『現代韓国を学ぶ』(5) ― 2012/06/10
日本が「皇民化政策」として創氏改名を強要し、その際、「日本式」の「氏」を名乗るようにしたときの氏を日常生活で用いる名前(通名)として使っているひとが、その(在日)の大部分である。(310~311頁)
在日の通名は1940年に施行された創氏改名に起源があると論じられています。これも在日の歴史では決まり文句のように出てくるものです。これが正しいのかどうか、ちょっと調べてみます。
金英達さんの著作の一つ『創氏改名の研究』(未来社 1997年2月)の30頁にある、「表2 居住地域別の‘氏設定届’件数」の表によれば、日本式の名前に設定すると届け出た割合は、「鮮内」では76.4%、「内地」では14.2%です。従って、朝鮮内では80%近く、日本本国内では15%近くが、日本式の名前になったということです。
逆に届け出なかった人は、‘法定創氏’となって、金や朴などの先祖伝来の戸主の朝鮮名がそのまま創氏されます。つまり、朝鮮では20%以上、日本内では85%以上が、朝鮮名のままであったということです。
つまり当時日本で生活を営んだ朝鮮人の85%は、創氏改名に基づいて日本式の名前を届け出ず、朝鮮名のまま創氏したのです。朝鮮内とは状況がかなり違っているのです。
従って、在日は創氏改名の日本式の名前を通名としたのが大部分だとする、『現代韓国を学ぶ』の上記の所論は間違いです。
なお戦後、外国人登録における通名は、創氏改名時の名前にこだわることなく変えることができます。現在の在日の通名が創氏改名に起源があるというのは、そういう人もいるし、そうでない人も多い、というのが正解です。
コメント
_ silkroad_desert9291 ― 2012/06/10 19:06
_ 辻本 ― 2012/06/10 21:47
日本の敗戦=朝鮮の解放後、南朝鮮(まだ韓国は建国されていない)では、米軍政庁が1946年10月に「朝鮮姓名復旧令」を出して、創氏改名による名前はすべて無効とされました。
一方日本では、創氏改名は無効とされませんでした。従って、創氏改名で日本名になった人は、それをそのまま本名とすることが出来ました。
〉日本式の名前が通名であるなら、創氏改名で日本式の名前にはしなかったということだ、
これは各人、万別だったようです。
在日では、朝鮮名のまま創氏しながら、通名として日本名を名乗った人が多かったのは事実です。
一方では逆に日本式の名前の人が、通名として朝鮮名を名乗った例が当時の資料には出てきます。
_ 河太郎 ― 2012/06/11 00:42
戦前は朝鮮人のいわゆる本籍地は朝鮮半島の何処かの筈であり、内地の役所に朝鮮人の戸籍簿は存在しない筈です。朝鮮半島出身者は、戦前は内地に定住すれば居住地に住民登録したのだろうと想像します。しかし戦後は日本内地にあるのは外国人登録簿しかなく、その記載はパスポート(もしあれば)の記載に従うのでしょう。つまり、戦後の日本においては朝鮮人の本人確認は朝鮮にある韓国・北朝鮮の戸籍簿に基づくはずであり、創氏改名は法律上は出番がなく、通名は創氏改名でもよく又新たに別のものでもいいことになるのでしょう。結局、戦後の日本では創氏改名は法律上の意味を失い、単なる通名に使用される数多の候補の一つでしかなかったのでしょう。
>従って、創氏改名で日本名になった人は、それをそのまま本名とすることが出来ました。
日本で本名というのは「本籍地東京都千代田区1番2号3番地 東京太郎」と表示されたものでしょう。、
日本の大学卒業証書や国家資格免許証には生年月日、本籍と本名が記載されるが、仮に金大中は「大韓民国 岩田大中」と記載された日本の大学卒業証書や国家資格免許証を取得することが可能でしょうか。
実務上からみたら、大学卒業、国家試験、免許証発行とすべて書類審査だけで進む。まず大学入学の段階で、高校卒業(韓国)の証明書には、金大中と記載してある筈だから、そのまま金大中で進むしかないと考えるのが普通ではないでしょうか。
