1934年に「募集・徴用」の「強制労働」??2010/12/26

 『こぺる』の最近号(2011年1月号)に、国籍条項撤廃を考える会の森さんという方の 「ある無縁仏のこと―島根の聞き取り調査から」 と題する短文が掲載されている。

 彼は地方公務員採用における国籍条項について、「戦争責任を曖昧にしてきた日本人の問題あり、永住外国人の国籍条項撤廃作業は日本人の手で成し遂げなければいけない大切な作業でもある。」(14頁上段)と主張する方である。

 内容については私と意見を異にするところが多い。それはともかく、歴史事実の記述において間違いがあるのは、いかがなものかと思う。

 >雲南地域には大正時代から鉄道建設(現在のJR西日本木次線)にあたって朝鮮半島から多くの人々が「募集・徴用」の名目で強制労働に駆り出された。資料によれば、その数は1934年(昭和9年)には447人にのぼる>(11頁下段)

 「募集・徴用」とは、国家総動員法(1938年)に基づいて翌1939年に朝鮮で施行された「朝鮮人労働者募集要項」、および1944年に朝鮮でも施行された「国民徴用令」のことであろう。そうでなければ、「強制労働」ということにはならないからだ。「強制」か否かについては異論も多いが、少なくとも「強制労働」と言うからには、1939年以降の数年間の時代を指すのが、朝鮮史における初歩的知識である。

 とすると、彼はそれより5年も前の1934年の数字を何故出したのか?ということである。つまり、彼が強制でない時代のことを「強制労働で駆り出された」と表現したのであるから、虚偽の歴史なのである。

 ところがその彼が次に、「現在、木次線にはトロッコ列車が走り、紅葉の時期には観光客を運んでいるが、その内、どれだけの人がその歴史を知っているだろうか。」(12頁上段)と、人の歴史無知をあげつらうような言い方をしているが、いかがなものかと思う。

(参考)http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daiyonjuuhachidai