金正恩2024年1月15日施政演説(1)2024/01/30

 金正恩が去る1月15日に最高人民会議(国会に当たる)で行なった施政演説が波紋を呼んでいます。 韓国に対する脅迫めいた言動は昔からやっていることなのですが、今回は韓国を「第一の敵対国」であり、韓国とはもはや「統一」「和解」「同族」の概念を消し去り、そのために北朝鮮憲法にある「自主、平和統一、民族大団結」を削除するなどと、これまでにない強い表現をしたことに多くの人が驚き、注目しているようです。 

 それではこの施政演説が一体どのようなものなのでしょうか。 労働新聞を購読している人によると、6ページくらいにわたって掲載されていたそうです。 労働新聞のインターネット版に公開されたものがあったので、読んでみました。 http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?MTVAMjAyNC0wMS0xNi1OMDAxQA==

 このうち前の三分の二ほどは主に北朝鮮国内の問題(経済や農村格差など)であり、後の三分の一は国際関係や軍事などを論じており、ここに上記のような韓国を否定する文言が入っています。 今回はこの後の部分を翻訳してみました。 他人の解説を読んで分かった気分になるよりも直接読んで自分で理解する方がいいと思い、ここに公開します。

 北朝鮮独特の言葉遣いが多く、そのままでは意味を取るのが難しい部分もあります。 しかし意訳すると私の解釈が入って誤解されることにもなるでしょうから、原文を尊重してできるだけ直訳としました。 分からない単語は「〇〇」としました。 なお原文は一文一文で改行されているのですが、今回は二文か三文でまとめて、それから改行しています。

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代議員同志たち!

我が共和国は平和愛国的な社会主義国家であり、侵略と干渉のない平穏で安定した環境のなかで自主的発展の道を歩もうとする我々の志向は終始一貫し、そのために捧げた代価も莫大です。  しかし我が国家の安全環境は緩和するどころか、日に日に悪化一路を記録し、今日は世界で最も危ない戦争勃発危険地域になりました。

米国当局者たちは時を分かたず吐き出す、我々の《政権終末》妄言とともに、共和国周辺地域に常時駐屯しているように、膨大な核戦略資産、追従性力を糾合し、歴代最大規模で休みなく行なう戦争演習、米国の指図で強化される日本、大韓民国の軍事的結託などは、我が国家の安全を刻一刻さらに厳しく害しています。 年代と年代を繋いで持続的に敢行されている米国の激しい反共和国対決政策と、それに無条件に屈従する大韓民国のような奴僕国家らの自滅的妄動は我が共和国の敵対心を促進させる一方、軍事力強化の正当な名分と圧倒的な核戦争抑止力をより非常に高めねばならない当為性を十分に提供してくれています。 今米国とその走狗たちは戦争に浮かれています。

我々は祖国と人民、万代に至る後孫の平和を目的に、自衛的国防力強化の一路を変わりなく歩まなくてはいけません。  この席に参加した代議員たちは今日中東で起きている無差別的な戦争の惨禍を他人事だと考えてはならず、軍力であり国家と人民の安全であり尊厳であり位相という確固とした信念を大事にし、我々の自衛的国防力を百倍、千倍の最上最大に固めるために、あらゆることを果たさねばなりません。 

もう一度強調しますが、我が軍隊は国家の安全と人民の平和を、命をかけて守らねばならない自らの崇高な使命を心に銘じて、敵たちの些少な軍事的動きも見逃さず鋭く注視ながら、そのどんな形の挑発行為も圧倒的な対応で徹底して無慈悲に制圧粉砕することができるように確信持って万般の備えの体制を持たなければなりません。 大事変の準備が切迫して現実化し、それを強力な軍事行動で執り行なわねばならない重大な使命を我が軍隊が負っていることに合わせて、全軍の各級が党中央委員会第8期全員会議と党中央軍事委員会精神を真摯に学習し実行し、実戦化した訓練を強化すると同時に、政治思想教養事業にいつものように大きく力を入れることによって政治思想的および軍事技術的優勢でもって、敵たちとの対決で必ず勝利することができるように準備していかねばなりません。

金正恩同志におかれては、人民軍隊の戦争準備は武装装備の現代化を切り離して考えることはできないと仰って、軍需工業部門で造成された情勢と革命発展の要求に合わせて、今年朝鮮民主主義人民共和国の核戦争抑止力強化と国家防衛力増大のための責任ある闘争で堅持し貫徹せねばならない戦略的課業を提示されて、次のように問題を続けて言及された。

この土地に暮らす公民といえば、だれでも祖国防衛を最大の愛国と考え、自覚的に力強く乗り出さねばなりません。 ○○(전민항전-全民抗戰?)で国を守り、革命的大事変も迎えようというのが我が党の戦略的構想です。 民防衛部分では、これまで戦争準備完成を慢性的にやってきて、形式的、見せかけ式に進めてきたところから深刻な教訓を見つけて新しく始めるという観点と立場で革命的に奮発せねばなりません。 国の防衛力、軍事力を強化するための事業は、名実ともに全国家的な事業として共和国領内のすべての機関、企業所、団体と公民は軍事に、対する正しい観点を持って、軍力強化に必要なすべてのことを最優先的に、最も高い質を保障することに違えることはできないという鉄則とせねばなりません。

各級人民政権機関は、一旦有事には即時に戦時体制へ移行できる徹底した対策を立てて、○○(전민항전-全民抗戦?)のための物質的準備も手抜かりなく備えるようにせねばなりません。 最高人民会議の代議員は国の防衛力強化に一役買うことを自分の応分の義務と考えて、自分の部門、自分の単位に任せられる軍事課業を手抜かりなく遂行せねばならず、軍事を粗忽にする現象は適宜に問題を立てて、徹底して克服するようにせねばなりません。 (続く)

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【北朝鮮に関する拙稿-2023年度度分】

核問題は北朝鮮に理がある―金時鐘氏 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/01/23/9653071

在日朝鮮人が話す北朝鮮    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/12/19/9643754

朝鮮民主主義人民共和国の正統性は何か? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/11/21/9636056

朝鮮総連幹部らには月3万円の教育費支給 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/10/24/9627897

『労働新聞』の論説―朝鮮戦争70周年(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/07/27/9605137

『労働新聞』の論説―朝鮮戦争70周年(2) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/07/31/9606151

『労働新聞』の論説―朝鮮戦争70周年(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/08/04/9607167

『労働新聞』の論説―朝鮮戦争70周年(4) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/08/08/9608146

『労働新聞』の論説―朝鮮戦争70周年(5) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/08/12/9609128

今日は「太陽節」-朝鮮総連に教育費2億7千万円 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/04/15/9577360

コメント

_ 海苔訓六 ― 2024/02/01 11:05

全然関係ないですけど東アジア反日武装戦線の桐島聡が亡くなって報道されています。韓国関連の建造物を狙った爆破事件を起こしているので東アジア反日武装戦線って北朝鮮の息がかかっているグループだったのかな?と思いました。
韓国でも2020年に東アジア反日武装戦線を取材したドキュメンタリーが作られて放映されたようです。
予告編だけ見ましたが、これだと「日帝」と巻き込まれた在日朝鮮人ばかり強調されていて北朝鮮の関与とか全然取材されてない感じですね。
https://youtu.be/2f6nOPlJt7s?si=sUd19mCFDhC3fqeh

_ 辻本 ― 2024/02/01 17:03

東アジア反日武装戦線は、無政府主義であって共産主義ではありません。
無政府主義といっても、幸徳秋水や大杉栄、朴烈などの系列ではなく、独自的に生まれたものと思われます。
北朝鮮や他の共産国家とは、関係がありません。

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