漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(7)2014/01/31

 呉善花さんは漢字廃止が「知的荒廃」に繋がっていると主張しています。彼女は

一般的に知的な関心が低く、国民一人当たり年間平均読書量0.9冊という惨憺たる知的荒廃が生み出されている(71頁)

と記しているのですが、この数字の根拠を示していません。そこで韓国の読書量について調べてみました。文化体育観光部(日本の文部科学省に相当)の調査では、韓国の成人の読書量は2009年15.3冊、2010年16.6冊という数字が出てきます。呉さんとは二十倍近くの違いを見せています。 http://kyoposhinmun.com/print_paper.php?number=5305 

 ちなみに日本の文化庁の平成20年(2008)の調査では、日本人の月平均読書量は0冊が46.1%、1~2冊が36.1%、3~4冊が10.7%、5~6冊が3.3%、7冊以上が3.3%です。一冊も本を読まない日本人が46%とは、ちょっとビックリしました。 http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/yoronchousa/h20/kekka.html  この数字から日本人の年間平均読書量を計算すると、(0×0.461+1.5×0.361+3.5×0.107+5.5×0.033+9×0.033)×12ヶ月≒15.6冊ぐらいになります(「7冊以上」を9冊として計算)。

 つまり韓国も日本も読書量はほとんど違いがないと言えます。実際に韓国の本屋さんでのお客さんの込み具合は、日本とさほど変わらないというのが私の経験です。漢字廃止のゆえに読書量が少ないとする呉さんの説は成り立たたず、「知的荒廃」説は疑問です。

 漢字に慣れている我々日本人には、漢字を廃止してハングルだけとなった韓国語はちょっと取っ付き難い言語になっています。しかし他民族がどのような言葉を使い、どのような文字を使うかはそれぞれの勝手ですから、とやかく言う必要はありません。呉善花さんが予想するような「知的荒廃」「思考水準の低下」が実際に起きるかも知れませんが、それはこちらには関係のないことです。

 ただ隣国の動きには関心をもち、研究対象としておかねばならないことだけです。