韓国籍のまま日本で創氏改名が本名として使えるとは思えないのです。日韓関係の「歴史的関係」を考慮してもそこまでグチャグチャに扱っているとは思えませんが。しかし、実際は、法律解釈上はそうなっているのであれば、ハイそうですか、と言うしかありませんね。
_ 辻本 ― 2012/06/11 02:12
これによれば、韓国・朝鮮人の外国人登録人員総数607,533名のうち、日本式の名前で本名登録した者は22,789名となっています。
_ 河太郎 ― 2012/06/11 08:44
>これによれば、韓国・朝鮮人の外国人登録人員総数607,533名のうち、日本式の名前で本名登録した者は22,789名となっています
外国人登録証の現物を見た事がないので、ネットで検索したら、現在のものは、「氏名」欄はあっても、「本国での名前」とかの欄はありませんでした。外国人登録証の「氏名」は「本名」との前提なのですね。同一人に「氏名」と「通名」の並存を想定していないのです。法的には外国人登録の「氏名」が謂う所の「本名」という立場なのです。
そうすると、「豊田大中」で外国人登録した人間が、別の市町村で「金大中」として外国人登録することも、当時は可能だつたことになるのかと想像しましたが、当時は確か指紋押捺が必要だったらしいですから、
そこまでする在日韓国朝鮮人はいなかったでしょう。
日本時代の創氏改名で外国人登録した韓国朝鮮人たちは、日本の大学卒業証明書や外国籍でも取得できる医師免許証、弁護士資格などの姓名欄には何と書いてあるのでしょう。朝鮮名なのか創氏改名なのか。
私が先の投稿で指摘した実務上の流れはどうクリアするのでしょうか。
又研究者となって英語の論文を発表する時に名前はどうするのでしょう。又履歴書で、○×大学卒業、医師免許取得、弁護士資格有りと書いた時、問い合わせされたら、不一致などあれば経歴詐称とされるでしょう。
「日本式の名前で本名登録した者」たちは、国籍は日本ではないが、日本以外では生活しない、キャリァーを積まない、韓国北朝鮮で経済活動、研究活動などはしないと覚悟した人達なのでしょう。
_ 辻本 ― 2012/06/11 21:10
大学だけでなく小中高の学籍簿は、本名でも通名でも可能です。医者も同様だったと思います。
ただし通名の場合は、本名との併記のはずです。
外国人が弁護士になることが可能になったのは1977年ですが、どうなんでしょうねえ。おそらく同様に、通名の場合は本名併記だと思いますが。
〉研究者となって英語の論文を発表する時に名前はどうするのでしょう。
国際的に活躍する在日の方でしたら、本国のパスポートを取得しているでしょう。パスポートの名前を使うことになります。
在日の場合は、日本の外国人登録の本名(朝鮮名)と本国の戸籍名(パスポートに記載される名前)が違うことが、よくありますよ。
〉問い合わせされたら、不一致などあれば経歴詐称とされるでしょう。
名前が違っても、同一人であることを明記し、あるいは何故名前が違うのかを合理的に説明できているのであれば、問題にはなりません。
_ 河太郎 ― 2012/06/11 23:00
ただし通名の場合は、本名との併記のはずです。
知り合いの中学校の校長に訪ねたら、教育委員会から送られてくる生徒の身上書みたいなものには、韓国籍北朝鮮籍であること、通名(或いは朝鮮名だけ)が記載されていたとのことです。私が尋ねた友人は通名しか見た事がなかった、併記は見たことが無かったとのことでした。そして卒業証書にも通名しか書いたことがないそうです。
しかし、私からみればこれは無原則な取り扱い、いい加減な処理ですので、日本全国あるいは何時の時代にもこれと同じと見るのは間違いでしょう。
高校の記載が大学に行き、それが国家資格免許証にそのまま反映されますので、その免許証の現物を見ないと現実はどうか言えませんね。
