35年前における日韓の認識差(4)2017/12/08

 韓国のジャーナリストたちが書いたこの日本訪問記は、ソウル在住の日本人にどう受け止められたか。 朝日の小林記者は次のように報告しています。

ある金融関係者は「甘えが目立ちすぎる」と指摘した。 技術移転にしろ貿易逆調是正問題にしろ、日本側の説明は筋が通っている。 それを批判する側の、反論の根拠がはっきりしていない。 例えば、「米国に同じような要求」をつきつけ得るのかどうか。 日本だから、理不尽な言いがかりをつけている、という印象である。

ある商社員は「技術協力にしろ、現場の人たちは、日本企業が欧米系と比較し、いかに親切に仕事をしているか十分知っている。 今度の記者団は、そのへんの現実を知らずに日本批判をしている」といい、「戦後の日本は乏しい外貨を割いて、不完全な技術を買い、血のにじむような努力で開発をしてきた。韓国も同じ努力をしなければ真の発展はない」と主張した。

なかには「対日批判がなければ韓国の新聞は売れないからね」といった皮肉な見解もあった。

 真っ当というか常識的な反応と思うのですが、韓国人には受け入れられないでしょう。 それは、韓国人は日本との関係について特殊性を持っていると考えているからです。 小林記者は次のように論じます。

日韓間の認識の差は、相手の経済力の評価の違い、歴史的な過去などのさまざまな要素がからんでいる。 しかし、結論的に言えば、最大の“差”は‥‥日本が基本的には韓国を「地理的に近い隣国」としか考えていないのに対し、韓国側が「日本は韓国を特別な国として扱うのが当然だ」と認識している点にある。 だから日本の主張する競争原理や経済原則は韓国国民には説得力を持ち難い。 その認識の根底には、世代によって異なるが、日帝36年支配があり、防共とりで論がある。 もっとさかのぼれば、豊臣秀吉の朝鮮出兵があり、現在残っている問題では在日韓国人の法的地位の問題もある。 この特別な感情がときによっては排日感情へ爆発する。

 要するに日韓の認識差は、日本にとって韓国は数ある国家のうちの一つで、たまたま隣に位置している国であるという認識ですから、韓国に対しては他の外国と同様に対等な立場で協力せねばならないとなります。 一方韓国にとって日本は、古くは学問や文化を教えてあげたのに我が国を侵略し植民地化した忘恩背徳の国だ、そして現在は共産主義と対決している我が韓国は日本を守っているのだ(防共とりで論)、その特殊性を考えれば裕福な日本が貧乏で困っている韓国を助けるのが当たり前だ、となります。 他の外国と同じにするな、ということです。

 冒頭の小林記者の記事の題名が「韓国と日本―『貧しい武士』と『金持ちの商人』」となっているのは、ここから来ています。 極端な例えをすると、高潔で貧乏な上流階級の武士に、身分が低くても働いてお金儲けをした商人が土下座しつつすり寄って貢ぎ物を差し上げる姿を想像すればいいでしょう。 記者はそこまでは書いていませんが、韓国は日本との関係についてこうなってほしいと夢見ているのです。 

 この記事に出てくる日韓の認識差は35年も前の1980年代のことです。 国が違えば認識差が出てくるのは当然なのですが、日韓関係では韓国側が日本側の認識を改めさせて自分の方に引き寄せようとする力が強いです。 そして日本側は韓国側のこの認識を理解できないで当惑するのみですから、認識差が対立・摩擦となります。 この傾向は今でも根強く続いています。

 ところで今年は韓国から日本への旅行客が年間600万人を超えるだろうと言われています。 韓国国民の8人に一人の割合ですから、8年経てば韓国国民全員が日本旅行を体験する計算になります。 この流れが定着すれば、韓国が日本との認識差を容認する方向に行くかも知れません。 あるいは逆に相手を知る程に認識差が許せないとなるかも知れません。 今後どうなるか分かりませんが、日韓の認識差を互いに認め合って、対立・摩擦が減少していってほしいですね。

 なお『朝日ジャーナル』は天下に名立たる左翼・革新雑誌でしたが、小林記者のこの記事は日韓の認識差を比較的客観的に見ようとしています。 この記事を読み返してみて、35年後の今ならばこのように解説できるのではないかというのが、今回の拙論です。 

35年前における日韓の認識差(1)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/11/20/8731033

35年前における日韓の認識差(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/11/26/8734592

35年前における日韓の認識差(3)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/12/02/8738535

コメント

_ ボルグ ― 2017/12/08 12:24

こうした長い歴史というか習慣を
改めさせるのは大変でしょうね。
そうした前提ありきで、かの国のシステムが
成り立っているわけだから。

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