同和地区の貧困化2012/07/29

 『こぺる 233号』(2012年8月)に石元清英さんの「全国水平社九〇周年に思うこと」と題する論考があり、いわゆる同和地区で貧困化が進行していることを報告しています。

1960年代以降、全国各地の部落で実施された生活実態の結果をみると、年齢が若くなるにしたがって就労状態は安定化する‥‥安定的な就労状態を獲得しているということである。    しかし、1990年代になると‥‥年齢が若くなるにしたがって、逆に不安定になっていることが明らかとなった。こうした30代、20代の年齢層における就労の不安定化は、1990年代以降、部落から経済的安定層が大量に流出するようになったためである。    部落の外に広い住宅を求めることができるような経済的に安定した世帯が流出しているのである。典型的には、子どもが小学校に入った、小学校の高学年になったので子ども部屋をもたせたいという、夫婦と子どもからなる核家族世帯が流出していった。そして、大学進学率が上昇するなかで、大学進学時に部落から流出し、卒業後も戻ってこないという若年層が目立ってきている。つまり、高学歴層の部落からの流出が目立ってきたのである。    こうした安定層の流出が20代、30代といった若い年齢層での就労の不安定化をもたらしているのである。安定層が流出する一方で、不安定層が部落に流入してくる‥      1990年代以降、安定層の流出と不安定層の流入によって、都市型部落の貧困化が進行した。‥‥この貧困化はさらに加速しているといえる。    都市型部落では、貧困化が着実に進行しているのであり、そのもとで子どもの虐待とDVが増加している‥    子ども虐待とDVは、深刻で重大な人権侵害である。部落解放運動は、この部落内における人権侵害に真正面から取り組むべきではないだろうか。

 拙稿でも、同和地区では高学力家庭が流出し、かわりに低学力家庭が流入していると論じたことがあります。 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/05/18/1515064

 同和地区は国民が住みたくなるような場所ではなく、生活が安定したら出て行きたくなる場所であり、近年その傾向がさらに強く現れてきているようです。 

 同和対策では、30数年の間に15兆円という膨大な公費が投入されました。解放運動はこれだけの同和対策をさせたという成果を誇り、さらに今だ差別は残っているとして、同和対策の打ち切りに反対していました。  しか し、現在の状況をみると、同和対策や解放運動には根本的なところに誤りがあったのではないか、と思っています。