「石落し」は石を落とすものではない2010/11/13

今回はこれまでとは違って、歴史の雑学です。

 城跡を巡っていると、時々おかしな説明が書かれていることがあります。その一つが「石落し」です。ネットで調べてみると、やはり同様に間違いの説明がされています。

http://www.geocities.jp/mtmt1952/rekisi/rekisi-matumotojyou/rekisi-b-mj-isiotosi.htm   http://www.himeji-castle.gr.jp/JAPANESE/isiotosi.html     何が間違いかというと、「石垣をよじ登ってくる敵に対して石を落として撃退する」 とあるところです。

 ある復元天守閣では、石落しの口の横に、子供の人頭大の石を積み上げて、これを落とす施設のように説明してあって、ビックリ。

 こんな石を落して、果たして敵を撃退できるのでしょうか?真下にいる敵には少しは打撃にはなるかも知れませんが、ちょっと外れたところにいる敵には何の打撃にもなりません。

 実は「石落し」というのは、弓矢や鉄砲を射かけるためのものです。城の壁面によくある「矢狭間」や「鉄砲狭間」も矢や鉄砲を射かけるものですが、こちらは水平方向。そして垂直方向に射かけるものが石落しなのです。

 石落しの口からは、下にある石垣の面がほぼすべて見えますので、敵は石垣をよじ登ろうとしても、石落しから射かけられる矢や鉄砲のために、困難なのです。もし石を落とすためのものであれば、真下にさえ居なければ、何も怖くありませんので、敵は石垣をよじ登ることができます。

 石落しは、名前には「石」がありますが、石とは何の関係もありません。

 このように、ものの名前には単なるイメージ的なことだけで、直接何の関係もない言葉が入ることがよくあります。

   もう一例をあげると「犬走り」があります。単に犬が走れるほどの小さな道というイメージ的なところから付けられたのでしょうが、これも実際の犬とは何の関係もありません。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8A%AC%E8%B5%B0%E3%82%8A

 ある博物館で、古代建築の模型のなかに、築地塀の犬走りに犬の人形が置かれているのがありましたが、これは愛敬というものでしょうかね。誤解されなければいいのですが。

コメント

_ ぽこたん ― 2011/09/09 12:37

この手の虚偽もしくは虚偽に近いもの(石落としの場合でいえば、たまには石とか熱湯、糞尿などを落としたこともあるかとも思えますが ご説明の通り基本的には矢などを射かける為の付属設備であったものと思えます)
は結構みかけますね。

知らないとついそうした虚偽の説明などに騙され、そのうち多くの人が時代が下るとともに その虚偽を真実みたいに考えるようになってしまうのは問題だと思えます。

話が少しずれますが、韓流ドラマなどで古い時代をあつかったものに民衆が色とりどりの服を身につけているなどをみると 嘘だぁ と言いたくなってしまいます。

白が主体なら分かるけれど こんなにきらびやかな色があったはずないじゃんと 思ったりします。 でも、ま フィクションだから仕方ないかとも思ったりもします。

しかし マトモな内容を伝えようという作品にそんなものがあふれていると 虫酸が走ったりしないわけではありません。

もっとも そうした傾向は映画にかぎっていえば日本映画でも洋画でもあることであり、なにもかも否定する気もしませんが一般の我々はつい騙されがちになりますね。

江戸時代の時代劇で 相手をよぶのに そなた という言い方がありますが その発音は音楽にあるソナタの発音とは異なり音は一本調子の平板な言い方が正しいのだそうで ソナタと発音されると厭になるといった内容を書いた映画評論家がいました。 

なるほどなと思いながら読んだ記憶があります。 あるとき田中絹代のでてくる作品をみていたら田中絹代ほどの大女優といわれた人でも ソナタと発音しており ほう
普通はそんなもんなんだろうと思ったことがありました。

監督がしらなかった? あるいは田中絹代だったので注意もできなかった?などと思ったりしますが すべてを当時そのままとは言わないけれど一寸したことにも時代考証があったなら もっと良い映画になったのになどとひそかに思ったりもします。

道端でゆきあい 立ち姿で双方が挨拶するのに 膝をのばしたまま頭を下げて挨拶する姿を時代劇映画ではよく見かけますが 本当は多少膝を屈して挨拶すべき姿勢であろうと思ったりします(幕末に日本に来た西洋人が膝を多少曲げて挨拶をしている姿に奇異感をもったのでしょう、特に注目してそのことを書いています)。

ローマ兵のでてくる映像で そろいもそろって赤いマントなんか翻して騎馬兵が走ってゆくなんて姿は当時ありえず せいぜい指揮官がまとえる程度であり 部下全員が赤マントなんてことはあり得ないなどという話を読んだこともありますが そうしたフィクションが場合によって真実になってしまうというのは恐ろしいことでもあることでしょう。

_ 緑 ― 2012/04/03 10:05

http://www.k3.dion.ne.jp/~tnk/10jiten/isiotosi/isiotosi.html
石落しを中から見ると、結構窮屈な感じですね。
弓を下に向けて射るとしたら、弓と壁が平行になるような角度にしなければ、壁にぶつかってしまうと思います。
日本の弓は木の材質の問題で大陸のものより長くしないと威力が弱いため、人の身長くらいのものが一般的ですし。
(余談ですが、東夷という語の夷という文字の成り立ちは、「大」と「弓」の字を合わせたものだそうで、もしかすると日本の弓が大きいのと関係あるのかなと考えています)
もしかすると、鉄砲普及前の石落しは弓に対応して大きく、鉄砲普及後は小さいといった傾向があるんでしょうか。

あと、思いつきなのですが、石落しは石を落とすという意味ではなく、「石垣から落とす」という意味だと解釈すれば、ちゃんと意味が通ると思います。

>韓流ドラマなどで古い時代をあつかったものに民衆が色とりどりの服を身につけているなどをみると 嘘だぁ と言いたくなってしまいます。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm17188105
これは朝鮮戦争前夜の記録映像ですが、10分以降の映像で、特に北朝鮮の女性の服の色がほとんど白なのが分かります。
(ユーザー登録してない場合でも、「外部プレーヤー」というサイトにアドレスを入力すれば視聴できます)
韓国はどうだったのかが気になりますが、現在の北朝鮮のプロモーションビデオではみんなカラフルな服を着ていることから、社会主義だから質素というわけでもなく、単に貧しい時代だったという可能性もありますね。
戦前の朝鮮のカラー写真があれば比較できるのですが。

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