釜山の慰安婦像保護条例ー日本の友好都市はどう対応するか2017/07/01

 釜山の日本領事館前にある慰安婦少女像。釜山市が保護条例を定めて撤去できなくしたようです。   https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170630-00000040-asahi-pol

 日韓の合意に違反し、また外国公館の尊厳を守らねばならない国際条約にも違反するものを、釜山市が公的管理で保護しようというわけです。日本との友好とは全く逆の方向に行くものです。

 非常識としか言い様のない釜山市ですが、調べてみるとこの釜山市と姉妹都市を結んでいるのが下関市と福岡市、友好パートナー協力都市協定を結んでいるのが大阪市と横浜市、友好交流協定を結んでいるのが北海道だそうです。

 これらの自治体は、釜山市とこれまでどのような「友好」関係にあったのか、疑問になります。

 下関市・福岡市・大阪市・横浜市・北海道は、これからも釜山市と友好関係を続ける気なのでしょうか。

昔読んだ懐かしい一文2017/07/07

 本棚に積ん読していた鄭大均『韓国が「反日」をやめる日は来るのか』(2012年12月 新人物往来社)を取り出して読んでいると、1970年代に宋建鎬という方の次のような一文が紹介されていて、これは私も読んだことがあると思い出し、懐かしく思いました。

海外へ出たことのある人なら、20・30人と群れをなして観光旅行をする日本人を見かけたことがあるに違いない。日本人は海外へ出かけるとき集団でいくことが多く、単身でいくのを見るのはむずかしい。彼らには妙なコンプレックスがある。語学力の不足からくるのかもしれないが、個人的に接するときは比べるべくもないくらい善良な彼らがいったん集団になるや、たとえようもないくらい残忍非道な行為を平然とやってのける。このような性向は激しやすいその国民性とあわせて、いっそうあらわになってくる。(142~143頁)

 鄭さんによれば、これは1973年に発表され、1975年に日本語に翻訳されて『アジアからの直言』という本に所収されています。

 当時の日本は海外旅行の自由化がなされて数年ぐらいしか経っていない時期で、海外旅行先で恥をかく日本人がよく報道されていました。 特に揶揄されていたのが、農協が扱っていた団体旅行でした。

 例えば、バスで田舎道を移動中、バスを止めさせてぞろぞろと下りて、道端に並んで畑に向かって一斉放尿。 現地のガイドさんがビックリ仰天したという話。

 土産を買おうとちょっと高級な店に立ち寄った出来事。 このごろは見かけなくなりましたが、中高年男性は財布や貴重品を腹巻に入れる人が多い時代でした。 土産を買う際に女性の店員さんの前で、腹巻から財布を出そうとベルトを外し、ズボンのチャックを下したという話。

 おそらく実話で、我が日本人は何と野蛮な国民なのかと慨嘆していたので、あの韓国人の一文も成程そうだと納得して読んでいました。だから記憶に残っていたわけです。

 しかしよく考えてみれば、海外旅行に慣れていない時代でしたから団体旅行が多いのは当然のことだし、その際に様々なトラブルが生じるのは仕方のない面があります。

 近頃の日本では中国からの旅行客のマナーの悪さが話題になることが多いです。 私も一日百万人以上の乗降客のある駅前の交差点で、子供に堂々と立小便させている母親を見て、目が点になりました。

 しかし日本人も数十年前に海外で大恥をかいていた時代があったのです。 だから、彼らはまだ海外旅行慣れしていないのだなあ、いずれ落ち着いていくのだろうと思います。

 少なくとも国民性や民族性と結びつける議論は、してはならないことです。

尹東柱のハングル詩作は容認されていた2017/07/11

1944년 12월 9일, 매일신보에 서정주가 쓴 시문인 '마쓰이 오장 송가'.

 これは尹東柱が獄中にあった時に、当時の新聞に掲載されたハングル詩。作者は徐廷柱。

 尹東柱に関する報道には間違いが多いですねえ。 ハングルで詩を書いたことで逮捕されたというような虚偽が横行しています。

 韓国の聯合ニュースが次のような記事を書いています。(7月10日付け)    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170710-00000050-yonh-asent

【全州聯合ニュース】韓国で国民的な人気を誇る詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ、1917~45)の生誕100年を記念し、南西部・全州市の市立合唱団が14日に音楽劇「空と風と星と詩、尹東柱」を披露する。       公演は午後7時半から同市内の施設「韓国ソリ(声)文化の殿堂」で行われる。        「空と風と星と詩」は尹東柱の詩集の名前。作曲家イ・ヨンジュが尹東柱の詩に曲を付けて作った音楽劇には市立合唱団のほか、市立劇団、市立交響楽団も参加する。         尹東柱は1942年に日本に渡り、立教大と同志社大で学んだ。ハングルで詩をつくったとして治安維持法違反の疑いで逮捕され、45年2月に福岡刑務所で獄死した。

 この最後の部分の「ハングルで詩をつくったとして治安維持法違反の疑いで逮捕され」が間違いです。 彼は独立運動をしたことで逮捕されたのであって、ハングルで詩を書いたことは何の罪にもなっていません。

 ハングルの詩が罪になっていないことを証する資料として、当時の新聞に堂々と発表されている例を↑に掲示しました。 作者は徐廷柱。 号は未堂。 韓国人なら誰でも知っている有名な詩人です。 発表は1944年12月9日の「毎日申報」(朝鮮総督府の機関紙)です。

 これは尹東柱が逮捕されて獄中にあった時期にあたります。 ハングルの詩作は容認されていたのです。

【拙稿参照】

尹東柱記事の間違い(産経新聞)      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/02/09/7568265

尹東柱記事の間違い(毎日新聞)      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/02/15/7572811

尹東柱記事の間違い(聯合ニュース)       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/01/29/8339905

尹東柱は中国朝鮮族か韓国人か      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/21/8075000

『言葉のなかの日韓関係』(2)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/04/09/6772455

『言葉のなかの日韓関係』(3)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/04/11/6774088

『言葉のなかの日韓関係』(4)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/04/13/6775685

水野・文『在日朝鮮人』(11)―尹東柱  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/06/26/8118773

蓮舫二重国籍問題2017/07/14

民進党の蓮舫が二重国籍問題で自分の戸籍を公開するとしたようです。

 都議選での敗北に見られるように、 蓮舫のもとでも民進党の衰退は進んでいます。 ここで不思議というか疑問というか、民進党内部から蓮舫の二重国籍を問題としたことです。 つまり民進党の衰退の原因として全く関係のない自分の党首の二重国籍問題に求めたところに、この党のどうしようもない体質が現れていると思います。 

 蓮舫の二重国籍問題については、かつて拙論で論じたことがあるので下記を参考にしていただければ幸甚。

 なお拙論の要点は、次の通りです。

・蓮舫の二重国籍問題は既に終わったとすべきである。

・他人が戸籍の公開を要求すること自体が不当である。 他人からの圧力に屈して公開をしてはならない。

【拙稿参照】

蓮舫の二重国籍疑惑           http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/09/8176022

蓮舫の過去の「国籍発言」        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/16/8190975

蓮舫は国籍選択宣言をしていないのでは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/07/8216765

蓮舫はもともと二重国籍でなかったのでは?http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/16/8230218

二重国籍は複雑で難しい         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/20/8232627

二重国籍でないという証明は困難     http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/23/8234323

私が二重国籍に関心を持った訳      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/28/8237467

二重国籍には様々な姿がある       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/29/8237969

蓮舫二重国籍問題のまとめ        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/11/03/8241041

二重国籍かどうか微妙な場合       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/11/13/8247093

蓮舫二重国籍問題のまとめ (再掲)2017/07/15

 この問題のまとめを再掲します。 去年の11月に発表したものです。

     ―――――――――――――――― 

① 日本は台湾を国家として承認していないので、台湾籍は日本にとって国籍ではない。 だから蓮舫は台湾との二重国籍とは言えない。

② 日本の立場からいうと、中国を承認した時点で台湾人は中国国籍となる。 そして中国の国籍法は、他国の国籍を取得した中国人は自動的に国籍を失うとあるので、蓮舫は中国との二重国籍ではない。

③ 従って蓮舫は、17歳で日本国籍を取得した時点で法的には日本単一国籍となったと言える。 だから国籍法第14条違反に問われることはない。

④ しかし台湾は実質的に国家の形をなしており、将来国家承認される可能性がある。 また現在台湾のパスポートは他国のパスポートと同様に通用している実情から、台湾籍は国籍と見ることも可能である。

⑤ すなわち蓮舫は法的には日本単一国籍であるし、そのように扱わなければならないが、見方によっては二重国籍の余地があるという変則的な場合になる。

⑥ 蓮坊は、現在は台湾籍を離脱したので、二重国籍と考える余地もなくなった。 蓮舫の二重国籍問題は、今は終わったとすべきである。

⑦ 問題が表出した当初、蓮舫は自分が日本単一国籍であって二重国籍ではないと主張できたのに、それをしなかった。 そして行政指導に従って国籍選択宣言をした。 蓮舫にはこの行政指導の法的根拠を問いただしてほしいと思う。

⑧ 蓮舫に戸籍の公開を要求する意見があるが、戸籍を公開するかどうかは本人が決めることである。 他人が戸籍公開を要求すること自体が不当である。 蓮舫が戸籍公開を拒否したことに、何の問題もない。 これからも拒否を貫いてほしいと思う。

     ―――――――――――――――― 

 これに付け加えるとすれば、憲法や各法律においては、国会議員や大臣、総理は日本国籍者でなければいけませんが、外国籍を有しているか(つまり二重国籍)かどうかについては定めはなく、不問としています。

 つまり二重国籍者は、日本国籍を有し、かつ法に基づいて民主主義的に選出されていれば、総理大臣にもなることができるということです。

 蓮舫二重国籍は、最初から「疑惑」でも何でもない問題でした。

 ただ自分の国籍についての説明が二転三転するなど不十分であったことだけが問題でした。

【拙稿参照】

蓮舫の二重国籍疑惑           http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/09/8176022

蓮舫の過去の「国籍発言」        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/16/8190975

蓮舫は国籍選択宣言をしていないのでは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/07/8216765

蓮舫はもともと二重国籍でなかったのでは?http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/16/8230218

二重国籍は複雑で難しい         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/20/8232627

二重国籍でないという証明は困難     http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/23/8234323

私が二重国籍に関心を持った訳      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/28/8237467

二重国籍には様々な姿がある       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/29/8237969

蓮舫二重国籍問題のまとめ        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/11/03/8241041

二重国籍かどうか微妙な場合       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/11/13/8247093

外国籍が輝いて見えた時代があった2017/07/19

 蓮舫の記者会見は産経が詳しいですねえ。 その中で彼女が次のような発言をしたことに、かつてはそんな時代があったなあ、と懐かしく思い出しました。

当時私は本名で、蓮舫という名前で、アジアのダブルのルーツを持っているという部分でキャラクターを果たせる形で、タレントであり、あるいはその後はニュースキャスターをして、特に中国や香港、台湾、アジアの問題と日本をつなぐジャーナリストの役割を果たしたいという部分は、これは自分のルーツをもとに際立たせていたこともある。

http://www.sankei.com/politics/news/170718/plt1707180044-n4.html

 彼女が雑誌等で、自分が中国・台湾国籍者だとか、二重国籍だとか発言したのは1990年代のことです。 そしてこの時の日本では、外国籍が輝いて見えた時代でもありました。

 外国籍を有していると公言すれば、特に東アジアの国の国籍を有していると言えば、左翼革新系の集団では注目されて(ちやほやされた)、その発言に周囲の日本人たちがじっと耳を傾けたものでした。

 マスコミからの取材も多くなったものでした。 韓国籍の在日がHPを開いたことが、なぜか新聞に載ったりしたのです。 在日だから取材されたとしか思えなかったものです。

 また在日が主催する小さな行事が新聞に載って宣伝されて驚いたこともあります。 その行事の中身を知っていた私は、こんな稚拙としか言いようのないものが新聞に載って恥ずかしくないのだろうかと、いぶかしく思ったこともあります。

 この時代のことについて、以前論じたことがありますので、再掲します。

http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/16/8190975

これを読んで1990年代の日本は、そういう時代だったということを思い出します。 そういう時代とは、在日外国人というだけで有利だった時代という意味です。

1980年後半に在日外国人の指紋押捺義務反対運動が起こり、これは日韓の外交問題にまでなって1991年に永住者の指紋押捺が免除され、さらには2000年には非永住者の指紋も廃止されました。 つまり在日外国人の運動が大きな問題となって社会を動かし、遂には日本政府を譲歩させて目的を達成するという大成果を収めた時代です。

そんな時代でしたから在日外国人というだけで、その発言はマスコミに大きく取り上げられたものでした。 マスコミ(朝日など)は在日外国人から日本を批判する発言を期待し、そういうことを話す在日外国人を選んでいました。 つまり在日外国人が、自分の能力や努力ではなく、在日外国人という地位だけで有利に扱われた時代だったのです。 しかし日本が大好きで早く帰化したいなんて言う在日外国人は無視されました。

1990年代はそういう時代だったと記憶しています。 私の憶測ですが、蓮舫はそんな時代にあって‘自分は外国籍を持っている’ ‘外国人としてのアイデンティティがある’と発言したことは、それによって自分の発言が注目される、あるいは大きく取り上げられ有利だという風潮に乗ったものと言えるように思えます。

国籍を考える―ケンブリッジ飛鳥の場合2017/07/21

 ケンブリッジ飛鳥は陸上短距離走選手で、2016年リオ・オリンピックで銀メダルを獲得するなど、日本陸上界のエースとも言える存在です。 国籍を考える場合、彼の例がちょうどいい材料となるので紹介したいと思います。 念のために、彼を批判するものではありません。

 彼のプロフィールは次の通りです。

 氏 名 : ケンブリッジ飛鳥

 生年月日: 1993年5月31日

 出身地 : ジャマイカ

 両 親 : 父はジャマイカ人、母は日本人

 その後 : 2歳の時に日本に移住。2014年2月にトレーニングの為に単身でジャマイカに渡り、18年ぶりに故郷ジャマイカの地を踏んだ

 ここからか何が読み取れるか、です。 まず出身地がジャマイカですから、この国の国籍生地主義により出生と同時にジャマイカ国籍です。

 次に彼は今まで日本国籍であったということなので、両親はジャマイカの日本領事館に行って出生届と国籍留保届けを提出、受理されたはずです。 これによって彼は日本国籍も取得しました。 つまりジャマイカと日本の二重国籍者です。

 次に「ケンブリッジ飛鳥」という名前が本名(戸籍上の名前)のようなので、両親は法律婚であり、日本人の母親は自分の名前をジャマイカ人の父親の名前に改姓したものと判断できます。 妹さんの名前が「ケンブリッジ沙紗」ですので、「ケンブリッジ」がこの一家の家族名=姓ということになります。 一家は1995年から日本で生活してきましたので、父親は日本に帰化しているかも知れませんが、これは分かりませんでした。

 彼は二重国籍者ですから22歳までに国籍選択をせねばなりませんが、これは不明です。  どの記事を見ても、彼がジャマイカ国籍を離脱したとか、あるいは日本国籍の選択を宣言したとかの話がありません。 ということは、彼は二重国籍を維持してきて24歳の現在も二重国籍の可能性があります。

 ただし彼はオリンピックに出場していますから、日本単一国籍となっている可能性もあります。 また例え二重国籍であってもジャマイカから異議申し立てがなされていませんので、日本国籍者としての出場に問題はありません。

 彼は20歳に故郷のジャマイカを訪問していますが、日本のパスポートで行ったのか、ひょっとしてジャマイカ人としての帰国だったのか、不明です。

 公表されている彼の簡単なプロフィールからは、これだけの情報が読み取れます。

 世間では彼が日本国籍者であることに関心があって、もう一方のジャマイカ国籍については関心が行かないようです。 これが正解です。 彼が日本国籍を有していることが重要なのであって、二重国籍かどうかなんて、どうでもいいことなのです。 当事者でない他人が人の二重国籍を気にするものではない、ということです。

国籍を考える―小野田 紀美の場合2017/07/23

 岡山県選挙区で選出された参議院議員、小野田 紀美の場合で国籍を考えてみます。

彼女の公開されているプロフィールは次の通りです。

 姓  名 : 小野田 紀美

生年月日 : 1982年12月7日

出 生 地: アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ

両  親 : 父はアメリカ人、母は日本人

そ の 後: 1歳から日本の岡山県で暮らす

国籍選択 : 2015年10月に日本国籍を選択

米国籍放棄: 2017年5月2日付けのアメリカ国籍喪失証明書

 このプロフィールから国籍に関してどんな情報が読み取れるか、です。

 アメリカ生まれですから出生と同時に米国籍です。 しかも1985年の国籍法改正以前ですから、国籍父系主義により日本国籍を取得できず、アメリカの単一国籍です。 しかし彼女は日米の二重国籍者でした。 これは二つの場合が考えられます。

 一つは1985年の国籍法改正の経過措置により、施行から3年の間に法務大臣に届け出ることによって日本国籍が取得できます。 この届出がなされた時点から二重国籍となります。

 もう一つは両親が事実婚で、日本人の母親の非嫡出子として出生した場合です。 シカゴの日本領事館に出生届と国籍留保届けを提出・受理されれば日本国籍を取得し、二重国籍となります。

 彼女の二重国籍状態は2015年の32歳まで続きます。 この年の10月に、日本の役所の戸籍担当課に日本国籍選択を届け出て受理されました。 しかし米国籍からの離脱はまだです。 つまり自分は日本単一国籍にしますという意志を明らかにしたというだけで、手続きは完了していません。

 翌々年の2017年5月にアメリカで「国籍喪失証明書」が作成され、この時にようやく二重国籍が完全に消滅し、日本の単一国籍者となりました。 それは34歳の時で、ほんの2ヶ月前のことです。

 以上の状況が読み取れます。 ここで国籍法を知る人には疑問が出てくるでしょう。 二重国籍は22歳までに国籍を選択しなければならないはず、ということです。 この疑問はその通りで、彼女は22歳までに選択しておらず、32歳になって選択しました。 つまり23歳から32歳までの10年間は国籍法第14条に反する二重国籍だったことになります。

 次に自分が二重国籍を自覚していたかどうかですが、彼女の経歴からするとこれは自覚していた可能性が高いです。 少なくとも両親は知っていたはずです。 

 当然子供である彼女も知っていたし、どうやらそれを隠さずに大きくなったようです。 つまり23歳から10年間の二重国籍状態は、本人は自覚していたし、当然法律に反することも知っていたと推定されます。 

 ここが蓮舫との違いですねえ。 蓮舫は17歳で日本国籍を取得した際、自分も両親もこれで単一日本国籍になったと思い込み、「二重国籍」であることを自覚していませんでした。

 なお繰り返しますが、蓮舫の場合は、日本が中華民国の国家承認を取り消しましたから台湾=中華民国籍は「国籍」ではありません。 従って蓮舫は日本における法律上の二重国籍者ではありません。 日本にとっては、我が国の南方に所在する集団のメンバーとして登録されているようだが、そんなことは我が日本には関係ないし知る必要もない、となります。 こんなことを書いたら、台湾の方の気分を害するかも知れませんねえ。

 そんなことよりも、当事者でない他人が人の国籍を問題にすること自体が間違いです。 日本においては日本国籍を有しているかどうかが唯一最大の問題とすべきものなのです。 蓮舫も小野田もどちらも国籍を問題にするものではない、が私の考えです。

【拙稿参照】

蓮舫二重国籍問題         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/14/8620041

蓮舫二重国籍問題のまとめ (再掲) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/15/8620565

外国籍が輝いて見えた時代があった http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/19/8623371

国籍を考える―ケンブリッジ飛鳥の場合 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/21/8624643

国籍を考える―アルベルト・フジモリ2017/07/25

 「アルベルト・フジモリ」といっても今では、はて誰?という反応が多いでしょうねえ。 ペルーの第91代大統領として1990年~2000年在職した日系人です。

 彼のプロフィールは次の通りです。

・姓  名  : アルベルト・ケンヤ・フジモリ(日本名は 藤森 謙也)

・生年月日  : 1938年7月28日

・出 生 地 : リマ(ペルーの首都)

 ・両  親  : 父母ともに日本人で 1934年にペルーに移住

 ・出 生 届 : 両親はペルーの役所と日本大使館の両方に出生届を提出

 ・大 統 領 : 1990年、大統領に当選。 1992年、日本を国賓として訪問、天皇に謁見。

・不正選挙  : 2000年、三選目の大統領選挙に勝利したが、不正選挙疑惑発生

 ・日本亡命  : 2000年、外遊中に大統領辞任を表明した後、日本亡命。 その際に二重国籍を明らかにする。 日本政府は日本国籍者として亡命を受け入れる。 その後チリに移住

 ・参議院選挙 : 2007年7月の日本の参議院選挙に立候補し、落選

 ・帰  国  : 2007年9月、ペルーに帰国。逮捕されて収監

 以上のようなプロフィールです。 彼の国籍はペルーで出生しましたからペルー国籍であり、同時に日本大使館にも出生届を出していますから日本国籍でもあり、従って二重国籍者です。

 1985年に日本の国籍法が改正されて、二重国籍者は国籍選択を義務づけられました。 しかし彼はそのような選択をしませんでした。 何もしないで放置したわけですが、彼の場合は日本国籍を選択したものと見なされました(昭和59年国籍法附則第3条)。 これにより彼はその後ペルーの大統領となっても日本国籍を失わず、だからさらにその後に日本に日本国籍者として亡命できたわけです。

 そして彼は日本の参議院議員選挙に国民新党(党首 亀井静香)から立候補しました。 この時の私の記憶では、二重国籍者の立候補に疑問の声はほとんど全くなかったと思います。 日本国籍があるのだから国会議員になっても別に構わない、日本も国際化した証拠だ、というような雰囲気でしたねえ。

 ここで最近になって蓮舫の二重国籍がなぜ問題になるのか、疑問が出てきます。 この間に選挙の法律が変わったわけでもありませんから、二重国籍者が立候補するには何の問題もありません。 当然のことながら当選して議員活動しても法的に不都合がありません。

 しかし蓮舫では二重国籍が大きな問題になってしまいました。 何が違って来たのか? これは国民の二重国籍に対する感覚というか感情・情緒というか、それが違ってきから、としか言いようがありません。

 法的に問題がなく、しかも二重国籍によって不都合な事態が起きたわけでもないのに、今になって問題になったというのは国民の情緒が変わったからとしか説明できません。 法の厳密な解釈ではなく、情緒によって左右されることは、いかがなものかと思います。 

 繰り返しますが、蓮舫の二重国籍問題はもともと「疑惑」でも何でもないことで、今や問題にすべきでないというのが私の考えです。

国籍を考える―新井将敬2017/07/27

 今の若い人で新井将敬を知っている人はいないでしょうねえ。 1980年代から90年代にかけて活躍した政治家で、よくテレビに出演していました。 将来の総理大臣候補とまで言われていましたねえ。 最後は50歳の若さで自殺しました。 ここで彼を取り上げたのは、朝鮮人が帰化した場合の国籍を考えるのにたまたま都合がよかっただけです。

 彼のプロフィールの関係部分は次の通りです。

 ・姓  名  : 新井 将敬 (旧姓名は朴景在)

 ・生年月日  : 1948年1月12日

 ・両  親  : 両親はともに朝鮮人。ただし「朝鮮」は日本の外国人登録上の記載。

 ・帰  化  : 高校生時代の16歳に日本に帰化。

 ・就  職  : 1973年、大蔵省にキャリアとして入省。大蔵大臣の渡辺美智雄に抜擢される。

 ・政 治 家 : 1983年、衆議院選挙に立候補、落選。1986年に再度立候補し、初当選。以後、4回連続当選。

 ・自  殺  : いわゆる証券スキャンダルの追及を受け、1998年2月19日、自殺。 享年50歳。

 両親は朝鮮人だったのですが、「朝鮮」は外国人登録の国籍欄に記載されているもので、国家の所属を表すいわゆる「国籍」とは意味が違います。つまり大韓民国あるいは朝鮮民主主義人民共和国の国民(公民)を意味するものではありません。

 彼は16歳という未成年で帰化しましたから、単独帰化ではなく家族全員での帰化と判明します。

 ここで韓国や北朝鮮(朝鮮民主主義人共和国)の国籍法では、在日韓国・朝鮮人の国籍をどう扱っているか、です。 これは両国ともに、在日は自国の国籍を有するものとしています。 これは本人の意志とは関係なく、韓国と北朝鮮の国籍法がそうなっているからです。 つまり在日は韓国と北朝鮮の二重国籍状態だということになります。 

 先ずは韓国側から新井の国籍を見ます。 韓国は在日の外国人登録で「韓国」と記載された者にのみ国民登録を許しています。 新井は「朝鮮」籍で「韓国」籍ではなかったですから、韓国の国民登録はされていませんでした。 これを韓国側から見ると、当時の新井は我が国の国籍を有しているが国民登録がなされていないので、国籍を証明することが出来ない、となります。

 さらに韓国の国籍法では「自己の意志により外国籍を取得したものは国籍を喪失する」とありますから、新井は帰化した時点で韓国の国籍を喪失しました。 ただし上述したように国民登録されていませんでしたので、国籍喪失を証明することは出来ません。 しかし新井は韓国という国家とは完全に縁が切れたと言うことができます。

 次に北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の国籍法はどうなっているか。この国の国籍法は一応公表されていますが、どのように運用されているのか、あるいは細則はあるのかなど、さっぱり分かりません。 ここでは国籍法だけを見てお話します。

 北朝鮮の国籍法では、両親が朝鮮人の場合はすべて自国の公民(北朝鮮国籍)となります。 朝鮮籍・韓国籍は関係ありません。 たとえ韓国に国民登録されていても関係ありません。 従って新井は北朝鮮の国籍法に拠って、出生時点で北朝鮮国籍です。 

 新井の両親は北朝鮮の公民登録をしていたかどうかですが、絶対にないとは言い切れませんが考えなくていいと思います。 公民登録をするような朝鮮人は朝鮮総連の熱誠活動家に限られますし、このような人は子弟を朝鮮学校に行かせるからです。 新井は日本の公立学校に通っていましたから、公民登録はなかったと判断できます。 従って北朝鮮は新井が自国の国籍者であることを証明できません。 新井は潜在的な北朝鮮国籍だったと言えるでしょう。

 それでは新井が帰化したことによって、北朝鮮国籍はどうなるかです。 ここに韓国の国籍法との違いがあって、北朝鮮の国籍法には他国に帰化した公民を扱う条項がありません。 つまり新井は日本に帰化しても北朝鮮国籍は残っていることになります。 もう亡くなっているからあり得ませんが、もし新井が北朝鮮に亡命して自分は朝鮮人だからと公民登録を申請したら、おそらく許可されて晴れて北朝鮮国籍者となっていたことでしょう。 

 新井の話はこれまでにします。 ところで韓国・朝鮮籍からの帰化者はこれまで約30万くらいで、韓国の国籍は帰化により解消しています。 ところが彼らのうち両親が朝鮮・韓国人の場合、上述したように帰化によっても北朝鮮国籍は解消されません。 これはニューカマーも同じです。 つまり韓国・朝鮮籍からの帰化者の多く(両親が韓国・朝鮮人の場合)は本人の意志とは関係なく北朝鮮との縁を切ることができず、日朝の二重国籍となります。 北朝鮮の国籍法を素直に読めばこうなるのです。

 ただし北朝鮮国籍を有していても、公民登録をしていない限り北朝鮮国籍を証明されることはありません。 従って二重国籍は誰も(本人すらも)証明できない状態であることに留意してください。

 北朝鮮の国籍について話をしましたが、日本は北朝鮮を国家承認していないので、北朝鮮籍は台湾籍と同じではないか、という人がいるかも知れません。 これは違うと言わざるを得ません。 台湾について、日本は「一つの中国」という考え方から台湾という国家そのものを認めていません。 従って台湾籍は国籍ではありません。 蓮舫は日本の法では二重国籍とは言えないのです。    一方の北朝鮮はどうかというと、日韓条約に次のような一節があります。

「韓国政府は国連総会決議第195号(Ⅲ)に示されている通りの朝鮮にある唯一の合法的政府であることが確認される。」

 これは、1948年に国連は朝鮮半島全体の自由な選挙をしようとしたが、北朝鮮を支配していたソ連がこれを拒否した。そこでやむなく南朝鮮だけの選挙を実施して、大韓民国という政府が成立した。朝鮮半島全体をみて合法的政府と言えるものは、今のところこれだけである、というものです。 分かりやすく言うと、当時国連が有効に支配できた半島南半部では合法的政府はできたが、北半部については知りません、というものです。

 つまり日本は北朝鮮が合法政府であるかどうか判断を保留したまま、つまり国家として承認するかどうかまだ決めていないというものです。 ここが国家不承認を明確にした台湾との違いです。 台湾籍は国籍ではないが、北朝鮮籍は国籍かどうか保留中と言えるでしょう。

 帰化者が北朝鮮国籍との二重国籍であることは現在では問題になりませんが、将来北朝鮮と国交を樹立した時、あるいは朝鮮半島が北朝鮮によって赤化統一された時、問題になる可能性があります。