北朝鮮の内部情報は? ― 2018/04/28
昨日、韓国・北朝鮮の首脳が会談し、板門店宣言が発表されました。
ところで、この宣言を北朝鮮の内部では国民にどのように知らせているのかに関心が行きます。 というのは、北朝鮮はこれまで、内部向けにはかなり印象の違う説明をする場合が多かったからです。 この内部向けの情報については、なかなか入手が難しいですが、時々専門家が入手して、公表されることがあります。
毎日新聞2018年4月24日付の「特集 ワイド」面に、北朝鮮に関する情報力では定評のある鈴木琢磨記者の長文の記事があります。 なかなか参考になるものですが、残念ながらインターネット版には載っていないようです。 その記事のなかで、公開されている情報以外に、鈴木さんが入手したという北朝鮮の内部情報があります。 興味深いので紹介します。
2002年9月に小泉首相が北朝鮮平壌に行って、金正日委員長と会談しました。 横田めぐみさんらの拉致を北朝鮮が初めて認めた会談でしたから、その時の状況は皆さんもご存じでしょう。 その翌月に朝鮮人民軍出版社が発行した兵士向けの講演テキストです。
最高司令官同志(金正日)は、対朝鮮敵視政策に固執していた日本軍国主義の頭目が頭を下げて我が国をまず訪ねてきたことは歴史に特記される大事変であり、これは我が党の先軍政治の偉大な勝利だ、とおっしゃった。 この度の日本の首相の平壌訪問は、日帝が1945年8月15日、偉大な首領さま(金日成)の前にひざまずいたごとく、再び白旗を掲げて我が国を訪ねてきて、最高司令官同志の前で膝を屈し、降伏書に判をついたのと同じである。
北朝鮮内部では、2002年の小泉首相訪朝はこのように認識されていたということです。 日本側の認識とは大きく違うことに注目されます。
次に金正恩政権が発足して2ヶ月半ほど経った2012年3月3日に、金正恩委員長は板門店を訪れました。党が内部向けに作成した「発言集」にその時の彼の発言が載っています。
去る祖国解放戦争(朝鮮戦争)の時期には、ここで停戦の談判をしたが、これからの戦いでは停戦という言葉自体を思い浮かべてはなりません。 我々は米帝と南朝鮮かいらいどもを必ず消滅させ、祖国統一の歴史的宿願をどうしても成就させなければなりません。 私は米国のやつらと李明博(当時の韓国大統領)から必ず降伏書を取らねばならないのです。
ここでは、アメリカと韓国を「降伏」させる決意を述べています。
そして2016年3月6日に金正恩委員長が党と軍の幹部に行なった秘密演説です。
強力な国防力、戦争抑止力で敵どもの膝を屈させ、祖国の平和と安全を守護し、経済建設と人民生活の向上のための闘争に資金と労力を集中できる有利な条件をつくらなければなりません。 そして我が人民たちが軍事強国、核強国の徳を受け、子々孫々、幸福を享有しなければなりません。 その日は遠くありません。 その日は我々の目の前にあります。
2年前に金正恩が内部に向けて明らかにしたこの考え方が、今度の板門店宣言にも貫かれていると考えるべきでしょう。 あるいは板門店宣言はこれに沿って読めば北朝鮮の真意を垣間見ることができる、ということです。
「敵どもの膝を屈させ」 「その日は目の前にある」とあるのが、正に昨日の南北首脳会談なのです。
時々漏れ出るこのような北朝鮮内部情報は、なかなか参考になります。
【拙稿参照】
自主的、民主的、平和的統一 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/04/22/6421457
南朝鮮解放路線はまだ第一段階 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/03/30/6762019
北朝鮮を甘く見るな!(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/07/23/7395972
北朝鮮を甘く見るな!(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/07/28/7400055
北朝鮮を甘く見るな!(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/08/02/7404064
北朝鮮を後押しする中国 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/02/08/8011036
「朝鮮半島の非核化」は「北朝鮮の非核化」とは違うのでは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/08/8799658
金正恩の発言は既定の北朝鮮の路線 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/12/8801876
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。