植民地時代のエピソード(1)2019/11/09

 朝鮮を併合した日本は、植民地政府として「朝鮮総督府」を発足させます。 総督府は『朝鮮』という定期刊行物を発行して、植民地行政の方針・報告等々を行ないます。 行政文書ですから余り面白くないのですが、大正11年1月付けの『朝鮮83号』に、朝鮮総督秘書官 守屋栄夫の「朝鮮の開発と精神的教化の必要」と題する講演の内容が載っており、講演だからなのでしょうか比較的分かりやすいものです。

 そこに植民地行政を進めるに当たって見聞した、朝鮮人や日本人のエピソードが紹介されています。 当時の朝鮮社会を知るには、このようなエピソードも重要だろうと思い、紹介・引用するものです。 なお現代文に書き直しています。

 まずは李朝時代の話です。 なおここに出てくる「苛斂誅求」は今では読める人が少ないですねえ。

今では昔話となりましたが‥‥ 当時(併合以前)郡守あるいは観察使(道の長官)になる為の運動費に一千若しくは数千、最も多いのは数万というような金が要ったそうです。 そうして観察使、郡守に任ずるの辞令を受け取って宮中を退出すると、居並ぶ役人衆が「お前はまことに結構な役を仰せつかったそうな、おごれ、おごれ」という。言われた者も当然のことと考え「われ腴邑(経済的に豊かな村)を得たり。 まさに民膏(住民の富)を食わんとす(得ることができる)。 おごらないで、どうしましょうか。」と答えて金銭酒食を振りまく。こうした地方官がいよいよ任地について何を始めるかといえば、すなわち苛斂誅求である。自分の懐を増やすことだけである。(30~31頁)

 そういえば、李朝末期に朝鮮を旅行した英国人女性イザベラ・バードは朝鮮の役人たちを「吸血鬼」と呼びましたねえ。 ここに紹介するエピソードは、その「吸血鬼」の実態を示すものです。

ある郡守がその職を得るために莫大な金を使った結果、任についてから無闇に金を集め出したそうです。 朝鮮の民衆は‥‥かかる場合にも従順でありますが、あまりに誅求が甚だしかったものと見えまして遂に憤慨し、有志集合して郡守を捕らえ、郡境から追放しようとした。 いよいよ郡境に達して「もうあなたの厄介にならぬ。勝手に何処にでも行きなさい」と突き放した時に、郡守が一同に対して「それはお前たちも考え直した方がいいではないか。実は私が郡守になる時に運動費として数万の金を使ったので、やむを得ずお前たちから多額の税を取り立てたのである。

しかしお蔭でもう近頃は運動費も取り返したのであるから、これからは大いに仁政を敷くつもりであったのである。 お前たちが自分を追い出すのは勝手であるが、私の後にいかなる郡守を迎えると思うか。 新しく来る郡守もやはり運動費を使った人だから、自分と同様に苛斂誅求をやるに違いない。 私を追い出しても苛斂誅求が止まぬとすれば、返ってお前たちの不利になりはしないか。 むしろ仁政を敷こうとする自分を置いた方が得策であろう。 熟考してみるがいい」と言ったので、一同も理の当然に一言もなく、それならばどうぞと相変わらず郡守としてお留まりくださるようにとお願いして、郡守になっていてもらったということであります。(31~32頁)

 前述のイザベラ・バードは、苛斂誅求する郡守様を村人が追い払うだけでなく、殺すこともあったと記しています。 当時の朝鮮で有名になった事件では「郡主の側近を薪の上に乗せて焼き殺した」というのがあったそうです。 ところで郡守になるのに多額のお金(賄賂)が必要で、郡主となった両班はそれを取り返すために任地で苛斂誅求するというのは、前述のように事実ですね。

軍籍に壮年者を登録すれば、その軍人の衣服調度等を整えるに必要な費用を一般から取り立てることが出来たのであります。 しかるに芦田という所の実例によると、子供が生まれて三日も経たぬ者を軍籍に入れて税を課し、しかも子供の親の耕作用の牛を(税の担保に)連れて帰ったのであります。牛を取られては百姓の仕事ができないという絶望に陥ったのでありましょう、これがあるためにかくの如き凌辱を受けるのだと言って、一刀のもとに陽茎(ペニス)を切り落としたのであります。 そこでその妻女がその一物を郡庁に持参してその事情を訴えた。 膏血淋漓(こうけつりんり-血がしたたるさま)を見る者、みな顔をそむけたということであります。(32頁)

   子供のペニスを切り取るなんて本当かなと思いますが、李朝時代ならあり得たかも知れません。 なお生まれたばかりの子供を軍籍に入れて、その費用を出させるというのは事実だったろうと思われます。

【拙稿参照】

朝鮮に封建時代はなかった        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/11/23/7919936

『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』(4) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/03/26/7254093

『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』(5) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/03/29/7261186

『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』(8) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/04/09/7270572

『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』(9)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/04/14/7274402

朝鮮に封建時代はなかった        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/11/23/7919936

福田徳三について         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/04/03/9054853

李氏朝鮮時代の社会        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/10/14/560250

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