韓国人の名前 行列字2007/06/30

 行列字について知らない人もおられるようです。  宮嶋博司著『両班』(中公新書1995)の45頁に次のように説明されています。

「朝鮮では中国と同様に、同じ同族集団属する男子たちは、世代ごとに共通する文字を用いて名前がつけられた。こういう文字のことを中国では輩行字というが、朝鮮では行列字という。」

 正確にいうと、行列字とは族譜上の名前であって、戸籍上の名前ではありません。  周知のように族譜では男子のみの名前が記載され、女子の名前は記載されません。近頃は女性も名前を記すものが出てきたようですが。  行列字は男子のみというのが本来のものです。

 鄭さんの場合、親が彼女の出生届を出すときに、兄弟の行列字を利用したということでしょうか。  元々は男子のみに行列字があったわけですが、今は違うようです。それどころか族譜ではハングル名が出てきて、女子の名前も記載される時代になってきたと聞きます。  女性にも行列字をつける例はあるようですね。

 韓国では女子に「男」の漢字を入れた名前を付ける例は多いようです。男が生まれてほしかったのでそういう名前を付けたという話はおそらくその通りでしょう。私も聞いたことがあります。  こういう方が来日した場合、名前で誤解されやすいので「南」と変えるということでした。

コメント

_ マイマイ ― 2010/02/13 11:17

  韓国の戸籍のことは詳しくないのですが、身近なところで検証してみます。
  祖父と親の世代に関しては族譜上と戸籍上の名前は一致しています。その下の世代の男系男子は合わせて3人しかいません。一人は通名としての日本名と行列字を使った戸籍名を持っていましたが、日本名で帰化したので、韓国の戸籍名は族譜上にだけ残ります。もう一人は韓国人で、行列字を使った名前が戸籍上の名前です。最後の一人も韓国人で戸籍名は祖父が特別につけた名前で、行列字は使っていません。族譜にも戸籍名がそのまま記載されていますが、男系男子のみの名前で連なる家系図には戸籍名の一字を行列字に変えて記載されています。よって3人は行列字を使った名前で並んでいます。ページをめくると、日本でいえば他人の世界ですが、行列字を使っていない名前もけっこうあります。
  一方で男兄弟の行列字を使った女子の名前も珍しいですが、あります。また「美男」という名前の女子が2人いて、数年後に初めての男兄弟が生まれています。
  ハングル名の女子も5,6人探せます。みな1980年代生まれです。1990年ごろ韓国人女性から、女子に漢字を使わず、美しい音の響きを持つハングル名をつけることが流行っていると聞いたことがあります。例として「露」を意味する「イスル」という名前を教えてもらいました。「愛」を意味する「サラン」という名前を娘につけた人を知っています。
  女子の名前に関しては、「子」がつく名前が少なくありません。解放後に生まれた人は在日で、それ以前に生まれた人は、親が日本の女子の名前のつけ方の影響を受けたと考えています。 韓国にいる叔母たちはみな戦前の日本生まれで、「子」がついています。戦前の朝鮮半島生まれでも「子」がついた名前の人を知っています。
  男子のいない家は、形式上の親族からの養子縁組をしてまで、世代を繋いでいくことは現代もするのでしょうか? 少子化の影響も族譜に変化をもたらしているような気がします。
  私は族譜は織機で紡がれる織り物と重ねるとしっくり来るように思います。儒教文化の伝統という縦糸に一族として連なる個人名が横糸となって織り込まれる。金糸や銀糸もそして見慣れぬ糸もある。模様の乱れやとぎれはさほど気にならず、新しい模様も取り込んでいき、全体的に調和の取れたものになるよう紡いでいく。族譜の編集はそんな営みのように海を隔てた外野にいるものは思えます。

_ 辻本 ― 2010/02/14 21:10

>男子のいない家は、形式上の親族からの養子縁組をしてまで、世代を繋いでいくことは現代もするのでしょうか? 少子化の影響も族譜に変化をもたらしているような気がします。>

 そのあたりの情報はないですが、日本以上に少子化が進んでいる韓国ですので、伝統的家族観は崩れつつあるだろうとは予想できます。

>私は族譜は織機で紡がれる織り物と重ねるとしっくり来るように思います。儒教文化の伝統という縦糸に一族として連なる個人名が横糸となって織り込まれる。金糸や銀糸もそして見慣れぬ糸もある。模様の乱れやとぎれはさほど気にならず、新しい模様も取り込んでいき、全体的に調和の取れたものになるよう紡いでいく。族譜の編集はそんな営みのように海を隔てた外野にいるものは思えます。 >

 これはなかなか上手い表現ですね。族譜をこのように解説されると、分かりやすいですね。参考になりました。

_ 帰化申請・韓国戸籍 ― 2011/06/21 20:49

韓国の戸籍には興味があるのですが、「名前」についてはいままで深く考える機会がありませんでしたが・・・。

>私は族譜は織機で紡がれる織り物と重ねるとしっくり来るように思います。儒教文化の伝統という縦糸に一族として連なる個人名が横糸となって織り込まれる。金糸や銀糸もそして見慣れぬ糸もある。模様の乱れやとぎれはさほど気にならず、新しい模様も取り込んでいき、全体的に調和の取れたものになるよう紡いでいく。族譜の編集はそんな営みのように海を隔てた外野にいるものは思えます。 >

すごいたとえです。納得のいく、秀逸な表現だと思います。

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