漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(6)2014/01/27

 次に漢字廃止の弊害としてもう一つ挙げられるのが、数十年前の文献が読めなくなることです。漢字を知らないのですから、漢字がたくさん入った文章を読むのが難しいのは当然です。かつての漢字ハングル混じり文章は古文となり、その時代の文学作品は古典扱い、その当時の資料は古文書史料扱いされることになっていきます。従って過去の韓国人と現在の韓国人では、断絶が生じることになります。現在その断絶が進行していると見ていいでしょう。

 さらに先に書きましたように、漢字語が漢字の裏付けがなくハングルだけで書き表されるために、言葉の中身がこれからもっと変質していくでしょう。従って将来の韓国人は現在の韓国の新聞や論文が同じハングルで書かれていても読めなくなっていくものと予想されます。つまり更に断絶していくことでしょう。

 しかしこれは弊害になるのでしょうかねえ。かつての日本人が普通に嗜んできた崩し文字を今の日本人が読めないのと同じでしょう。それなりの訓練をして、一端の専門家の卵ぐらいになってやっと読めるようになります。

 また戦前の文献は旧仮名遣い・旧漢字ですから今の日本人が読むにはちょっと難しいです。読み慣れるのに時間がかかります。夏目漱石は新仮名・新漢字に直されているから現在の日本人が容易く読めるのであって、明治時代に発行された本を読むのには骨が折れるものです。

 1000年前の源氏物語なんかでは現代仮名・漢字に改められた文でもなかなか読みこなせません。ましてや当時の人がすらすら読んでいたはずの原文は、現代人は何年も研鑽修業を積んでやっと読めるものです。

 1300年前になると、万葉仮名の世界になります。これも当時の人はすらすら読んでいたことでしょう。しかし現代の日本人にはまるで外国語を読むかのごとしです。

 そこには過去の日本人と現在の日本人との断絶があるのですが、時の流れとして当然のことと受け入れられています。

 韓国は漢字を廃止したから昔の文献が読めず、従軍慰安婦問題のような間違った歴史を信じるようになったという主張があります。しかし漢字を読み書きできる日本人でも間違った歴史を信じる人はたくさんいますので、漢字廃止と歴史問題は関係ないものと考えます。