>外国人が弁護士になることが可能になったのは1977年ですが、どうなんでしょうねえ。おそらく同様に、通名の場合は本名併記だと思いますが
医師免許も弁護士免許も在日韓国朝鮮人の現物を見ないと断定的にこうだと言えないですね。
>国際的に活躍する在日の方でしたら、本国のパスポートを取得しているでしょう。パスポートの名前を使うことになります。
これは多分そうでしょうね。
> 在日の場合は、日本の外国人登録の本名(朝鮮名)と本国の戸籍名(パスポートに記載される名前)が違うことが、よくありますよ。
辻本さんは現物をご覧になつたのか、本人から聞かれたのでしょうから、そうなのでしょうね。もっとも、二つの公的証明書に別々の自分の名前を書いて平気であるという神経は理解できませんが。
>名前が違っても、同一人であることを明記し、あるいは何故名前が違うのかを合理的に説明できているのであれば、問題にはなりません。
現実は、外国人の研究者はそういう説明に付き合ってくれるほど辛抱強くないことだけは確かですね。
_ 辻本 ― 2012/06/12 04:22
1970・80年代に、一部の教育委員会では本名を使うように各校長に指導を出していました。その時、教育委員会は在日家庭の本名も通名も把握していました。教育員会が作成した某学校の在日生徒一覧表に、通名と本名の併記されたものを見た記憶があります。
また某大学では、在日の学生に本名を使うように強制していますが、この大学に入った在日が、自分では公的書類には全く使ったことない本名を大学側が知っていてビックリしたという話を聞いたことがあります。高校側が本名を大学に教えたようだ、ということでした。
〉辻本さんは現物をご覧になつたのか、本人から聞かれたのでしょうから、そうなのでしょうね。
昭和20・30年代ー日本は韓国と国交を有していない時代に登録された外国人登録上の名前や生年月日が、あとで本国から取り寄せた戸籍と違っている例がありました。
日本の外国人登録と本国の戸籍(あるいは個人籍)制度とは、法の主体もメカニズムも違うのですから、そういう現象が起きやすくなるものと思われます。
ところで北朝鮮国籍の場合はどうなるのでしょうねえ。
_ 河太郎 ― 2012/06/12 17:19
辻本さんには、在日韓国朝鮮人の通名と本名についていろいろ教えて頂きました。
しかし、通名論議も朝鮮人の性質をよく示していると思います。朝鮮名だと差別されるから仕方なく通名を使わざるを得ない、と日本人に責任転嫁して恥じません。それじゃ、華僑はどうなのか、と聞きたくなりますね。
華僑が通名を使ったなど聞いたことがありませんね。華僑に対する差別は無かったかと言えば有ったでしょう。
在日韓国朝鮮人と在日華僑の対比はいろいろ教えてくれます。
_ 宇宙飛行士 ― 2012/06/13 08:12
もし、日本が「日本式の氏」を強制していたなら、
「朴忠」、「李家」のような変な苗字を総督府が許可するはずがないと思います。
_ abcd ― 2012/06/13 14:05
>そして卒業証書にも通名しか書いたことがないそうです。
中学校の卒業のときに、各生徒の本名の確認を教室内でされたことがあります。
担任は、気を遣ってくれて「(私の本名を)難しくて読めない」と言ってスルーしてくれました。
中学・高校の卒業証書は手許の何処かに在る筈ですが、氏名の記述がどうなっていたか
全く憶えていません。
外国人登録済証明書は、学校の入学時には添付が義務付けられていたのかと思ってましたが
(日本人の戸籍抄本の提出に当たる)。
_ 辻本 ― 2012/06/13 19:41
「李家」さんは日本の名門家にあります。確か長州藩にいたように思います。
「変な苗字」ではないでしょう。
_ abcd ― 2012/06/15 16:12
>ところで北朝鮮国籍の場合はどうなるのでしょうねえ。
個人の特定がされない形で、父親(故人です)のことも書いていきます。
