『韓国・朝鮮史の系譜』(5)2013/05/13

  『韓国・朝鮮史の系譜』の購読をきっかけに、韓国側の朝鮮(韓国)通史の本を読んでみようと思い、大学の朝鮮史の授業で参考文献として挙げられている韓国教員大学歴史教育科著『韓国歴史地図』(平凡社 2006年11月)を購読しました。地図はもちろんのこと、絵画や写真などの図がたくさん挿入されており、分かりやすいものです。今の韓国における自国の歴史観を知るには、ちょうどいいものと思われます。

 まず一読して感じたことは、これは朝鮮(韓)民族の歴史であって、朝鮮半島という地域の歴史ではないということです。

 例えば中国の漢の武帝は、紀元前108年に衛氏朝鮮を平定して楽浪・玄莬・臨屯・真番の四郡を置きました。このうち臨屯・真番は程なく廃止され、楽浪郡が最も栄えました。楽浪郡の郡治は今の平壌で、後にその領域の一部を帯方郡として分離します。帯方郡は卑弥呼使者が往来したことで、我々には馴染み深い郡です。

 つまり朝鮮半島に西暦313年までの約400年もの間、中華文明の花が開いていたのです。当時の中華文明ですから、周囲の諸民族の文化とは違い、遥かにレベルの高いものです。従って朝鮮史には非常に重要な位置付けにならねばならないのですが、『韓国歴史地図』では24・25頁にわずかに触れるのみです。

 そこで韓国の歴史辞典『新しい国史大辞典』(教文社 韓国シャープの電子辞書に登載)を調べますと、何と!そこには「낙랑(楽浪)」がありません。だったら韓国人は楽浪をどうやって知るのかと思ったら、『世界史小辞典』(カラム企画 同電子辞書)にありました。つまり朝鮮(韓国)史において、楽浪は除外されているのです。自分たちの住んでいる朝鮮半島で400年という長い間、高度の文化を維持してきた楽浪が、韓国人には自国の歴史ではないと切り離されているのです。

 つまり楽浪は中国人のものであって、わが民族のものではないということです。ここには、朝鮮(韓国)史は我が民族の歴史であって、他民族の楽浪は我が土地にあったとしても無視しようとするものです。そこには朝鮮半島という地域史がなく、民族の歴史があるのみです。

   これがおそらく、韓国の民族主義的歴史観というものなのでしょうねえ。以前に、中国の博物館を見学した韓国の若者が、漢の領域の示す地図に朝鮮半島が含まれているのを見て、嘘だ!と怒ったという記事がありました。これは、この若者が自国の歴史を勉強してないというだけでなく、自国の学校では楽浪が教えられていないことのようです。

【拙稿参考】 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2010/05/13/5085283

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