『SAPIO』の間違い記事 「韓国の強姦は日本の40倍」2012/11/09

 最近の『SAPIO』という雑誌に、「(韓国の)人口当たり強姦件数はなんと日本の40倍!」と題する記事が出ました。

 この件については拙論で論じたことがありますので、「40倍」という数字にビックリ仰天。 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/08/31/6560292    拙論では、強姦等の発生件数でいえば、2010年の数字では韓国は19,939件で、日本の8,316件の2倍以上であり、韓国と日本の人口比を考えれば、人口当たりの件数でいうと5倍ぐらいになります。しかし『SAPIO』は40倍という桁違いの数字を出してきました。

 何事か!と思い、ここ数年買っていなかったこの雑誌を久しぶりに購入しました。『SAPIO』によると、2011年の統計で、韓国は19,498件、日本は1,185件だそうです。しかしこれは、韓国と日本の犯罪統計を読み間違ったものと思われます。

 韓国の犯罪統計は、強姦と性暴力(強制わいせつ)を合わせた数字を出しており、日本は強姦と強制わいせつは分けて数字を出しています。韓国では強姦だけの数字がありませんので、比較するとしたら日本も両方を合わせた数字にして比較するしかありません。これで比較するならば、「5倍」ぐらいの数字になります。     (2010年の数字ですと、日本の強姦は1,289件、強制わいせつは7,027件です。両方合わせると上述したように8,316件です。韓国も上述したように両方合わせて19,939件です)

 しかし『SAPIO』に記された統計は、韓国では両方を合わせた数字、一方の日本は強姦だけの数字でもって比較して、「40倍」という数字を出しているのです。

 要するに何の統計数字なのかが混乱したまま、「40倍」という間違った数字を打ち出し、見出しにまでしてしまったということです。

 恥ずかしい間違いですねえ。

 ところで、強姦と強制わいせつとは違います。  韓国では小学女生徒が性暴行され、腸と肛門が損壊状態で発見されたという痛ましい事件がありました。日本では、これは強姦罪ではなく強制わいせつ罪に分類される犯罪です。こうなると、分ける意味があるのか疑問になります。

【追記】  日本でも韓国でも『犯罪白書』が発行されており、インターネットでも公開されています。拙論でも、犯罪件数という基礎資料はインターネットで探しました。便利になりましたねえ。

コメント

_ 小川 ― 2012/11/10 14:10

SAPIOを含めて記事の根拠の検証が明確でない週刊誌などが横行しているのは、メディアの質を問われるところですね。ネット社会になり情報はあふれていますが、何でも受け入れるのではなく、受け手の判断も重要だと思います。ところでいろんな白書には数字が独り歩きする危険性もあると思います。例えば、性犯罪で言うなら、まず、被害届を出すかどうかということや、警察が統計をまともに出しているかということにも注目しなければならないと思います。私の経験では、犯罪検挙率を高めるために数字を操作するといったことも現実にはありました。また、国民性の違いも最終統計結果に左右されると思います。欧米よりも日本の方が泣き寝入りをする例が多いということ、さらに韓国は性犯罪で泣き寝入りをすることがものすごい多いということもあるようです。朝鮮日報によると性犯罪届出率は7%ということです。

http://lovecorea.exblog.jp/15892736

性犯罪の再犯率が非常に高いということを考えると犯罪者のトレースをしている点は韓国当局の姿勢に賛成です。

_ 辻本 ― 2012/11/11 11:25

>国民性の違いも最終統計結果に左右されると思います。

 これはその通りでしょう。
 例えば、イスラム世界では、強姦は被害者の責任を問われるので、被害にあった女性はほとんど届けることがなく、従って強姦事件のない国となる、という話を聞いたことがあります。
 犯罪統計はその国の国民性に左右されやすいですから、統計数字を単純に比較して、この国は犯罪が多い、少ないを論じることは慎重にせねばならないと思います。

