木村教授が朝鮮日報に投稿2017/09/21

 韓国政治史研究の木村幹教授(神戸大学)が、韓国の有力紙『朝鮮日報』に9月20日付で投稿されています。 日本の研究者の論考が韓国の新聞に載るのは珍しいですね。 http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2017/09/19/2017091903210.html

 韓国語への翻訳は自分でされたのでしょうかねえ。 それとも直接韓国語で書かれたのでしょうか。 かなり達者です。 日本語ネイティブの韓国語ですから読みやすいです。

 この論考には私が新鮮に感じた考察があります。 その部分を訳してみます。

さらに根本的な問題は、韓・米・日の間の認識格差が生じて、政策が分裂している点である。 日本にとって北朝鮮の脅威は「当面する問題」だから、政府も世論も迅速な対処を求める。 反面アメリカは「将来の脅威」と考えてICBMの完成を抑制できるなら、それで十分なのである。 韓国にとっては北朝鮮の脅威は70年間続いてきた「日常」なので、北朝鮮の脅威それ自体よりは北朝鮮問題で朝鮮半島に危機感が高まることを恐れている。

そのような韓国が、米日には緊迫感がないように見えやすい。 北朝鮮のミサイルに怒る日本人には韓国の対北対話政策は、現状を放置するか悪化させる行動と映るのだ。 「朝鮮半島統一の主導権は韓国にある」という韓・米共同声明は、アメリカ政府が韓国政府を認め信頼しているという表明であると同時に、「アメリカが最終責任を取らない」という意味である。 韓国が強く主張すればするほどに、アメリカでは「我々は関与するまい」という声が大きくなる。

最悪のシナリオは「韓国の孤立」である。 対北強硬策を求める日本と対立し、アメリカでも「この際に駐韓米軍を再配置しよう」という声が高まる状況だ。 危機を実感している日本でさえ、朝鮮半島の有事の際に北朝鮮の脅威に直接さらされることはない。 日本が朝鮮半島問題に関与しないならば、北朝鮮が攻撃する可能性は低くなる。 政治家たちが適当に強硬発言をしながら、実際は責任を他国に回しておけばいいのだ。

事態がそのように流れていくなか、米・日から出てくる主張は「韓国の言う通りにしておけ」である。 今の構図では、韓国政府が主導権を主張すればするほど、韓国はさらに孤立する。 アメリカ大統領選の時、トランプが「韓・日はアメリカに期待するな」と言った局面で韓国が自らの核武装を主張することは、アメリカに朝鮮半島から手を引く機会を与える憂慮がある。 そうなれば韓国は北朝鮮と巨大な中国の前で、一人残ることになる。

韓国政府が苦労しなければならないことは、韓国の対北主導権を主張することではなく、どんな形であれ、米・日に具体的な役割を分担するように協力を求め、朝鮮半島問題から手を引くことが出来ないようにすることだ。 他国にとって朝鮮半島は「外国」でしかない。 自国の利益にならないなら、いつでも手を引くことが出来る。 北朝鮮が核開発を止めないことは明らかで、これを防ぐ解決方法は見えないのであるから、全ての国が「どのようにしたらこの問題から逃げられるか」と考えているところである。 彼らの耳に「韓国が主導権を持とう」という言葉がどのように聞こえるか、考えてみなければならない。

 朝鮮半島の歴史は、周辺の大国に翻弄されてきた歴史と言ってもいいぐらいです。 高麗時代はモンゴル・元に、李朝時代は明・清に翻弄され、近代になっても日本・中国・ロシア・アメリカに翻弄されました。 そのためか、韓国人には祖国の問題は自分で解決したいと「主導権」を主張することに心が引かれるようです。 しかしこの主張が、今の段階では孤立を招くということですね。

 なお木村幹さんについては、拙ブログで一度触れたことがあります。 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/05/19/7636889

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