在日総合誌『抗路』に出てくる「北鮮」 ― 2021/01/16
コロナのためにちょっと外出が難しくなったというか、億劫になっていました。 先日久しぶりに遠出して本屋に立ち寄り、在日総合誌の『抗路7』(2020年7月)を購入。 在日の雑誌でまとまったもので書店に売っているものは、昔は『青丘』や『ほるもん文化』なんかがありましたが、今はこれだけですねえ。
これを読んでいて一番驚いたのは、凛七星の短歌があるのですが、そのなかに「北鮮」が出ていたことです。 「凛」はペンネームでないなら、本当に珍しい稀姓ですね。 106頁にあるこの短歌は、次の通りです。
韓国でも北鮮でもなく吾は朝鮮人で過去の残骸
念のためにそのページをスキャンして掲載しました↑。 「北鮮」部分には赤の横線を引きました。
かつて、「北鮮」「南鮮」「鮮人」など朝鮮の略称として「鮮」を使うことは民族差別だとして厳しく指弾されました。 民族差別と闘う団体らは、この差別語を使った新聞社や出版社、放送局等々に対して、厳しい糾弾闘争が行なったものでした。 こんな歴史を知る私としては、在日の雑誌に「北鮮」が出てきたことに驚いたのです。
時代が変わって「北鮮」はもはや差別語でなくなったのか、あるいは韓国・朝鮮人なら「北鮮」を使って構わないと考えるようになったのか、それとも雑誌『抗路』の編集者が能天気だったのか。 そのあたりの事情は分かりません。
今回は短歌で出てきた「北鮮」です。 ところで40年ほど前に「北鮮」を使ったとして糾弾された短歌がありますので、紹介します。
朝日歌壇1982年10月31日
崔青学という名で届く北鮮に 帰化せし姉のふみ懐かしむ (東久留米 小島範浩)
朝日歌壇1982年11月28日
国敗れ北鮮に奉仕の稲刈りに 出されし白飯のうまかりしかな (長崎 高岡李子)
「在日韓国・朝鮮人生徒の教育を考える会」という団体が、これを掲載した朝日新聞に「『北鮮』なる用語は‥‥日本帝国主義の朝鮮に対する植民地支配の下で意図的につくりあげられた差別語」「このようなことばを平然として使用して恥じない現実の背後には、植民地支配とひきつづく民族差別に対する無自覚と無責任が蟠踞」だとして厳しく抗議しました。
朝日は「北鮮」という言葉を使ったことが間違いだったとして、この短歌を削除しました。 こんな事件があったのが40年ほど前。 そして今は在日の雑誌に「北鮮」を使った短歌が掲載されているのです。
【拙稿参照】
第24題「差別語」考 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/dainijuuyondai
在中韓国人は「新鮮族」 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/06/07/3565930
朝日の<おことわり>の間違い http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/29/1827082
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