>性犯罪の再犯率が非常に高いということを考えると犯罪者のトレースをしている点は韓国当局の姿勢に賛成です。

 これとは直接関係ないですが、昨日のKBS(韓国)に次のようなニュースがありました。訳してみます。(取り急ぎの訳ですので、日本語としてこなれていません。)
http://news.kbs.co.kr/tvnews/news9/2012/11/10/2565592.html

 昨月初め、性暴行を受けた60代女性が、自ら命を絶った事件がありました。このように極端な選択をする程に、事件処理過程で性暴行被害者たちが体験する二次被害の苦痛が深刻です。まず郭ソンジョン記者が実態を取材しました。

<レポート>
 「身体をラクス(?)に漬けて拭いたい」 「被害者が罪人のようで辛い」
 昨月初め、投身自殺した60歳の徐さんが残した遺書の一部です。
 三か月前、入院していた病院の看護助士に性暴行された徐さん。三回も再捜査を受けて、現場検証もされました。
 しかし徐さんは腕と足が自由でなく、悲鳴をあげようしたら、加害者が口を塞ぎ、義歯が壊れるまでになりました。
 裁判所が逃走と証拠隠滅の憂慮がないとして、加害者に対する逮捕状を棄却するや、極端な選択をしたのです。

<録取>遺族:「明け方に起きて、あてもなく歩き回っていたんです。3,4時間。怒りが込み上げて余りにも悔しいから」

 昨年末、大学の同期から性暴行を受けた張さん。毎日、ソウル高等裁判所に陳情書を提出しています。最近一審裁判で執行猶予が宣告されたのですが、加害者側は逆に無罪を主張して控訴審となったからです。
 反省しているという言葉で、合意書を書いてやったことが禍根でした。それから相手は張さんを「花蛇(?)」に押しやるなど、態度を変え、衝撃を受けた張さんは6回も自殺を試みました。

<録取>張さん:「睡眠剤がなくては寝られない私が、そのことでずうっと悪夢にうなされ‥。むしろ私を殺して、最初から私を殺していってくれればよかった‥」

 性暴行の加害者に対する寛大な法の適用に、性暴行の被害者たち少なくない苦痛が続いています。

KBSニュース 郭ソンジョン記者でした。

_ 辻本 ― 2012/11/11 20:43

 「花蛇(꽃뱀)」というのは、普通の辞書に出てきません。
 最近の俗語も入っているインターネットの辞書にあるのを見つけました。

 これによれば、「男に意図的に接近して身を任せて金品を巻き上げる女の俗な言い方」とあります。

 この強姦犯人は、被害者の女性を「花蛇」だと主張したということです。

 「ラックス(락스)」の方は、分かりませんでした。

_ ちか ― 2012/11/13 08:19

あってはならない間違いですよね。猛省しないと。

>>韓国では小学女生徒が性暴行され、腸と肛門が損壊状態で発見されたという痛ましい事件がありました。日本では、これは強姦罪ではなく強制わいせつ罪に分類される犯罪です。こうなると、分ける意味があるのか疑問になります。


日本でもその種の性犯罪が増えてくれば分類しなくなると思いますが、元々分類したからにはそれなりの意味があったのでしょうね。

_ 惑星人 ― 2012/11/13 18:05

ラックスとは商品名유한락스からきたもので、
消毒、漂白剤として一般名詞化した単語です。
汚された体を何とかキレイにしたいと言いたかったのでしょう。

_ 辻本 ― 2012/11/13 20:44

 惑星人様、ありがとうございます。
 「유한락스」「락스」は商品名のようですから、辞書には出て来ない訳ですねえ。

_ 今さらですが ― 2013/01/26 05:15

日本の「強制猥褻」と韓国の「性暴力」を同一視するのは適切ではありません
韓国当局が発表する「性暴力」の9割以上が「強姦」だからです

・性暴力件数と強姦件数の比較(10万人あたり、2004年)