A 一郎 (B 一郎):私の自動車免許証での記述です。Bは通名の姓として私は使用しています。
A 太郎 :父親の本名。実際は、朝鮮式の名前です。
B 祐二 :父親の通名。名前の方は、勝手に付けたみたい。
A AA :祖父の本名(父親の父親)
C CC :祖母の本名(父親の母親)
父親は昭和十年前後の小学生くらいの時、自分の母親(CC)と日本に来ました。
日本に出稼ぎに来ていた父親(AA)も一緒だったかもしれません。
祖母(CC)は、終生日本語が出来なかったと思います。
祖父(AA)は、私が5歳になるまでには亡くなっていました。
私は、祖父に懐いていたみたいですが、記憶には残っていません。
父親は、朝鮮に居た頃も学校には行かせて貰っていたようです。
日本にきて小学校に編入したみたいです。
朝鮮では作文の授業が無かったので、日本での作文の授業は、隣の人のを覗きながら作文を仕上げた
ようなことを聞きました。隣の席の人からは先生につげ口されたそうです。
つげ口されたときの話では、Aの本名を小学校では使っていたみたいです。
あと、小学校か中学校かは解りませんが、軍事教練みたいな授業が有ったみたいなのですが、
父親=朝鮮人なので、「お前は遣らなくてよい」みたいなことを言われたといってました。
たぶん、朝鮮人は信用されていなかったんですね。
戦前の創氏改名で、Bを使い始めたのだと思います。
この辺の事情は、今度母親から聞いておこうかなと思ってます。
私が16歳になった時点で、入国管理局で外人登録を行いました。
10本の指全部で指紋押捺をしたと思います。
この登録時の国籍国は、「朝鮮民主主義共和国or北朝鮮」となっていたと思います。
2回目か3回目以降の切り替えは、市役所または区役所で行っています。
高校の入学時は、外国人登録済の写しを添付していたと思います。
高校での出欠等は、通名で過ごしていました。
大学は行かなかったけど、予備校では途中まで通名での確認でしたが、途中からは本名での確認と
されてしまいました。
韓国籍になる前の切り替えでは、いつのまにか国籍国の中身は「朝鮮」となってました。
父親の生地(=私の本籍地)は今の韓国領内ですが、韓国では徴兵があるので、国籍に北朝鮮を
選択したような事を聞いています。
1960年代は、北朝鮮のプロパガンダ雑誌(=Newtonみたいな体裁)は、写真が豊富で興味深いものでした。
_ 辻本 ― 2012/06/16 04:51
>10本の指全部で指紋押捺をしたと思います。
外国人登録の担当部署は役所・役場です。入管へは、おそらく在留資格の件で行かれた思います。
また登録の際の指紋押捺は左手人差し指です。10本指の指紋押捺は、紛失の際の再発行等に採取されるものでした。
〉父親の生地(=私の本籍地)は今の韓国領内ですが、韓国では徴兵があるので、国籍に北朝鮮を選択したような事を聞いています。
おそらく1960・70年代の話でしょう。当時、韓国はベトナム戦争に参戦し、5万の大軍を送っていました。朝鮮総連は、韓国籍をとると徴兵されてベトナムに行かされると宣伝していました。
ところでabcd様は北朝鮮国籍を持っておられたようです。abcd様の文を読む限りは、国籍は日本の外国人登録上のことでおっしゃっているようです。しかし外国人登録は国籍を証明するものではありません。
国籍証明をすることができるのは、唯一本国政府だけです。つまり、abcd様が北朝鮮国籍であることの証明をどのようにしておられたのか、あるいは共和国(北朝鮮)政府はどのようにして自国民か否かを判断していたのかが、気になるところです。
_ 宇宙飛行士 ― 2012/06/20 22:05
私の知識不足で失礼なことを言ってしまいました。
「李家」に関するコメントは私の間違いでした。
_ かんぐ ― 2012/06/29 03:26
それともいわゆる朝鮮籍でしょうか?
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