趙博さんの複雑な名前2019/11/02

 先に金時鐘さんが雑誌での対談で語ったご自分の名前について、疑問を提示しました。 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/10/26/9169120 この同じ対談のなかで、趙博さんもご自分の名前を語っておられます。

 趙博(チョウ・バク)さんはミュージシャンで、民族問題であちこち活躍されている方です。 彼は『抗路』6号で、ご自分の名前の複雑な過程を披露されました。 誤解のないように、その部分を全文紹介します。

己の記憶に出てくる自分の最初の名前は「あんどうしげはる」なんですよ。誰が何と言おうと「安藤茂治」なんだ。 その事情は中学生の頃に判明するんだけど、お袋が離婚した後、僕はおじいちゃん・おばあちゃんのところで育てられます。 爺さんの本名は権元淳、通名が安藤さん。 で、僕が生まれたときに届け出た名前が「趙博」だった。

一方、婆さんからは「お前の本当の名前は趙ヨンテやで」と何度も聞かされていたんです。ヨンテは「栄泰」かな、などと思ったりもしましたが、漢字はついぞ分からない。 ところが「ひろし」という名前が、離婚のときの名前だから縁起が悪いということで「しげはる」に勝手に変えられたらしいんです。 そして僕が四歳の時にお袋が再婚したんですが、「今日からお前は西山博(ひろし)やで」といわれた記憶が強烈に残っています。 親父の通名が「西山」で、登録上の名前「博」に戻ったわけです。

僕は産みの親爺に会ったこともなければ、顔も知らない。 なんでも、韓国海軍の将校クラスの軍人で朝鮮戦争のときに軍隊から逃亡して、密航で日本に来て西成に住んだらしい。 当時、他人の外登(外国人登録証明書)を金で買えたそうですね。 その人の名前が「趙」だった。 彼の本名は「池」なんだが、離婚しても子どもの姓は変わらない。 僕は「趙博」のままだから、お袋は再婚相手として関西中の趙さんを探し回ったちゅうんですよ(笑)。

僕はいま「趙博(チョウ・バク)」と自他共に名のっていますが、その確固たる根拠なんてどこにも存在しない、たまたまなんです。 (以上、『抗路』6号 2019年9月 15~16頁)

 ここで語られていることは、趙さんの実父は日本で外国人登録を不法入手して、他人である「趙」の名前で生活し「博」という子供を作った、それが自分だということです。 そしてその不正状態を清算することなく現在に至っていることになります。

 韓国籍だそうですが、韓国ではどのような戸籍(今は家族関係登録)なのでしょうか。 父親は「池」なのか「趙」なのか、それとも韓国での戸籍をまだ作っておられないのか。 

 本人は法律上の不正な身分関係を清算していないことに納得して生きて来られたようです。 しかし、そんなことをいつまでも続けていていいのか、家族・親族たちも納得しているのか等々、他人事ながら気になります。

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