保険未加入外国人の治療費―東京新聞2023/01/07

 東京新聞2023年1月5日付けに「『日本人なら生きられたはず』困窮外国人にのしかかる高額医療費 保険未加入で法外な治療費も」と題する記事がありました。   https://www.tokyo-np.co.jp/article/223503

 在留資格がないなどの事情を抱える外国人は健康保険に加入できず、「法外な治療費」を請求されるというものです。 この記事を読みながら、色々と疑問が湧きます。 最初にミャンマー人の話が出てきます。

先月上旬。東京都内の公園で暮らすミャンマー国籍の40代男性を見つけると、大沢優真さん(30)が駆け寄り、体調を気遣った。

男性は8年前に来日。仕事を失って2年前にシェルターに入ったが、半年ほどで野外生活に移った。ミャンマーで反政府デモに参加していて、昨年のクーデターにより帰国は絶望的。在留資格は更新しているが、笑顔と裏腹に生活は厳しい。特に体調を崩すと、深刻な状況に陥りかねない。

日本人の場合、健康保険に加入していれば、医療費の自己負担は一部で済む。もっとも、滞納や退職後の加入忘れなどの事情があれば、全額負担となる。ところが、男性のように保険未加入の外国人は、全額負担を超える費用を求められることがある。

 8年前に来日し、1年半前から野外生活しながら「在留資格を更新している」とあります。 どのような在留資格か書かれていませんが、住所のないホームレスが在留資格をどのように更新してきたのか、まず抱く疑問です。 そして在留資格があれば健康保険に加入することができると思うのですが、加入しなかった理由も書かれていないことに疑問が湧きます。

 また「反政府デモに参加していて、昨年のクーデターにより帰国は絶望的」が事実なら、そんな思想的なことよりも命と健康の方が大事でしょう。 表面的でもいいから現政府に従順な姿勢を見せて帰国するのがいいと思うのですが、それをしない理由が分からないところです。 そもそもミャンマー政府がその人を反政府活動家として把握しているのかどうかが疑問です。 活動家であるなら、ホームレスなんかしないと思うのですがねえ。 「反政府デモに参加」は無理矢理こじつけているとしか思えないのですが、どうなのでしょうか。

 次に健康保険に未加入の外国人は全額負担どころか2倍の治療費を請求されるとあります。

在留資格のない外国人が心疾患で「手術しないと命を落とす可能性がある」と診断された。費用を150万円と見込み、支援グループでとりあえず100万円を工面。ところが「うちは外国人は2倍」と300万円を要求されたという。「差別ではないか」と掛け合ったが「ルールだから」とにべもない対応。

 記事の見出しではこれを「法外」としています。 なぜ「法外」なのか、私には理解できないところです。 保険未加入の外国人が病院で治療を受けた場合、その治療費を払わない事例が少なくないという事情があります。 そしてその人が日本から出国すれば、支払い請求は不可能となります。 また病院側が保険未加入の外国人に2倍の治療費を請求しても、再診等の際に精算するのですから「法外」とは言えないと思うのですが。

 国公立病院の場合は知りませんが、私立病院の場合、外国人でなくても保険に入っているかどうか確認できない患者さんに全額負担の二倍程度の治療費を請求するのは、よくあることのようです。  私の経験では、交通事故にあって救急車で病院に運ばれた時、治療が終わってから約10万円を請求されました。 明細を見ると200%、つまり二倍の金額でした。 その時に保険未加入者は二倍、というルールを知ったわけです。 なおその時はクレジットを使い、後日に保険証を持って行って清算されました。 もしこれが不法滞在・仮放免の外国人なら、保険に入っていないしクレジットカードもないだろうから、大変だろうなあと思ったものでした。

大沢さんは、在留資格の有無にかかわらず、外国人がさらされる命の危機への対策として、まずは医療費の負担軽減を挙げる。さらに、一部の在留資格に限られている生活保護の受給を、広く受けられるようにするのも重要とみる。

 ここは大いに異議のあるところです。 「医療費の負担軽減」と言っていますが、医療にかかる費用そのものを減らすわけにはいかないでしょう。 また保険に入っていないのなら、保険からその費用を出すこともできません。 とすると「負担軽減」という主張は、その分の医療費をいったい誰が負担すべきだといっているのか、ということです。 前後の文脈からして、これは公費つまり税金で負担せよと主張しているようです。 しかし、これはどだい無理な話です。 

 冒頭のミャンマー人の場合、保険に加入せずに治療費に困り「命の危機にさらされている」のであれば、まずは在日ミャンマー人同胞たちが立ち上がらなければならないと思うのですが、記事を読む限りそれはないようです。

 東京新聞の記事は短くて不分明な部分が多いのですが、私には疑問点ばかり出てきていると感じました。 この記事を掲載した東京新聞の加藤益丈記者は、こういった治療費に困っている外国人のためにどれほどのお金を拠出しているのだろうか、まさか記事を出して終わりじゃないでしょうね、新聞記者といえば年収1000万円をはるかに越える人ばっかりなのだが‥‥、という疑問も抱きます。

【拙稿参照】

不法残留外国人について    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/05/11/9376331

不法残留外国人について(2) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/05/17/9378363

かつての入管法の思い出    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/10/17/9306547

昔も今も変わらない不法滞在者の子弟の処遇  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/21/9226536

8歳の子が永住権を取り消された事件 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/12/01/9322206

移民の犯罪率は高いのか    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/06/23/9390661

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック