ニューカマーが特別永住者?!―毎日新聞2019/07/21

 7月20日付の毎日新聞に「参院選2019 外国人願う、共生社会実現 日本在住、最多266万人」と題する記事に、ビックリ内容がありました。 https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190720/ddm/041/010/130000c?pid=14509

同中(松戸自主夜間中学)事務局長の高永子(コウヨンジャ)さんは、胡さんらの姿に自分を重ねる。高さんは30年前、20代で韓国から来日した。韓国籍のまま日本で子育てもし、仕事にも打ち込んできたが、特別永住者のため選挙権はない。高さんは「選挙の時だけは外国人だと実感させられる」と話す。

 高さんは「30年前、20代で韓国から来日した」とありますから、いわゆるニューカマーです。 その人が「特別永住者」だとされていたので、ビックリ仰天しました。

 特別永住者は平成3年5月10日法律第71号の「特例法」に、「平和条約国籍離脱者およびその子孫」と定められています。 分かりやすくいえば、戦前から日本に在住してきた旧植民地(朝鮮・台湾)出身者とその子孫という意味です。 そういう人に限り「特別永住」という資格を有することができます。

 つまり本来は、戦後来日した韓国人が取得できる資格ではないのです。 しかし毎日のこの記事をどう読んでも、30年前に来日した韓国人のニューカマーが今、特別永住資格で暮らしていることになります。 こういうことがあり得るのか? あり得るとしたらどういう場合か? ちょっとした頭の体操です。

 まず考えられるのが、親が特別永住(当時は協定永住か126-2-6など)の韓国人で、時々家族と一緒に韓国に帰っていた場合です。 「時々」とは、特別永住資格は1年以上(今は5年以上)日本を離れるとその資格が喪失するからで、1年以内に日本と韓国を行き来する必要があります。

 極端に言えば、1年のうちの数日を日本の家で暮らし、他の3百何十日間は韓国で暮らしていれば、一応特別永住資格は維持されます。 こうなると子供ならば、日本人意識よりも韓国人意識を持つかも知れません。 しかし日本での永住資格を有していますから、韓国での住民登録はできません。 こんな人が20代になって日本にやって来て、今度こそ本格的に日本でずっと生活し続けてきた‥‥ これならば、本人はニューカマーの気持ちだが実際は特別永住者ということになります。

 頭の体操で考えていくとこうなるのですが、どうなんでしょう。 やはり毎日の記事にある「30年前、20代で韓国から来日した特別永住者」は、あり得ない話ですねえ。 おそらくは、この記事を書いた記者は特別永住について知識がなく、いい加減な記事を書いてしまったものと推測します。

 ところで世には特別永住については、誤解が多いですねえ。 いつでしたか、特別永住のトルコ人という新聞記事が出てビックリしたことがありました。 また米国や英国などの外国籍の特別永住者がいることについて、それはあり得ないと反論してきた方がいました。 特別永住の無知にこれまたビックリしました。

 少なくとも報道機関は仕事でやっているのですから、正確な知識を身につけてほしいものです。

【拙稿参照】

トルコ国籍の特別永住者?!―毎日新聞 ― http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/10/27/7870629

米国籍などの特別永住者         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/15/1798285

特別永住の経過             http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/08/25/1750381

特別永住制度の変更は非現実的      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/01/1762857

在日の法的問題は解決済み        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/08/1781500

在日の特別永住制度           http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/06/14/6864389