韓国語の雑学―남부여대(男負女戴)2023/11/14

 韓国の雑誌を読んでいたら「남부여대」という言葉が出てきました。 初めて見る単語で、何だろうと思って調べてみると、漢字で「男負女戴」と書きます。 日本語にはなく、中国語にもないようなので、韓国語だけで使われる四字熟語(사자성어)と思われます。

 http://www.jejupress.co.kr/news/articleView.html?idxno=84557 に少し詳しく説明されているので、訳してみました。

男は背に負い、女は頭に荷物を載せる。 貧しい人や災難に遭った人たちが生きる場所を求めて、あちこちを流浪することを指す漢字熟語。

ここで「負」は荷物を背中に負うという意味で、「載」は荷物を頭に載せるという意味である。 十分に暮らすことのできる所がなくで、あらゆる苦労をなめながら居場所をあちこちに探して痛ましいくらいに流浪する姿を、背に負い頭に載せると比喩して表現した言葉である。 「男負女戴の避難民の行列が果てしなく続いていた」「虐政に耐えられなかった百姓たちが男負女戴しながら慣れ親しんだ故郷を離れた」などが使用例である。

男負女戴より意味が弱いが、〝朝には北方の秦国で、夕方には南方の楚国で暮らす"という意味の「朝秦暮楚」も似た言葉だ。 その他に〝風に吹かれながら食べ、露に濡れながら寝る"という意味で、流浪して苦労するということを比喩した「風餐露宿」も、貧しく苦しみながら暮らすという点で「男負女載」と通じる。

 70年前の朝鮮戦争の報道写真で多数の避難民が南に逃れる姿がありましたが、まさに「男負女載」ですねえ。 男負女載はこれをイメージすればいいのでしょう。 なおこの時の写真には若い男性はおらず、年寄りが荷物や子供(孫)を背負い女性が頭に荷物を載せて避難する姿です。 男は戦争に駆りだされて、残された父母と嫁が子供を連れて避難しているものと思われます。

 なお上述したように「男負女載」に相当する日本語はありません。 強いて言うなら昔の演歌にある村田秀雄の「夫婦春秋」ですかねえ。 ただし「夫婦春秋」は平時における家族の苦労がテーマですから、有事に避難する「男負女載」とはちょっと違いますねえ。

【拙稿参照】

韓国語の雑学―전산이기(電算移記) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/06/17/9594956

韓国語の雑学―賻儀  https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/11/26/9543701

韓国語の雑学―将棋倒し http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/04/15/9235466

韓国語の雑学―下剋上  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/04/22/9237987

韓国語の雑学―「クジラを捕る」は包茎手術の意 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/12/10/9325273

韓国語の雑学―내로남불(ネロナムブル) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/01/04/9334079

韓国語の雑学―東方礼儀の国    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/06/17/9388692

韓国語の雑学―동족방뇨(凍足放尿) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/09/02/9418323

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック