赤松啓介の夜這い論 ― 2008/02/02
故赤松啓介氏は民俗学・考古学者。戦前からの共産党員で、非転向を貫きました。 この方の自宅を訪ねて、お話を聞かせてもらったのが1970年代のことでした。戦前の特高の拷問の後遺症で耳はちょっと遠く、手の爪のいくつかは変形していました。 そのころには高齢のために離党しておられて、そのために自由な発言を始めておられました。
日本では夜這いの風習は昭和になって無くなっていくのですが、彼はその最後の体験世代です。その話を語った著作が有名です。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E6%9D%BE%E5%95%93%E4%BB%8B
お会いしたときも、その話をお聞きしました。そのなかで特に印象的だったものが次です。
「ええか。勘違いしたらアカンで。夜這いゆうのは、村が貧しいからあるんや。貧しいから夜這いの風習があるんや。 村が豊かになってみい。近くに淫売屋ができる。そこは商売でやるんや。お客を喜ばせようと、いろんな工夫をするやろ。 けど夜這いやったら、ただ横になっているだけや。 村の男たちは、夜這いより淫売屋の方が面白うなって、そっちに行くようになる。それで夜這いをせんようになっていったんや。」
夜這い風習の衰退原因が経済的な発展であるという説は、体験に基づくだけに説得力があり、新鮮でした。
ところで朝鮮ではどうなんでしょうか。両班階級は性倫理が厳格でしたが、常民階級はそうではなかったはずです。しかし、なかなか記録が見当たりません。