古代から続く伝統的葬法「草墳」(4) ― 2026/03/05
https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2026/02/27/9838734 の続きです。
民俗学者の村山智順は朝鮮総督府の嘱託職員となって朝鮮の民俗を調査し、報告書を執筆します。 総督府から発行された『朝鮮の風水』がそれで、そのなかに「草墳」を報告しています。 ↑はその報告書に掲載された草墳のスケッチ図です(368頁)。 なお村山は報告書本文では草墳とは書かず、「トク葬」「風葬」としています。
トク葬(덕창)
朝鮮語の허덕が草屋、仮小屋の意味であるから、このトク葬は小屋葬とでも云うべきものであろう。 これは多くの場合、下賤の人とかまたは遠く故郷から離れておる者が、死者を埋葬する土地もなく、またこれあるも吉地のない場合、或いはやがてその骨になる時を待って、その骨だけを納めて故郷に持参せむとする者が行なう葬法であって、山野の一部に木、竹、萩などを組み立て、または編み合せて小屋をつくり、草をもってその上を葺き、その中に死体を入れた棺を安置し、その骨だけになる時を待って土中に埋めるとか、あるいは故郷に持ち運ぶとか適当の処置をするのである。 (村山智順『朝鮮の風水』朝鮮総督府 昭和6年2月刊 1972年5月復刻 国書刊行会 366頁)
小屋掛けの草墳は、『朝鮮の風水』の↑の図の最下段に描かれていますね。 またその写真も367頁に「トク葬の一種」というキャプションを付けて掲載されています。 その写真が近年の韓国の論文の中に再掲されていましたので、URLを張り付けておきます。 https://m.blog.naver.com/PostView.naver?isHttpsRedirect=true&blogId=telience92&logNo=221370961497 なお、ここでは草墳の別名である「草殯(초빈)」としています。
なお「トク葬(덕창)」という言葉は今の韓国語辞典に採録されておらず、また「葬」は「장」です。 この「トク葬」は現在の全羅南道島嶼部に残っている「草墳」に繋がるものと考えられます。 近年まで残っていた「草墳」はYAHOOで「초분」の画像を検索すれば多く見ることができます。
村山智順の説明を続けます。
風葬
これは死体を菰包として樹上に置き、樹に縛りつけ、吊るしまたは木架を組みてその上に載せ、木架に横木を渡して水平に吊り、或いはそのまま地上に起きて、その上に草をかけ、人通りなき山野の中に放置するのであるが、これは永久にこうして置くのではなく、その脱肉解骨(骨だけになる)を待って、その骨を他の土中に埋葬するのである。
この風葬をなすものには二つの種類がある。 一つは下賤の身分の者で、死体をそのまま埋葬すべき山を持たない場合、骨になるのを待ってその骨だけを北邱山(死捨山とも見なすべき、誰の墓地とも決まっていない墓地で、貧賤にして私有墓地を定め得ない者または幼少の死人を埋めるところである)に移して埋めるが為であり、
一つは痘瘡とはチフスとかの悪疫で死亡した者の場合である。 この場合には、死体はこれを直ちに埋葬すると疫神の怒りに触れて一層その悪疫が猖獗を極めるので、この死体を供物として疫神に供し、もってその容恕を乞い、他に患者の出でざる為に犠牲に供する意味からのものと、疫病で死亡した者は疫神の祟りで死亡したのだから、疫神の許しを得て、その祟りが解ければ再び甦ることもあるのであろうから、しばらく風葬となし(直ちに埋めないで)一方疫神の祟りを解く祝祷をするものとの二つの動機から致されるのである。 (同上 366~370頁)
↑図の上段と中段に、木架に載せたものと樹木に縛り付けたもの、および木に吊るしたものの「風葬」が描かれています。 このうち吊るしたものは前回ブログで紹介した本間九介の『朝鮮雑記』にも出てきますが、本間は子供が亡くなった場合にする葬法としています。 しかし今ここで紹介する村山は、身分の低い者の場合と痘瘡(天然痘)などで病死した場合にこの葬法(樹上に置いたり縛り付けたり吊るしたり)をするとしています。 いずれにしても、今の韓国民俗学では「草墳」の一種とされています。 https://www.hiks.or.kr/HonamHeritage/8/read/1778
風葬は植民地時代に総督府が禁止したとされていますが、1931年発行の『朝鮮の風水』で報告されているところを見ると、まだ残っていたようです。 1945年の解放後の韓国では途絶したようで、全く聞きませんね。 (続く)
古代から続く伝統的葬法「草墳」(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2026/02/15/9836684
古代から続く伝統的葬法「草墳」(2) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2026/02/21/9837659
古代から続く伝統的葬法「草墳」(3) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2026/02/27/9838734
