韓国の伝播論と日本の由来論2006/04/26

 韓国人の歴史の関心の対象は、わが民族の文化が日本にどのように伝播したか、である。来日する観光者だけでなく研究者も、この観点でやってくる。日本各地で、ここにも韓国文化がある、あそこでもわが先祖が活躍した、といった歴史を確認しようとする。極端な場合は、日本の文化はすべて朝鮮からのものであるとまで言う人もいる。

 一方日本人の主な関心は、わが文化の由来は何か、どこからの影響があったのか、というところである。様々なところからの影響があってより高い文化が成立していくと考える。その由来場所の一つが朝鮮半島である。それはいくつかあるうちの一つである。

 日本人なら、韓国の文化は中国からも日本からも影響があったはずだから、彼らも自分の文化の由来を我々と同じように関心があるはずだ、と考えるだろうが、実際にそういうことはない。韓国人は自分の文化の由来にほとんど関心を持たない。関心があるのは、自分たちの優秀な文化がいかに広まったかの伝播論である。

 韓国の伝播論と日本の由来論とは妙に一致するところとなるが、両者の歴史認識の根本は全く違うものである。 日本と韓国の歴史認識の一致は極めて困難である。

コメント

_ さぬきうどん ― 2006/04/28 02:50

はじめまして。失礼します。
韓国の伝播論と日本の由来論、ずーっと同じ構図で対立、こじれますね。「歴史認識」。一致。ありえませんね。
一方的に辻本さんたちの蓄積を学ぶ立場ですがよろしくお願いいたします。

_ silkroad_desert9291 ― 2008/06/19 18:33

はじめまして。トラックバックできなかったので、コメントにします。
http://blogs.yahoo.co.jp/silkroad_desert9291/43619077.html

_ マイマイ ― 2010/05/15 10:18

  日本においては戦後の「傾向」ということで同意できます。「韓国はかつて自国文化を日本から抑圧された経験がある」という歴史をどう考慮するかで、受け止め方が変わってくるように思います。
  個人的な経験から導いた理由を3点書きます。
  1つは極端にくずれた天秤のバランスを修整したいという意思が伺えます。
  明治維新を経て「近代化」という物差しを得た日本から、社会的に「停滞」しているとされた時代の記憶があるので、文化的に優劣がないと見える古代の伝播論にどうしても力が入るのではないでしょうか。その行為は私には韓国が錘を載せていると見えます。近代の入り口で、個人の資質は別として、国としては差があったことを認めているということです。私もそう認める立場です。
  1970年前後、小学校の高学年か中学校での「仏教の伝来」を学習する授業中だったと思います。教師が黒板に書いた地図の上を、チョークで中国、朝鮮半島と指して日本に伝わったと「へ」の字を書くように矢印を導いて教えてくれたような記憶があります。<いくつかるあるうちの一つ>をあえて強調していると感じられるほど、朝鮮半島の負の時代がぼんやりとわかる年齢です。戦後教育を担った教師の善意や教育界全体での合意を私は感じています。天秤から自らの錘を1つ除こうとした行為に思えます。
  研究者による出版物や話しを聞く機会を通して、日本各地の仏教遺跡や渡来人のなごりに朝鮮半島の影響が色濃く残っていることを知ったものです。研究者たちが天秤に錘を載せていた行為に思えます。
  高校の歴史担当教師は、朝鮮語を学習し朝鮮半島の歴史研究をライフワークにされた人でした。自らの錘を1つはずし、相手側に錘を1つ載せてくれた人だったように感じます。
  残念ながら日本から朝鮮半島に文化的な影響を与えたという話しと接する機会はなかったのですが、それで日本文化への見方が変わるということはありませんでした。
  2つ目の理由は、謙譲語の存在がなんらかの影響を与えているように感じます。
  韓国人留学生から、「○○させていただきます」という表現が使えないという悩みを聞いたことがあります。儒教文化の国ですから「敬語」「丁寧語」「尊敬語」は日本と同じように多いのですが、どうやら謙譲語は少ないようです。
  謙虚に自らを語る「拙文」「愚妻」「愚息」「弊社」、こんな表現が韓国語にあるのかなと思います。自分の親や祖父のことを他人に語る際、韓国語は敬語で表現します。
  日本語は相手を立てて自らの立場は「引く」傾向があるように感じます。日本人の美徳で、由来論に傾くメンタリティーに関係があるように思えます。
  3つ目は一昔前の韓国人の対中国人観があまりいいものではなかったからだと思います。ベトナムに関心を持っていた時期があります。朝鮮半島と似たような文化背景を持つベトナムでも、中国からの由来論を好んで語る傾向はないように思います。自国文化への誇りは高いです。宗主国はフランスなので、伝播論はありえません。
  で、中国大陸の沿岸部、朝鮮半島、日本列島だけが並ぶ地図を見ていては、前へ進めない感じがします。たとえばWikipediaの「漢字文化圏」で出てくる地図(現在の中国、台湾、ベトナム、北朝鮮、韓国、日本)を眺めて文化潮流に思いを馳せると、日韓の狭い間に風が通り、歴史認識の一致か不一致という論を吹き飛ばしてくれる可能性を感じます。
  日韓併合から100年たった今でも中国からの由来論に一切触れず、日本への極端な伝播論に執着する韓国人がいるならば、ちょっと首を傾げたくなります。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック