金正恩は「改心」したのでは?2018/05/07

 北朝鮮は昨年の1月から9月までに弾道ミサイル20発を発射し、金正恩委員長はアメリカに対して「我々のプレゼントが気に入らないようだが、これから大なり小なりのプレゼントを何度も送ってやろう」とか「アメリカ本土と太平洋作戦地帯が我々の打撃圏内に入った」とか、トランプ米国大統領を「アメリカの老いぼれ狂人を必ず火で罰する」などと好戦的な発言を繰り返しました。

 ところが先月27日の南北首脳会談で、この金委員長が「完全な非核化の実現」を宣言し「これからしょっちゅう会ってアメリカと信頼を積んで終戦と不可侵を約束するならば、なぜ我々が核を持つことがあろうか」と発言するなど、これまでとは大きく違う、殊勝な態度を示しました。

 これについて、彼が「改心」したからという説と、「改心」なんかしていないという説に別れるようです。 前者を唱えているのは、首脳会談当事者である文在寅大統領および彼を80%支持した韓国国民です。 一方後者は、韓国では少数派に転落した保守系です。 日本では懐疑的な論調が多く、後者の立場ですね。

 4月の首脳会談であれ程の大きな花火を上げて、全世界から注目を浴びたのですから、核とミサイルを再開するということは、かなり難しいと考えられます。 ですからここは「改心」したと考えた方がいいのかも知れません。

 金委員長が「改心」したとしたら、昨年の秋頃になります。 この時期に彼に何があったのか? それがさっぱり分かりません。 つまり「改心」したとしても、そのきっかけや理由がなかなか見当たりません。 

 憶測は色々あるようです。 ある人は昨年の秋ごろから中国が本格的な制裁に乗り出したからだと言います。 またある人は、これまでの制裁で金一家の贅沢な生活資金が足りなくなったことに昨年秋に気が付いたからだと言います。 あるいはまたその頃に公表された斬首作戦に怯えたからだと言う人もいました。

 確かなことは、独裁国家ですから金委員長が決断したことです。 とすると一人で考えて決断したのかどうか。 その間外国の要人と会談していませんから、そこから説得されたことはあり得ないでしょう。 すると妹の金与正か妻の李雪主あたりが進言したのか、ということになります。

 しかし一方的に譲歩することはあり得ませんから、非核化の対価は何か?です。 それは在韓米軍の縮小あるいは撤退でしょう。 これが目的で「改心」を決意したのなら、それは北朝鮮の従来路線の延長です。 

 北朝鮮は南朝鮮解放路線=赤化統一という明確な方針を有しています。 それは三段階に分かれ、第一段階が「自主的」。 つまり統一は外勢(アメリカ)を排して民族同士で成し遂げるということです。 

 第二段階が「民主的」。 韓国に北朝鮮に迎合する民主政権を樹立することです。 

 第三段階が「平和的」。 南に成立した民主政権と戦争ではなく平和的に統一することです。

 今は第一段階の「自主的」が成就しようとしています。 これまでのように力づくでアメリカを排するのではなく、話し合ってアメリカに撤収をさせるのです。 つまり今回の金委員長の「改心」は「力ずく」ではなく、「話し合い」によって第一段階を推し進めるやり方に変えたものと評価できると思います。

 そして米朝会談で在韓米軍を撤収させて第一段階を終わらせ、次に第二段階の「民主化」へと進みます。 今の文政権は十分に民主政権ではないかと言われるかもしれませんが、そうではなく少数派となっている保守・右派勢力を、再起できないほどに縮小・壊滅させることです。 これは北朝鮮の仕事ではなく、北朝鮮の意を忖度した文政権の仕事になります。 北朝鮮が手を煩わせることはないでしょう。

 さらに第三段階の「平和的」統一に至ります。 めでたし、めでたしです。 こうなると韓国国民は、最高尊厳の金正恩将軍様を絶対に冒涜することなく、また金日成元帥様が対日戦争と祖国解放戦争に勝利した革命の歴史を学ぶことになるでしょう。

 段々と私の勝手な憶測小説になってきますねえ。 それでも従来路線を維持しながら力ずくから話し合いへの「改心」は、言い当てていると思っているのですが。

 なおまた難癖をつけて、元の「力ずく」へ再度「改心」する可能性はあります。

【拙稿参照】

自主的、民主的、平和的統一       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/04/22/6421457

南朝鮮解放路線はまだ第一段階      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/03/30/6762019

北朝鮮を甘く見るな!(1)        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/07/23/7395972

北朝鮮を甘く見るな!(2)        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/07/28/7400055

北朝鮮を甘く見るな!(3)        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/08/02/7404064

北朝鮮を後押しする中国          http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/02/08/8011036

「朝鮮半島の非核化」は「北朝鮮の非核化」とは違うのでは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/08/8799658

金正恩の発言は既定の北朝鮮の路線  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/12/8801876

北朝鮮の内部情報は?      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/04/28/8834853

コメント

_ A.OTA ― 2018/06/03 18:14

南北首脳会談の映像からのみ得た印象ですが、あのまだ童臭を残したような隙だらけに見える若者、自意識の強そうなその妹、田舎娘のような妻が一国の統治に大きく関与しているとはどうしても思えません。やはり背後に先軍革命小組というようなエリート集団がいて、彼らは傀儡に過ぎないではないかと考えています。しかし、そうすると辻本先生のおっしゃられる赤化統一の方法論が今も健在だという推測もより現実味を増しますね。「民主的統一」の過程で標的になるという韓国保守派、私も自由主義者として彼らのシンパですが、今後ますます厳しさを増して行くでしょうね。私の経験から言えば韓国の保守派は相変わらずライバルの足をすくうことのみに夢中の「党争」の世界のみに生きていて自由主義の理論武装も出来ていないは、地域集団や企業に足場を持たないはで絶望的な状態にあります。こりゃ「民主的」統一の方も早々に実現してしまうのではないか。そんな悪夢が我々在韓日本人にとって現実になってしまうことを危惧しております。

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