出自を隠すための通名には事情がある2012/12/21

 通名は個々人の様々な事情によってつけられます。職業上のことなど積極的な意味のある通名もあれば、出自を隠したいという消極的な意味の通名もあります。

 かなり以前ですが、同和問題の講師をしておられた同和出身の方から、「私の名前は珍しく、私の地方ではこの名前を名乗ると、すぐさま同和地区出身だと分かってしまう。だからこの地区出身者では通名を名乗る人が少なくなかった。」という話を聞いたことがあります。  部落差別は今ではほぼ解消したといっていいですが、何十年か前まではかなり厳しい時代でした。そんな時に、そこの出身であることが分かってしまうような本名を嫌い、通名を使ったというのは、理解できる話です。

 ハンセン病(癩病)患者への差別は、日本だけでなく全世界的に厳しかったものです。今でも一部の国では、この差別は厳しいようです。  彼らのほとんどが家族と縁を切るために通名を使い、時には戸籍を変えて本名自体を別名にしていました。なぜならこの病気かかったことが知られれば、家族はもちろん親族に至るまで多大な迷惑がかかるからです。  ハンセン病を発病した人は、周囲に知られないように出奔し、家族とも縁を切るのが普通でした。そのために、家族との関係を示す名前(=戸籍上の名前)は名乗れなかったのです。  ハンセン病者が本名隠し通名を使うのは、日本だけでなく全世界的な傾向でした。

 以上は昔の極端な例かもしれません。

 しかし本名を隠して通名を使うのは、その人の事情によるものだということは、昔も今も変わらないことです。周囲はその事情を斟酌し、その人の選択を尊重すべきでしょう。

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