脱北して戻ってきた在日 ― 2024/02/25
北朝鮮から脱北し今日本に居住しておられる人は約200人ほどだといいます。 1950年末~1980年代に北に帰国した在日、あるいはその子や孫がほとんどだそうです。 彼らは自分が元在日の脱北者であり北朝鮮の悲惨な状況を訴えて自分たちを騙した朝鮮総連を糾弾するものだと思っていたのですが、実際にそんなことをする人の数は非常に少ないです。
何故なのかちょっと気になっていたのですが、最近の在日総合誌『抗路11』(2023年12月)に掲載された石丸次郎さんの「コロナで不可視の北朝鮮で起こっていたこと―金正恩政権の政策転換による災い」という論考のなかに、次のように書かれていて“ああ、なるほど、そういう事情だったのか”と納得しました。
現在、大阪と首都圏に約200人の脱北者が暮らしている。 59年から84年まで続いた帰国事業では、在日朝鮮人とその日本人家族合わせて9万3000人あまりが北朝鮮に渡ったが、この帰国者と北朝鮮生まれの二世・三世たちが日本に戻ってきているのだ。 彼らは在日親族のふりをして、息子・娘。親兄弟と手紙のやり取りをし、現金や荷物を送ってきた。 日本からは保険付き郵便で現金を一回10万円まで安全に送金できる。 経済制裁のため、ぜいたく品がないか税関で細かくチェックされるが、荷物も送ることができる。 (146頁)
日本に戻ってきた在日の脱北者は、自分が日本に昔から住んでいる在日親族のように騙って、北朝鮮に残っている家族らにお金や荷物を送っているのですねえ。 北朝鮮での苦しい生活を逃れて脱北しようやく元の日本に戻ってきたのですが、北朝鮮では極貧の生活を送る家族らがまだ残っています。 その家族らにお金や荷物を送る時、自分が脱北した人間だと明かせばその家族はとんでもない処罰を受けるでしょう。 だから昔から日本に在住してきた在日親族から送っているという形にしているのですねえ。
脱北者について関心はありますが、こういう情報は知らなかったので、大いに参考になったというわけです。 朝鮮総連の家にもこのような身内の脱北者を匿っているのだろうなあ、そして周囲に何も言わずに黙っているのだろうなあ、と思いました。
なお北朝鮮ではコロナのために2020年3月から国際郵便の取扱いを停止し、今でも荷物も手紙も送れない状態が続いているそうです。 脱北者の苦悩はさらに大きいでしょうねえ。
脱北して日本に戻ってきた在日が北の実情を訴え、自分たちを騙した総連を告発する活動は上記のように小さいようです。 しかし勇気を出して活動をしている方もおられるので応援したいものです。
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