原始社会(2)2015/01/30

 今回は韓国や朝鮮とは全く関係のない「人類史」の話です。以前に書いた原始社会 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/05/11/7307645 という論稿の続きになります。

 動物の行動のすべては‘個体維持’と‘種族維持’が動機だという話があります。 ‘個体維持’とは個々の肉体を保つことで、食欲のことを指します。 動物は食欲があるからエサを探しまわります。動物の日常は食欲を満たすための行動がすべてと言っていいほどです。 もう一つの‘種族維持’とは繁殖のことで、性欲を指します。 動物は発情期になると、性欲を満たすために激しい行動を行ないます。

 動物は食欲も性欲も本能のままに動きますので、それぞれの個体がひたすら食欲と性欲を満足させるためだけに行動します。

 食欲は肉体の維持ですから、食欲を満たせなかったら短時日のうちに身体が衰えて死にますので割りと分かりやすいです。 しかし性欲のほうは、これが繁殖に結び付くのに数ヶ月以上の時間が必要になります。 この時間差の故なのか、原始時代の人間には性欲を満たすと子供ができるということが理解できないようです。

 人類学の古典的名著『未開人の性生活』(新泉社 1971)は、ニューギニアに近いトロブリアンド諸島に人類学者マリノウスキーが20世紀初めに訪れて、現地種族の婚姻や生殖、妊娠、性生活について調査したものです。 ここにビックリするようなことが報告されています。原始社会段階にある彼らはセックスと妊娠・出産とは関係ないという考え方を頑なに持っていることでした。 従って、彼らは性的放縦すなわち我々が今言うところのフリー・セックスを行ないます。

 マリノウスキーが如何に説明しても、彼らは様々な「事実」を挙げて激しく反論します。 彼らの挙げる「事実」とは、この本の「第七章 生殖と妊娠に関する考えと慣習」のなかに列挙されています。 一例を挙げると、未婚女性は既婚女性よりも熱心に性生活を送っているが妊娠しないという「事実」。 マリノウスキーは「多少誇張されているが、実際に存在する事実」と認めています(143頁)。 ただし今日の一般常識に反するこの「事実」が何故現れるのかについては言及していません。

 ところでこのような性的放縦はここだけに限られるのではなく、キリスト教などの影響で貞淑道徳を植えつけられる以前の原始社会に割りとよく見られる現象のようです。 つまり純粋な原始社会では、セックスと妊娠・出産とが結びつくものとはされておらず、従って「家族」があっても父親と子供のDNA上の真実の血縁関係については思いもよらないことなのです。

 ここで動物のサルを想起してみると、サルは発情したらそのまま行動します。メスは腕力の強いオスに性欲を掻き立てられるようで、強いオスはより多くのメスと交尾することができます。 逆に弱いオスは遠慮せざるを得ませんし、メスからも嫌がられますから交尾が難しくなります。 これらは本能のまま行動であって、オスは何もメスに自分の子供を宿してやろうなんて思いません。 相手のメスに子供が出来ても、これが自分の子供なんてちっとも感じることなく、発情期が過ぎれば元のように自分のためにエサを捜し求めます。

 このサルから人類が歩み始めたのですから、原始社会の男は性欲を満たす本能だけがあるのであって、自分のDNAを残したいという欲望はないということです。 性欲の相手にした女から子供が生まれても、自分の子供だという感情は出てきません。 

 そして男が ‘これは自分の子供だ’ ‘自分の子供が欲しい’ と考えるようになった時点から現在につながる「家族」の歴史が始まり、同時にこの時が原始社会から一歩踏み出して文明へ向けた次の段階へ歩む人類史の始まりとなります。

【拙稿参照】

原始社会 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/05/11/7307645

コメント

_ (未記入) ― 2015/01/31 11:46

「サル」への認識が浅はか過ぎます。

戦後しばらくのころの、閉鎖的な空間で餌付けされたサル山のニホンザルを念頭に置いているとしたら、
1、ヒトなどにより強い制約がかかったサル社会での現象であって、いわゆるボス猿は自然状態ではほとんどいない。
2、また、その状況下でも、弱いと考えられるオス猿と駆け落ちするのが1/3程度もいる。
(遺伝子調査でも裏付けがとれている。)
3、ニホンザルなどのオナガザルの仲間よりテナガザルの仲間の方がヒトに近い。
さらにテナガザルの仲間よりも類人猿のがヒトに近い。
4、近い生物にあたるなら、チンパンジーとボノボにすべき。
そして、その2種は近いにも関わらずそれぞれの社会性がかなり異なることにも注意すべき。
5、そもそもヒトの祖先が現在のニホンザルではないのに、そうであるかのようにしている。

サル目以外に、オオカミ・ハイエナ・ライオンなども社会性が強い哺乳類として挙げられますが、みな母となるメスが強いという特徴を持ちます。そのメスの強さをかなり舐めているように思えます。

_ (未記入) ― 2015/02/01 02:43

>弱いと考えられるオス猿と駆け落ちするのが1/3程度もいる

 ということは残りの2/3は強いオス猿のもとにいるということだね。 そもそも「駆け落ち」とは、まるで人間扱いですな。

>そもそもヒトの祖先が現在のニホンザルではないのに、そうであるかのようにしている

 ブログ記事はそのように書いていない。 単に「サル」と書かれている。

 強い雄は多くの雌を相手にすることができる、というのは、サルだけでなく動物一般に割と広く見られる現象では。

_ (未記入) ― 2015/02/01 08:31

>「サル」への認識が浅はか過ぎます。

 勝手に誤解して批判する典型例。
 こういう投稿は公開すべきではない。

_ (未記入) ― 2015/02/01 23:36

>ということは残りの2/3は強いオス猿のもとにいるということだね。

群れに残るのと、集団内でのケンカに強い雄の相手になってその子を産むのは別ですよ。そもそも

> メスは腕力の強いオスに性欲を掻き立てられるようで、
と、ここからして間違っています。多くの場合は協調的なオスがメスに好まれています。それにあぶれた、もしくはメス自身が強い場合は暴力的なオスでも相手にします。

>そもそも「駆け落ち」とは、まるで人間扱いですな。
オスメス一組が一緒になって、元の群れから出ていくものをそう表現しています。

>ブログ記事はそのように書いていない。 単に「サル」と書かれている。
その「サル」はどの種の「サル」なのでしょうね?例示しているものだとその群れのあり方からいってサル山のニホンザル、もしくは、チンパンジーか、じゃないですか?人類の祖先になった生物の生態は不明なのですから、まさかそれではありえませんし。

サル目に含まれている生物の生態は様々です。しかし、大多数は一夫一妻型の家族を形成し、夫が子育てに協力します。哺乳類の中では少数派とも言えますが、樹上生活に適応したゆえ、と考えられています。

_ (未記入) ― 2015/02/06 10:08

>大多数は一夫一妻型の家族を形成し、夫が子育てに協力します

 こういうサルが本当にいるのか? サルの多くは群れで生活するが、ハーレム型(雄は一匹)か多夫多妻(複数の雄雌)が普通。 雄は雌の子育てを手伝わないのが普通。

 セックスにしても、強い雄が多数の雌を独占する型もあれば、乱交型もあり、様々な型がある。

 ハーレム型では雄のボスサルの交代が起きる。 新たに登場したボスには、雌サルたちは次々と発情してセックスを求める。 

 人間はこのハーレム型のサルが先祖だろう。

_ (未記入) ― 2015/02/08 19:21

>> メスは腕力の強いオスに性欲を掻き立てられるようで、
と、ここからして間違っています。

 全然間違っていないじゃん

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