国籍を考える―アルベルト・フジモリ2017/07/25

 「アルベルト・フジモリ」といっても今では、はて誰?という反応が多いでしょうねえ。 ペルーの第91代大統領として1990年~2000年在職した日系人です。

 彼のプロフィールは次の通りです。

・姓  名  : アルベルト・ケンヤ・フジモリ(日本名は 藤森 謙也)

・生年月日  : 1938年7月28日

・出 生 地 : リマ(ペルーの首都)

 ・両  親  : 父母ともに日本人で 1934年にペルーに移住

 ・出 生 届 : 両親はペルーの役所と日本大使館の両方に出生届を提出

 ・大 統 領 : 1990年、大統領に当選。 1992年、日本を国賓として訪問、天皇に謁見。

・不正選挙  : 2000年、三選目の大統領選挙に勝利したが、不正選挙疑惑発生

 ・日本亡命  : 2000年、外遊中に大統領辞任を表明した後、日本亡命。 その際に二重国籍を明らかにする。 日本政府は日本国籍者として亡命を受け入れる。 その後チリに移住

 ・参議院選挙 : 2007年7月の日本の参議院選挙に立候補し、落選

 ・帰  国  : 2007年9月、ペルーに帰国。逮捕されて収監

 以上のようなプロフィールです。 彼の国籍はペルーで出生しましたからペルー国籍であり、同時に日本大使館にも出生届を出していますから日本国籍でもあり、従って二重国籍者です。

 1985年に日本の国籍法が改正されて、二重国籍者は国籍選択を義務づけられました。 しかし彼はそのような選択をしませんでした。 何もしないで放置したわけですが、彼の場合は日本国籍を選択したものと見なされました(昭和59年国籍法附則第3条)。 これにより彼はその後ペルーの大統領となっても日本国籍を失わず、だからさらにその後に日本に日本国籍者として亡命できたわけです。

 そして彼は日本の参議院議員選挙に国民新党(党首 亀井静香)から立候補しました。 この時の私の記憶では、二重国籍者の立候補に疑問の声はほとんど全くなかったと思います。 日本国籍があるのだから国会議員になっても別に構わない、日本も国際化した証拠だ、というような雰囲気でしたねえ。

 ここで最近になって蓮舫の二重国籍がなぜ問題になるのか、疑問が出てきます。 この間に選挙の法律が変わったわけでもありませんから、二重国籍者が立候補するには何の問題もありません。 当然のことながら当選して議員活動しても法的に不都合がありません。

 しかし蓮舫では二重国籍が大きな問題になってしまいました。 何が違って来たのか? これは国民の二重国籍に対する感覚というか感情・情緒というか、それが違ってきから、としか言いようがありません。

 法的に問題がなく、しかも二重国籍によって不都合な事態が起きたわけでもないのに、今になって問題になったというのは国民の情緒が変わったからとしか説明できません。 法の厳密な解釈ではなく、情緒によって左右されることは、いかがなものかと思います。 

 繰り返しますが、蓮舫の二重国籍問題はもともと「疑惑」でも何でもないことで、今や問題にすべきでないというのが私の考えです。

コメント

_ 河太郎 ― 2017/07/25 16:00

長文で恐縮です。


★公人の我国における二重国籍問題に関して、フジモリ元大統領と蓮舫氏を比べるというのはなかなか良い視点ですね。

★>そして彼は日本の参議院議員選挙に国民新党(党首 亀井静香)から立候補しました。 この時の私の記憶では、二重国籍者の立候補に疑問の声はほとんど全くなかったと思います。 日本国籍があるのだから国会議員になっても別に構わない、日本も国際化した証拠だ、というような雰囲気でしたねえ

フジモリ元大統領が難を逃れて日本に来た時、曽野綾子さんが手を差し伸べたのを報道で知り、恩知らずの日本人にならなくて良かったと思ったこと思い出します。

日本大使館人質事件が上首尾に解決されたのもフジモリ大統領の決断あればこそでしたので、いわば人質の生命のみならず日本政府のメンツも失われずに済みました。

私はフジモリ氏が国民新党から立候補していたとは、蓮舫氏の件で国会議員の国籍問題が議論になった時何かで初めて知りました。

>日本国籍があるのだから国会議員になっても別に構わない、日本も国際化した証拠だ、というような雰囲気でしたねえ

当時、私はそのような議論があったとは知りませんでしたね。
フジモリ擁護の立場の保守派から出たのであれば誰の発言か興味ありますね。

★国会議員の二重国籍問題ではありませんが、日本避難中のフジモリ氏の二重国籍に関して民主党辻元議員が質問主意書を出したことがあったそうです。

蓮舫氏の二重国籍問題関連で辻元清美議員の民進党の中ではこの質問主意書に言及して議論がなされたとの報道は見ませんでしたね。

----引用『2001年3月6日に辻元清美衆議院議員(当時 社民党 現 民進党)が提出した「ペルー共和国前大統領アルベルト・フジモリ氏に関する質問主意書」の内容(一部引用)

一 フジモリ氏の日本国籍について
4 一九九〇年七月にフジモリ氏はペルー共和国大統領に就任している。フジモリ氏がいわゆる日系人であることは当初より公知の事実であったと考えるが、日本政府はその就任時点でフジモリ氏の国籍を確認したのか。もし確認を怠ったのであれば職務怠慢であると考えるがいかがか。また、その時点で政府がフジモリ氏の日本国籍保持を確認していたのであれば、国籍法第十六条第二項に基づき国籍喪失の宣言を行ったのか明らかにされたい。もし行わなかったのであれば、その理由並びにどのような場合にこの条項に基づく宣言がありうるのか、明らかにされたい。

三 ペルーとの二国間関係及び国際社会における我が国の地位に及ぼす影響について
5 ペルーのカルデロン検事総長はさる二月二八日、フジモリ氏を大統領の職責の放棄・不履行の罪でペルー最高裁判所に刑事訴追し、また同氏の不正蓄財についての当局による捜査も継続している旨承知している。政府はこのような状況の中で、前記のような国際的批判の動きあるいは日本・ペルー両国の友好関係保持といった諸要素を勘案し、フジモリ氏に対しペルーへの自発的な出国を説得する用意はないのか、明らかにされたい。』----引用終わり

★辻元議員は、フジモリ氏がペルーから人権侵害で訴追されているからペルーに引き渡せとの趣旨でしたが、辻元議員は大使館員人質事件解決のフジモリ氏の大功績を全く評価しないようですね。

★私はフジモリ氏は本人が希望する限り何としても日本に留めおかなければと思っていましたので
 政府があれこれ知恵を絞って法的整合性を保ったのは良かったと思っています。

★>法的に問題がなく、しかも二重国籍によって不都合な事態が起きたわけでもないのに、今になって問題になったというのは国民の情緒が変わったからとしか説明できません。 法の厳密な解釈ではなく、情緒によって左右されることは、いかがなものかと思います。 

フジモリ氏の立候補の件は当選しそうにない状況だったからであり、もし当選したのであればフジモリ氏の二重国籍は当然問題になったでしょう。我政府は、フジモリ氏の生命や自由に責任は感じても国会議員という特権を保証する責任は感じていなかったでしょう。

もっとも当選したとしても議席剥奪はムリでしょうが、国会議員の二重国籍問題の議論は起こったでしょう。

蓮舫氏の二重国籍問題は、彼女の法律違反疑惑が問題の核心であり、国民の情緒が彼女の疑惑に火をつけたのではないでしょう。

国民の情緒はむしろ、二重国籍問題ないのじゃない、が多数ですから。

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