の発掘が盛んになりました。何しろ、日本の軍国主義がすべて悪い、それに協力した日本国民も同罪だ、という主張でした。これに感化された若き活動家たちは、自分の親に向かって、戦前・戦中になぜ闘わなかったのか、それをしなかったお父さんも軍国主義者だ!と詰め寄った人が多くいたものでした。

 韓国の朴正煕大統領はこんな日本を引き入れ、自国を日本の植民地にしようとしている、だから韓国と日本の関係を断ち切らねばならないという主張もあり、実際そういう運動を展開した活動家もいました。

 以上簡単に書きましたが、実際の論理を展開すればかなり長文になりますし、また中身は精緻なものです。

 彼らの論理は日本国内にとどまらず、韓国・北朝鮮・中国に広まり、これらの国では日本に対して「歴史」を外交材料として、自国の利益拡大に利用しています。

 韓国の李大統領が竹島に上陸し、従軍慰安婦問題で「日本は心からの謝罪をしていない」と語ったというニュース聞き、どうやら韓国は日本を友好国扱いしないと決心したようです。

 1970年代の革新・左翼諸君の「アジアとの連帯」の思想は、歴史を反省しない日本の権力を、日本とアジアの人民が連帯して包囲するというものですから、現在成就しつつあるように思えます。    かつての革新・左翼の考えが、今このように花開いているのだなあ、と感じました。

コメント

_ 宇宙飛行士 ― 2012/08/15 22:07

『日・朝・中三国人民連帯の歴史と理論』(日本朝鮮研究所、1964年)を読みましたが、この本は辻本さんの話に登場する典型的な例だと思います。

日本は悪い、韓国はひどい、北朝鮮は平和で幸せ。そして、日韓会談反対、米軍を撤退させるため連携。呆れる展開でした。

私が驚いたのは、著者の多くが、日本共産党、北朝鮮中国共産党などと親密な関係にあったこと、そして彼らの言説が過去に力を発揮したということでした。

内容にはデマとしかいえない根拠のない話もありましたが、彼らがいったいなぜそのような無茶な話を広げたのか理解できないです。

そして、この本の悪影響も少なくないと思います。

_ ぽむぽむ ― 2012/09/03 22:29

初めまして、辻本様。
ぽむぽむと申します。多少ふざけたHNですが真面目に書き込ませて頂きます。

相手国を侮辱するような差別用語は一切使わない。
扇情的な情報には振り回されない。語学力があり、記事をご自分で訳して掲載される。信頼される資料に基づいた冷静な考察・・・・こんなブログを探しておりました。
とても勉強になっております。

私はまだ20代前半なのですが、知り合いの60代半ばの人に「日本は韓国を侮辱した。」
「朝鮮は日本が植民地にする前は立派な独立国だったのに・・・。」などと言われるので疑問に思い、調べていくうちに
ここに辿り着きました。
(ちなみに上のような事を言われても
「下関条約で清が独立を認めるとあるから、属国だったのでは?それに壬午事変、甲午農民戦争やその他諸々、朝鮮内でもいろいろ開化派、保守派など揉めていたので一方的に日本が侮辱したと決めつけるのはどうかと・・・・。」
程度の反論しかできませんでした。その後、
「君は間違っている!日本が朝鮮を侵略したの何故か知っているか!」
とお叱りを受けました。
「対露戦略の為ではないのですか?」と返したら
「いや、違う!そもそも下関条約はおかしいんだ!。」とまた叱られました。何がどうおかしいのか、なんの為に朝鮮侵略をしたのか、という持論は教えてもらえませんでしたが・・・・)
思想は人それぞれで、徹底的に反論する必要もないかもしれませんが、せめて証拠に基づいた事実を知っておきたいと思っています。
なぜ60代半ばの人にこういう人が多いんだろう・・・と疑問だったのですが、この70年代スローガンが関係してそうですね。

_ 辻本 ― 2012/09/04 21:14

>とても勉強になっております。

 拙ブログがお役に立っているとのこと、うれしく思います。

>なぜ60代半ばの人にこういう人が多いんだろう・・・と疑問だったのですが

 その方の年齢からすると、1960年代末に激しく燃え上がった全共闘運動の経験者でしょうねえ。今なお、そっちの方面の活動に関わっておられるみたいですねえ。
 長年にわたって、その考えに凝り固まった方でしょうから、議論は難しいと思いますよ。

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