核問題は北朝鮮に理がある―金時鐘氏2024/01/23

 このところ金時鐘さんの著作を読んでいるのですが、彼は北朝鮮の核兵器保有を容認しているんですねえ。 金さんは日本の左派リベラルと親しいので核兵器廃絶の考えをしていると思っていたのですが、自国である北朝鮮の核兵器については理解を示しているのです。 その部分を紹介します。 出典は、集英社新書『「在日」を生きる ある詩人の闘争史』(金時鐘・佐高信 2018年1月)です

今、核保有を誇示している北朝鮮とどう向き合うかが、同じ民族ならなおのこと深く考えねばならない焦眉の問題として、目の前にぶら下がっています。 (159頁)

 北朝鮮は金さんの祖国の一つですから、「同じ民族」として「深く考えねばならない焦眉の問題」であるのは、その通りです。 それでは北の核兵器をどう考えるか、金さんは次のように言います。

核の問題だけは北朝鮮に理がある。 (160頁)

ありていに言って、こと核の問題に関する限り、北朝鮮に道理があります。 金日成主席の生存時から、北朝鮮はアメリカに対して、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に締結し直そうと、ずっと提起してきました。 そうなれば北朝鮮が核を持つ理由がなくなる、とも言い続けています。 金日成から金正日に代わったときも同じことを言ってきたし、今の金正恩も、話し合いをするなら私たちも核の問題を考える、それはお祖父様の遺言だとも言っています。 (162~163頁)

 金さんは、北朝鮮の核開発と保有を「道理がある」として正当化しています。 その理由が金日成や金正日、金正恩の発言であるとしていますから、へー! 金さんが北の三代世襲の金一族の言うことを信じているとはビックリ! 一方で日本の首相だった安倍さんのことを「さも民主主義の守護神のように振る舞っています、こっけいというしかありません」(159頁)と酷評しているのを考えると、北の金一族への信頼が深いのは「同じ民族」だからなのでしょうねえ。

まかり間違えば、水爆きのこ雲が極東の空の一角をおおうかも知れない。そのただ中に日本も存在していることを自覚して、好き嫌いを先立てずに北朝鮮との対話の場を作り出す責務が、お互いにあるのです。 戦後補償、拉致問題等、日本には話し合いの糸口をつける有効なカードが手元にあるのではありませんか。 (162頁)

もしも日本やアメリカが、北朝鮮の体制を物理的な方法で潰そうとしたら、北朝鮮を壊滅させるのはたやすいことかもしれない。 しかし北朝鮮はひとりでは死にませんよ。 必ず日本を道連れにする。 岩国あたり、日本海寄りの原子力発電所、横須賀の米軍基地は当然狙われる。 北朝鮮が水爆を保持しているのは、冷厳なる事実ですから。 (165頁)

 これは脅しですね。 北朝鮮を怒らせたら酷い目に遭うぞ、だから日本からまず手を差し伸べよ、ということです。 つまり日本は北朝鮮の脅威に対して恐れおののき、話し合いの糸口を探れ、と言っておられるのです。 金さんは北の代弁人になったのでしょうかねえ。  金さんはこのように北朝鮮の核兵器保有に理解する一方、日本の核保有には反対しているのです。

吉本隆明は反核運動を批判し、核抑止力という観点から核保有を是認していましたね。 僕などからすると、彼の紡いだ膨大な言葉は、壮大な空転に見える。 まったく親近感はありません。‥‥ どこの大学の図書館に行っても、推薦図書で吉本隆明が飾られているんですよね。‥吉本は本当に読まれているんでしょうか? (68頁)

 吉本隆明の反核運動への批判は原発などの原子力開発を否定する運動に対する批判なのですが、金さんは吉本が核兵器保有を是認したと思ったようです。 それゆえに吉本の作品を否定し、彼との対談を拒否したとのことです。

 それはともかくとして、同じ核抑止力であっても日本の核兵器はダメで、北の核兵器はOKとするのが金さんの考えなのです。 これに佐高信さんが異を唱えていないので、彼も同じ考えを持っているようです。

 ということで、金時鐘さんと佐高信さんは北朝鮮の核兵器保有を容認している、というお話でした。 お二人は左派リベラル側の人間であるということなので、違和感が大きいです。

【追記】

 金時鐘さんを批判ばかりしているようですが、実は私は金さんの差別に対する考え方に大いに賛成しているものです。 金さんは部落差別や民族差別などの差別問題で「両側から越える」ことを提起しました。 これは差別問題の解決のためには、差別する側も差別される側も両方から歩み寄って解決の努力をせねばならない、被差別側が差別側を一方的にやり込め、差別側が被差別側に一方的に拝跪し謝罪するようなことでは解決しないと主張するものでした。 私はこれに全くその通りと思い、蒙を啓かれた気持ちでした。 

武田砂鉄の被差別正義論―毎日新聞 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/24/8810463

社会的低位者の差別発言      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/05/09/9244588

 しかし差別問題から離れて今回のような問題になると、とたんに疑問だらけとなります。 一度疑問を抱くと、すべてが疑問の対象となってしまいます。 金さんは北であれ南であれ祖国の人との交流があるはずだし、在日同士の交際も多いので、私よりはるかに具体的な事実を知っていると思っていたのですが、これが疑問となってきました。 ここ数年の金さんに関する拙稿は、こういった疑問から出発した批判ですね。

【金時鐘氏に関する拙稿】

金時鐘氏が正規教員?―教員免許はないはずだが‥ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/01/16/9651219

金時鐘氏は不法滞在者なのでは‥(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/10/07/9623500

金時鐘氏は不法滞在者なのでは‥(2)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/10/12/9624809

金時鐘氏は不法滞在者(3)―なぜ自首しなかったのか http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/10/17/9626078 

金時鐘『朝鮮と日本に生きる』への疑問 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/07/28/7718112

金時鐘さんの法的身分(続)     http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/13/7732281

金時鐘さんの法的身分(続々)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/26/7750143

金時鐘さんの法的身分(4)    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/31/7762951

毎日の余録に出た金時鐘さん    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/08/27/8950717

本名は「金時鐘」か「林大造」か  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/08/23/8948031

金時鐘さんは本名をなぜ語らないのか? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/07/02/9110448  

金時鐘さんは結局語らず      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/08/13/9140433

金時鐘さんが本名を明かしたが‥‥ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/10/26/9169120

金時鐘『「在日」を生きる』への疑問 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/01/8796038

金時鐘さんの出生地        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/07/05/7700647

青木理・金時鐘の対談―帰化(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/09/08/9524343 

青木理・金時鐘の対談―帰化(2) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/09/15/9526042

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