性暴力 強姦(性暴力に占める強姦の割合)
14.8 13.5(91.2%) 韓国
 4.3  2.4(55.8%) トルコ
11.4  6.1(53.5%) ロシア
27.4 13.0(47.4%) メキシコ
43.3 17.3(40.0%) フランス
89.6 26.4(29.5%) 英国(England&Wales)
 5.6  1.6(28.6%) インド
 9.0  1.7(18.9%) 日本
69.4 10.7(15.4%) ドイツ
80.4  1.8( 2.2%) カナダ
 不明 32.3(  不明 ) 米国
 不明  6.4(  不明 ) イタリア

Umited Nations Office on Drugs and Crime > Data and analysis > Statistics
Total 'Sexual violence' means rape and sexual assault; including sexual offences against childrenと注記あり
中国・ブラジル・豪州は両項目とも不明
(2005年以降、韓国当局は強姦件数発表を止め、性暴力件数のみ発表するようになったので2004年が最新データになります)

この比率を現況にあてはめると
2011年韓国性暴力件数(10万人あたり)39.2件×0.912=2011年強姦件数35.8件
日本(2011年0.9件)の39.8倍

SAPIOの記事には問題がありますが、結果として、「韓国の強姦発生率は日本の40倍」という数字は妥当なものだと思われます

_ 辻本 ― 2013/01/26 20:48

 2004年の割合を、7年後の2011年の数字に当てはめようとするのは、ちょっと強引ではないですか。

 韓国の犯罪白書によれは、性暴力犯罪件数は2004年の1万1千件から2011年の1万9千件に増加しています。このうちの強姦割合は、そのまま持続したということがあり得るのですかねえ。

_ 辻本 ― 2013/01/27 13:30

 韓国の2002年の犯罪白書に、強姦と性暴力別の件数がでています。2001年の数字では、強姦6911件、性暴力3535件です。

 それ以降は「強姦(性暴力を含む)」となって、区別しなくなっています。

 「性暴力 強姦(性暴力に占める強姦の割合)
14.8 13.5(91.2%) 韓国 」
とありますが、こんな数字は出てきませんねえ。

 2001年の数字では、66%です。

_ 今さらですが ― 2013/01/27 20:11

前信でも明記してある通り、上記の数字は国連のサイトに掲載されています
国内向けの犯罪白書では、すでに2002年分から強姦件数を隠蔽していたのですね

おっしゃる通り、強姦の割合が変わっている可能性は有ります
が、当局が情報を隠しているので、第3者としては
手に入る最新の情報(2004年のもの)を使うしかないわけです

当局が情報操作(強姦件数を発表しなくなった)をしている以上、
「強姦は減っているはず」と根拠なく良い方に解釈するのは難しい

上記の比較を見るとわかるように
韓国の「性暴力」の規準は他国と大幅に違います

強姦なみの事件でないと性暴力と見なされない、性犯罪者に甘い規準です
この規準が見直されたというニュースはない
今のところは「当局が発表する性暴力の9割は強姦」と見るしか仕方がないでしょう

国連のサイトでは2003年韓国の性暴力は14.0、強姦は12.7=90.7%
(2001年66%)→→2003年90.7%→2004年91.2%
むしろ強姦の比率は上がっています

_ 辻本 ― 2013/01/27 21:30

韓国の「性暴力」とは強制わいせつのことで、強姦以外の性犯罪です。

 国連の数字は「性暴力に占める強姦の割合」だそうですから、この場合の「性暴力」とは、強姦を含めた数字、つまり強姦と強制わいせつとを合わせた数字と思われます。

 「性暴力」の定義が違っていると考えられますので、比べる意味があるのか疑問です。

 国連の数字は各国で大きな違いを見せており、信頼できるものなのかどうか、これも疑問ですねえ。

_ 辻本 ― 2013/01/28 19:49

 韓国の犯罪白書における、強姦と性暴力を合わせた数字から、10万人当たりの件数を計算しますと、2004年は「23.6」になります。

 しかし「国連」の数字は「14.8」だそうです。つまり数字が混乱していて、信頼性に欠けます。これを根拠に論じるのは、いかがなものでしょうかねえ。

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